5 / 63
5、お兄様は生徒会長。
しおりを挟む
アルマー貴族学園の入学式の前、生徒たちは事前に受けた試験の結果でA組、B組、C組と3クラスに分けられる。
わたしは成績優良者の入るA組、と言っても王族、公爵家、侯爵家の子息はA組と決まっているんだよね。高位貴族と成績優良者の絆を作る為、なんて理由づけされているけど、結局は高位貴族の体面を慮ってのことだと思う。
実際のわたしの成績は分からない。学園から送られてきた書面をお母様が破り捨ててしまったから。
伯爵家以下の生徒は純粋に成績だけで分けられる。わたしのサポート要員は優秀らしく二人ともA組にいた。
「さあ、講堂に移動しましょう。」
ギルバートに先導されて歩き出す。
ああ、二人がいてくれて良かった。わたし一人だったら絶対に迷子になる。貴族学園って何でこんなに広いんだろう。わたしが昔通っていた平民学校は倉庫みたいなところに、黒板と机があるだけだった。
あっ、わたしが学校に通っていたなんて意外だった?最近の平民は平民学校に通うから読み、書き、計算ぐらいは出来るんだよ。
講堂に行くと入学式のための席が用意されている。わたしの席は最前列の4番目、あれ、変だな。わたしより高位の貴族は二人だけだって聞いていたのに。
わたしはお父様から王族と公爵家の人間だけには気をつけるように言われている。あとは権力を使えばなんとでもなるらしい。
わたしは冒険者ギルドで危険な魔獣のレクチャーを受けた時のように二人の特徴をしっかりと暗記した。
バーミリオン公爵家の長男、オスカー・バーミリオンは燃え盛るような赤毛が特徴で怒りっぽい人らしい。冒険者仲間のあいだでも言われてたんだけど、赤毛の人って本当に短気で怒りっぽいのかな?とりあえず彼には近づかないようにしよう。
フェロン公爵家の次女、イザベル・フェロンは美しい銀髪とエメラルドのような緑色の瞳が特徴で、とてもおしゃれな人らしい。ファッションの話とかしたら仲良くなれるかな?でも貴族のファッションなんて分からないよ。彼女にも近づかないようにしよう。
最後の一人が誰だかわかった。隣国ハイデル王国の第三王子、カルロス・ハイデル王子。留学して来たらしい。この人に関しては前情報がまったく無いので、近づかないようにしよう。
学園長の学園の歴史やら何やらの話をずっと聴いていたら、何だか眠くなってきた。
隣の席のオスカー・バーミリオンが腕を組み、足を投げ出して眠りはじめた。その貴族らしくない姿に下町の兄さん達を思い出して親近感を覚えた。
最後に在校生の代表として挨拶するために登場したのは、生徒会長をしているお兄様だった。
そう、わたしには3歳年上のお兄様がいる。レイモンド・コーサイス16歳、アルマー貴族学園の四年生で生徒会長をしている。入学してからずっと首席で通している、とても優秀な兄だ。
わたしはこの兄とあまり上手くいってない。
初めて会ったのはコーサイス侯爵家に移って4ケ月ほど経った冬の日、お兄様が冬の休暇で王都の侯爵家に帰省したときだ。
「はじめまして、お兄様。」
わたしは覚えたての貴族のお辞儀で挨拶したのだが、もの凄くビックリした顔をされた。
お母様は手紙でわたしのことを伝えたと言っていたが、きっと出すのを忘れてしまったのだ。お母様は貴婦人の皮を被っているからバレにくいけど、とても大雑把な性格をしている。
この出会いからお兄様との関係はずっとギクシャクしている。
会ってもほとんど話しかけてもくれない。内気な人なのかな、と思って来たけれど、生徒会長として堂々と挨拶しているところを見ると、そうは思えない。
嫌われているのかな。そう思うとすこし悲しくなった。
わたしは成績優良者の入るA組、と言っても王族、公爵家、侯爵家の子息はA組と決まっているんだよね。高位貴族と成績優良者の絆を作る為、なんて理由づけされているけど、結局は高位貴族の体面を慮ってのことだと思う。
実際のわたしの成績は分からない。学園から送られてきた書面をお母様が破り捨ててしまったから。
伯爵家以下の生徒は純粋に成績だけで分けられる。わたしのサポート要員は優秀らしく二人ともA組にいた。
「さあ、講堂に移動しましょう。」
ギルバートに先導されて歩き出す。
ああ、二人がいてくれて良かった。わたし一人だったら絶対に迷子になる。貴族学園って何でこんなに広いんだろう。わたしが昔通っていた平民学校は倉庫みたいなところに、黒板と机があるだけだった。
あっ、わたしが学校に通っていたなんて意外だった?最近の平民は平民学校に通うから読み、書き、計算ぐらいは出来るんだよ。
講堂に行くと入学式のための席が用意されている。わたしの席は最前列の4番目、あれ、変だな。わたしより高位の貴族は二人だけだって聞いていたのに。
わたしはお父様から王族と公爵家の人間だけには気をつけるように言われている。あとは権力を使えばなんとでもなるらしい。
わたしは冒険者ギルドで危険な魔獣のレクチャーを受けた時のように二人の特徴をしっかりと暗記した。
バーミリオン公爵家の長男、オスカー・バーミリオンは燃え盛るような赤毛が特徴で怒りっぽい人らしい。冒険者仲間のあいだでも言われてたんだけど、赤毛の人って本当に短気で怒りっぽいのかな?とりあえず彼には近づかないようにしよう。
フェロン公爵家の次女、イザベル・フェロンは美しい銀髪とエメラルドのような緑色の瞳が特徴で、とてもおしゃれな人らしい。ファッションの話とかしたら仲良くなれるかな?でも貴族のファッションなんて分からないよ。彼女にも近づかないようにしよう。
最後の一人が誰だかわかった。隣国ハイデル王国の第三王子、カルロス・ハイデル王子。留学して来たらしい。この人に関しては前情報がまったく無いので、近づかないようにしよう。
学園長の学園の歴史やら何やらの話をずっと聴いていたら、何だか眠くなってきた。
隣の席のオスカー・バーミリオンが腕を組み、足を投げ出して眠りはじめた。その貴族らしくない姿に下町の兄さん達を思い出して親近感を覚えた。
最後に在校生の代表として挨拶するために登場したのは、生徒会長をしているお兄様だった。
そう、わたしには3歳年上のお兄様がいる。レイモンド・コーサイス16歳、アルマー貴族学園の四年生で生徒会長をしている。入学してからずっと首席で通している、とても優秀な兄だ。
わたしはこの兄とあまり上手くいってない。
初めて会ったのはコーサイス侯爵家に移って4ケ月ほど経った冬の日、お兄様が冬の休暇で王都の侯爵家に帰省したときだ。
「はじめまして、お兄様。」
わたしは覚えたての貴族のお辞儀で挨拶したのだが、もの凄くビックリした顔をされた。
お母様は手紙でわたしのことを伝えたと言っていたが、きっと出すのを忘れてしまったのだ。お母様は貴婦人の皮を被っているからバレにくいけど、とても大雑把な性格をしている。
この出会いからお兄様との関係はずっとギクシャクしている。
会ってもほとんど話しかけてもくれない。内気な人なのかな、と思って来たけれど、生徒会長として堂々と挨拶しているところを見ると、そうは思えない。
嫌われているのかな。そう思うとすこし悲しくなった。
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!
友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。
探さないでください。
そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。
政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。
しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。
それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。
よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。
泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。
もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。
全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。
そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
別れてくれない夫は、私を愛していない
abang
恋愛
「私と別れて下さい」
「嫌だ、君と別れる気はない」
誕生パーティー、結婚記念日、大切な約束の日まで……
彼の大切な幼馴染の「セレン」はいつも彼を連れ去ってしまう。
「ごめん、セレンが怪我をしたらしい」
「セレンが熱が出たと……」
そんなに大切ならば、彼女を妻にすれば良かったのでは?
ふと過ぎったその考えに私の妻としての限界に気付いた。
その日から始まる、私を愛さない夫と愛してるからこそ限界な妻の離婚攻防戦。
「あなた、お願いだから別れて頂戴」
「絶対に、別れない」
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる