銃と少女と紅い百合

久藤レン

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おまけ短話

9.5 楽しい週末

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シリアス展開続きだったので気分転換と作者のモチベーションの為に書いたおまけ小話です。本編には(あんまり)関係ありません! 
──────────────────────


週末の昼下がり、事務所の中には朝から仕事で出かけている凛々奈以外の皆が居た。唯牙とハルはデスクで何か難しい話をしている。みいなとサクラは向かい合い中央のソファに腰掛けて紅茶とお菓子を味わっていた。暫くするとサクラは部屋に掛けてある時計に目をやってから立ち上がる。

「ハル・・・ 今日はもうオフでいいんだよね?」

「うん そうね、ただ夕方頃まで私はユイとちょっとやる事があるからここに居るわ 何処か行くの?」

 ハルは振り返りサクラに答えた。

「うん・・・ フラム達に呼ばれてて・・・」

「あははっ 人気者ねサクラちゃん! 行ってらっしゃい、遅くなる前に皆帰らないと駄目よ」

「分かってる、行ってきます・・・」

 サクラがそのまま出掛ける準備を始めると向かいに座っていたみいながソワソワと落ち着かない様子で横目で見ている事に気づいた。

「・・・みいな、どうしたの?」

「うぇ!? いえ! その、今日は凛々奈さんも居ないし唯牙さんとハルさんも忙しそうだから・・・ あの・・ その」

 もじもじと照れ臭そうにしている。

「・・・・みいなも来る?」

 察したサクラはみいなに手を伸ばした。

「い、良いんですか!?」

 ぱあっとみいなの顔が明るくなった。

「良いよね? 唯牙」

「まあお前が居れば問題ないだろ 何かあったらすぐ連絡しろよ」

 頬杖をついたまま唯牙は言った。

「じゃあ・・・ 行こうかみいな」

「えへへ! ハイ!!」

 伸ばされた手を握って立ち上がると二人は眩しい日光が照らす気持ちの良さそうな外へと歩いていった。




「遅いぞサクラ!!」

「こんにちは~」

「こんちゃ!」

 待ち合わせをしていた公園へ到着すると3人の少女達が出迎えた。入口に来たサクラに駆け寄るとその後ろに小さな影が隠れて居るのに気付く。

「あれ!? みいなだ!!」

「ほんとだ~ 久しぶり~」

「あはは! この前ビルで会ったよね!」

 3人はかわいい野良猫でも見つけたようにみいなを囲む。

「あ、あの急にごめんなさい・・・ その・・ 今日は・・・」

 急に囲まれたみいながおどおどと縮こまる。

「私が一緒に遊ぼって連れてきたの・・・ 皆良いよね」

「おおー! いいじゃん! サク姉、おもたんの新人勧誘!?」

 ライカが元気にサクラの背中を叩いた。

「いや・・・ 勧誘はしてないけど・・・ てかサク姉って何?」

「サクラお姉ちゃんって長いから!」

「・・・別にいいけど」

 そんなやり取りをしているとみいながサクラの横に出て来た。

「あの、お邪魔じゃないですか?」

 サクラの手を握って不安そうしているみいなにフラムが抱き着く。

「お邪魔じゃないってー! えへへ~ みいな久しぶりだね~」

「わわっ フラムちゃん」
 
「そうよ! それに近い内に私達から誘う予定だったんだから!」

 ライカが胸を張って言った。

「みいなちゃんもおもたんに入隊させようって前に話してたんだ~」

 その横でフーカも胸を張った。

「え? おもたん?」

「そういえば僕達みいなちゃんには直接自己紹介してなかったよね~ 僕はフーカ=フードゥルヴェント」

「私はライカ!!」

「あっ 私は花森みいな・・・ です お二人は双子なんですよね」

「そうだよ~ あ、そういえばあのビルの時言ってたね~」

「何だお前ら会った事あんのかよ」

 改めて自己紹介したフーカ達にフラムが割って入る。

「うん まあ僕達が一方的に遊んでもらいに行ったんだけどね~」

「ふーん」

 バアンッ

 急にライカが公園の中にあった木製の机を手で叩いた。

「そんな事よりも! 今からみいなの入隊テストをやるわ!!」

 ドヤ顔で親指を立ててサムズアップしている。

「え!? テスト・・・ ですか?」

 急に言われたみいながなんの事かと困り顔になる。

「ちょっとライカ! あんまり危ない事しちゃ駄目!」

 慌ててサクラが言うがライカは全く気にしない。

「え? 入隊テストなんてあんの?」

「ううん~ ライカ多分今思いついたんだと思うよ~」

 フラムとフーカもポカンとする。

「テストの内容はこれだぁ!!!」

 他の少女達を完全に置いてきぼりにしたままハイテンションのライカは何かをテーブルに叩きつけた。緑色のボードに黒い線でマス目が描かれているそれは。

「オセロ・・・?」

 みいな達はテーブルに近づく。

「最近僕達の家でマイブームなんだ~」

 フーカはスキップでライカの横に向かう。

「という訳でみいな! これが入隊テストよ! 私達4人を倒せるかな?」

 フーカとライカはオセロの乗ったテーブルを挟んで仁王立ち。

「えっ これ私達もやんの?」

「・・・・多分」

 フラムとサクラも察したようで双子の方へ歩いて行った。

「あ、あのまだその入ると決めた訳ではないですけど・・・・ 頑張り、ます!」

 みいなはぎゅっと拳を握りテーブルの横の椅子に座った。対面にはライカがどすんと偉そうに座る。

「にゃははは! まずは私が相手をしてやるぞ」

 ライカが片手でオセロの駒をジャラジャラと鳴らして言う。

「ねえ、アイツ強いの?」

 フラムがライカを指差してフーカへ訪ねた。

「う~ん? 僕と時雨と3人で遊んでる時は一番弱いよ~」

「弱いのかよ!!」

「みいなちゃんになら勝てるかもって思ってるんじゃないかな~」

「自分より弱い奴探してるだけ!? クソ野郎だな!?」

 言っている内に二人の対戦が始まろうとしていた。

「さあ! かかって来いみいな!!」

「お、お願いします!!」


◆ 数十分後

「なんでお前らも負けてんだよ!!」

「僕自身あったんだけどな~・・・」

「私あんまりやった事ないもん!!」

 テーブルの横では双子とフラムが四つん這いになって地面を叩いている。テーブルではサクラとみいなが向かい合い真剣な眼差しで盤面を見つめていた。

「まさかお姉ちゃん以外僕達全員ボロ負けするなんてね・・・」

「何やってんのよ! フーカあんた私より強い筈でしょ!! フラムには別に期待してなかったけど!」

「なんだとこの野郎!! 私だって頑張ったんだぞ!!」

「何が頑張っただ! 黒一色になったオセロ盤初めて見たわ!!」

「だっ! だって何処に置いてもみいなが取っちゃうんだもん!!」

「あはは~ みいなちゃんオセロ得意だったんだね~」

「で、でもまだ私達にはサクラが居るぞ!!」

 フラムが言うと3人は対戦を続けているサクラとみいなを真剣な目で見た。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 どうやらサクラのターンのようで難しい顔で盤面を見つめている。

「我がおもたん最年長のサク姉が負ける筈ないわ・・・」

 この勝負、どうなるかとライカがサクラを見つめていると。

「・・・・まいりました」

「負けるんかーーーい!!!」

 ズコーッ

 ライカが勢いよく倒れた。

「すご~い みいなちゃん強いんだね~」

「みいなにこんな特技があったなんて知らなかったぞ!」

 それを無視してフーカとフラムはテーブルに駆け寄った。

「・・・・・・なんか普通に悔しい」

 少しだけムスッと口を尖らせたサクラが小声で言うとみいなは気を使った笑顔で答える。

「えへへ、サクラさんも強かったですよ それに楽しかったです!」

 それを聞いたフーカとフラムが盤面を覗き込む。

「え、これお姉ちゃん白側だよね?」

「ぷぷっ あはははははは! 白2枚しかないじゃん!!」

 ほぼ真っ黒な盤面を見て二人は爆笑する。

「あははははは! あんなにキリッとした顔でやってたのに!」

「僕もてっきりいい勝負してたかと思ったよっ!」

「「わははははははははは」」

 二人に爆笑されて赤い顔になったサクラはすこし涙目。

「ふ、二人も負けてるでしょっ!」

「えへへ」

 そんなやり取りを見ていたみいなは楽しそうに笑っていた。

「認めるしかないようね、みいな! 貴方をおもたんのインテリジェンス担当として入隊を許可するわ!!」

 そこへいつの間にか立ち上がっていたライカがやって来た。

「いん? てりじぇ?」

 座ったままみいなは首を傾げる。

「そうよ! 貴方のその頭脳をおもたんの作戦係で今後の活動で活かしてもらうわ!!」

「え!? 作戦!? ただ一緒に遊ぶ集まりじゃないんですか!?」

「ふっふっふ それはね・・・」

 ライカがおもたんについて語り始めようとしたその時ドドドドドドッと地面を揺らす音が聞こえて来るのに気付いた。

「・・・・・・・あ、凛々奈だ」

 サクラが音の方を見ると鬼の形相で公園に走ってくる凛々奈が見えた。

「うわ! うるさいのが来た!!」

「絡まれる前に逃げろ~」

「アイツなんで怒ってんだよ!! 絶対面倒くさいぞ!!」

 わーーーー

双子とフラムはサクラとみいなを置いて両手を上げて走って公園から去って行ってしまった。

「待てコラガキ共!! 私に無断でみーちゃん連れ出したのはお前らか!!」

「・・・・おつかれ、凛々奈早かったね」

「凛々奈さん! お仕事もうお終いですか?」

 テーブルに座ったままのサクラとみいなの横まで凛々奈は勢い良く走り込んで来た。

「う~ みーちゃぁああん! 帰ったら姿が見えないから心配したんだよぉ~!!!」

 現れたと思ったらすぐにみいなに抱きつく凛々奈。頬杖をついてそれを見るサクラがいつもの光景かとやれやれと小さくため息をついた。凛々奈はみいな抱きついたまま顔だけ動かしてサクラを見る。

「ちょっとサクラ!! なに私抜きでみーちゃんと遊んでんのよ!!」

「・・・別に 凛々奈今日居なかったし、みいなも暇だったもんね?」

「えへへ! はい! サクラさん達と遊べて楽しかったです!!」

 満足そうにみいなは言った。

「うう~ みーちゃぁん! でもあんまり変な子と遊んじゃ駄目よ~」
 
 すりすりすりすり

頬ずりをしたまま凛々奈言う。

「え? 変な人? 私の知ってる人で一番変な人は凛々奈さんですよ?」

「はに゛ゃ!?」

 思いもよらぬ言葉のナイフを突き刺された凛々奈は仰け反り硬直する。

「・・・そろそろ帰ろうか みいな」

 サクラは立ち上がるとみいなの方へ進み手を差し出す。

「はい! 今日はありがとうございます! サクラさん!!」

「うん、また一緒に遊ぼうね」

 二人は手を繋いで帰路に就く。公園に残されたショックで固まったままの凛々奈とテーブルの上のオセロ盤にヒューっと冷たい風が吹いていた。



「ちょっとフーカ! 早くオセロ盤取って来てよ!! 失くしたら時雨に怒られる!!」

「やだよ~! ライカが行きなよ! なんであの人変なポーズで固まってるのさ!? 持って帰れないじゃん!!」

「相変わらず変な奴だよなー凛々奈って」

 公園の横の茂みに隠れた少女達は暫くオセロ盤の回収に手こずっていたのだった。
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