24 / 63
ひっくり返す[オスカー視点]
しおりを挟む
ユインティーナ・コーサイスが綺麗になった。
新学期が始まってから教室が騒がしい。ユインティーナは時々何かを思い出すように微笑みを浮かべる。髪には琥珀の髪飾りが刺さっている。面白くない。
だから、つい言ってしまったのだ。
「色ボケしてんなよ。」
「恋愛して何が悪いのよ。」
言い返されてカッとなった。
「恋愛するのは自由だけど、恋人とのイヤらしいアレコレを教室でまで思い返すなって言ってるんだよ。」
我ながら下劣な言い回しだ。
頬を引っ叩かれた。つい反射的に反撃しようとしたら床に倒されて関節技をかけられた。
「女だからって馬鹿にしないことね。」
ユインティーナが去っても俺は床に座り込んだままでいた。
移動教室だったからクラスメイト達も教室から出て行った。
「失恋するにしても酷いやり方ね。」
一人残ったイザベルが言った。
「は!誰が?」
「馬鹿ね。自分の気持ちに気づいてもいなかったの?」
「俺がユインティーナにか?」
「あなた、いつもユインティーナを目で追っていたじゃない。」
「それはカルロス王子のことがあったから心配して、」
「自分より強い女の子を?」
「君だって言っていたじゃないか。他の生徒に気をつけてくれって。」
「他の生徒よ。ユインティーナを、とは言ってないわ。先生には保健室に行ったと言っておくから、ゆっくり考えてみるといいわ。」
保健室に移動すると校医を勤めるルイ・ティリエが俺を見て爆笑した。
「ずいぶん派手にアトを付けられたね。ガールフレンドにやられたのかな?」
笑いながら俺の頬に回復魔法をかける。
ティリエ公爵家の三男だか四男だか、構内にいる数少ない若い職員だから女子生徒に人気がある。血族魔法持ちではないと聞いているが、ティリエ公爵家特有の白金の髪を見れば疑わしい。初代九家に隠し事が多いのは今さらだ。
「バーミリオン公爵家の子息をひっぱたくなんて剛毅な娘だね。誰にやられたの?」
こんなナンパな男に興味を持たれたくない。俺は無言で通した。
「授業なんて受けたくない気分だろう。このまま休んでな。僕は調剤室の方に行くから急患が来たら呼びに来てくれ。」
保健室に一人で残されイザベルに言われたことを考えてみる。
俺は何故あんな言葉をユインティーナに言ってしまったのだろう。
イライラしていた。誰かを思って微笑む彼女に。
俺は彼女が好きだったのか。いつからだ?
思い浮かぶのはダンスの授業のとき。エスコート役の俺の前にユインティーナが赤いドレスで現れたのが嬉しかった。赤は俺の色だ。
ダンスの最中、彼女はつまらなそうな顔をしていた。理由を聞けばダンス教師の一言だった。
笑顔で踊った方がいいと俺が言うと、彼女は花が咲いたような笑顔を見せた。見惚れて、つい足が止まった。
あんまり魅力的な笑顔だったから、誰にも見せたくないと思った。
あの頃からずっと、俺はユインティーナが好きだったんだ。
今からでも間に合うだろうか?
婚約までまだ一年ある。それまでにひっくり返してやる。
まずさっきのことを謝ろう。そのお詫びにと言ってデートに誘おう。
新学期が始まってから教室が騒がしい。ユインティーナは時々何かを思い出すように微笑みを浮かべる。髪には琥珀の髪飾りが刺さっている。面白くない。
だから、つい言ってしまったのだ。
「色ボケしてんなよ。」
「恋愛して何が悪いのよ。」
言い返されてカッとなった。
「恋愛するのは自由だけど、恋人とのイヤらしいアレコレを教室でまで思い返すなって言ってるんだよ。」
我ながら下劣な言い回しだ。
頬を引っ叩かれた。つい反射的に反撃しようとしたら床に倒されて関節技をかけられた。
「女だからって馬鹿にしないことね。」
ユインティーナが去っても俺は床に座り込んだままでいた。
移動教室だったからクラスメイト達も教室から出て行った。
「失恋するにしても酷いやり方ね。」
一人残ったイザベルが言った。
「は!誰が?」
「馬鹿ね。自分の気持ちに気づいてもいなかったの?」
「俺がユインティーナにか?」
「あなた、いつもユインティーナを目で追っていたじゃない。」
「それはカルロス王子のことがあったから心配して、」
「自分より強い女の子を?」
「君だって言っていたじゃないか。他の生徒に気をつけてくれって。」
「他の生徒よ。ユインティーナを、とは言ってないわ。先生には保健室に行ったと言っておくから、ゆっくり考えてみるといいわ。」
保健室に移動すると校医を勤めるルイ・ティリエが俺を見て爆笑した。
「ずいぶん派手にアトを付けられたね。ガールフレンドにやられたのかな?」
笑いながら俺の頬に回復魔法をかける。
ティリエ公爵家の三男だか四男だか、構内にいる数少ない若い職員だから女子生徒に人気がある。血族魔法持ちではないと聞いているが、ティリエ公爵家特有の白金の髪を見れば疑わしい。初代九家に隠し事が多いのは今さらだ。
「バーミリオン公爵家の子息をひっぱたくなんて剛毅な娘だね。誰にやられたの?」
こんなナンパな男に興味を持たれたくない。俺は無言で通した。
「授業なんて受けたくない気分だろう。このまま休んでな。僕は調剤室の方に行くから急患が来たら呼びに来てくれ。」
保健室に一人で残されイザベルに言われたことを考えてみる。
俺は何故あんな言葉をユインティーナに言ってしまったのだろう。
イライラしていた。誰かを思って微笑む彼女に。
俺は彼女が好きだったのか。いつからだ?
思い浮かぶのはダンスの授業のとき。エスコート役の俺の前にユインティーナが赤いドレスで現れたのが嬉しかった。赤は俺の色だ。
ダンスの最中、彼女はつまらなそうな顔をしていた。理由を聞けばダンス教師の一言だった。
笑顔で踊った方がいいと俺が言うと、彼女は花が咲いたような笑顔を見せた。見惚れて、つい足が止まった。
あんまり魅力的な笑顔だったから、誰にも見せたくないと思った。
あの頃からずっと、俺はユインティーナが好きだったんだ。
今からでも間に合うだろうか?
婚約までまだ一年ある。それまでにひっくり返してやる。
まずさっきのことを謝ろう。そのお詫びにと言ってデートに誘おう。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
王子妃だった記憶はもう消えました。
cyaru
恋愛
記憶を失った第二王子妃シルヴェーヌ。シルヴェーヌに寄り添う騎士クロヴィス。
元々は王太子であるセレスタンの婚約者だったにも関わらず、嫁いだのは第二王子ディオンの元だった。
実家の公爵家にも疎まれ、夫となった第二王子ディオンには愛する人がいる。
記憶が戻っても自分に居場所はあるのだろうかと悩むシルヴェーヌだった。
記憶を取り戻そうと動き始めたシルヴェーヌを支えるものと、邪魔するものが居る。
記憶が戻った時、それは、それまでの日常が崩れる時だった。
★1話目の文末に時間的流れの追記をしました(7月26日)
●ゆっくりめの更新です(ちょっと本業とダブルヘッダーなので)
●ルビ多め。鬱陶しく感じる方もいるかも知れませんがご了承ください。
敢えて常用漢字などの読み方を変えている部分もあります。
●作中の通貨単位はケラ。1ケラ=1円くらいの感じです。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界の創作話です。時代設定、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる