98 / 105
私がいたいのは
10-8 ロマンよね!
しおりを挟む
◆
いつの間にか雨が止んでいた空は一面の灰色から雲に覆われた星の一つも輝かない真っ黒な闇へと変わっていた。凛々奈はバイクを停車させてヘルメットを脱ぐ。揺れた凛々奈の黒と白の髪がキラリと煌めいた。
「また此処に来るなんてね」
小高い丘の上で小さく呟く。眼下に広がるのは同じ形の建物がいくつも並んだ倉庫地帯。その奥には空よりも漆黒の海が広がっている。
此処はあの日、みいなの為に初めて凛々奈が闘った場所、あの倉庫地帯。しかしあの時とは違い今夜丘に立っているのは一人。白銀凛々奈だけだった。丘の上から全体を見回すとあの日とは違い人気も無く静かだ。凛々奈は丘から高く跳躍し倉庫地帯を囲んでいるフェンスを飛び越える。
(今行くからね、みーちゃん!)
そして凛々奈は走り出す。たった一人で夜の中を。すると前方の倉庫から低い音と不気味な振動が伝わって来た。気になった凛々奈が其方に注意を向けると同時に爆発音と共に倉庫の壁をぶち抜いて何かが凛々奈に飛来する。
「うぉわ!!」
走る勢いのまま横に跳ねてそれを避けると凛々奈の居た場所から爆炎があがる。
ギャリギャリギャリギャリ
重い機械音が鳴る方を見ると5mはあろうかと言う鉄の塊が下部のキャタピラを動かし近づいて来ている。戦車というには大きすぎる異様な物体だった。
「なんだお前、メタル○ラッグか?」
鉄の塊は中央にある巨大な砲身を凛々奈に向ける。先程の攻撃はここから放たれたカノン砲だった。
「チッ」
舌打ちと同時にまた凛々奈は動きだす。砲撃に注意を払い距離を詰めようと左右に動きながら駆ける。しかし巨大な砲身よりも上部には大型の機関銃が取り付けられており、そこから銃弾の雨が降り注ぐ。
「危なッ」
凛々奈は全力で横に跳ねて別の倉庫の影に隠れた。盾になっている壁から火花と金属がぶつかる甲高い音が響く。
「あー、なんか見たことあるなって思ったらあれか」
凛々奈は過去に同じタイプの兵器と会った時の事を思い出す。
「機動武装ドローン・・・ なんとかかんとか、あの時は私では火力不足だってセンセがワンパンでブッ壊したのよね~」
『機動武装ドローン フォートレス。最新の無人兵器』
凛々奈は腰に手を伸ばす。
「でも今回はこの子のお披露目に丁度いいわ」
ホルスターから引き抜いた白銀の銃に白と黒、二色の弾丸を込めた。
「ふふふ、やっぱり・・・」
凛々奈が言いかけると壁越しのフォートレスからガゴンッと音がする。
「っと、行くわよ!!」
ドゴォン
凛々奈の居た倉庫の壁ごと爆発する。煙の中から凛々奈が飛びだした。そして凛々奈はパレットバレットの撃鉄を強く引く。するとパレットバレットの銃身の装甲が稼働し開いた。その隙間は黄金の輝きを放ち光が洩れる。
銃を強く握ったまま全速力で凛々奈は駆ける。襲い来る機関銃の弾丸も追いつかない程早く。そのまま凛々奈は横の倉庫の壁を勢いのまま踏み台にしてフォートレスの真上に跳ねた。
◆ 数年前 凛々奈と浅葱
「うおおお!!! 可愛い!!!」
凛々奈(10)がパレットバレットを手に飛び跳ねている。
「一応お前の身体能力に合わせて作ってあるからな、一点物だ 壊すなよ」
浅葱は不機嫌そうに言った。
「ねーねー! これあれ出来る!? あれ!!」
凛々奈が目を輝かせて浅葱を見る。
「ああん? あれ?」
「チャージショット!!!」
何を言ってるんだコイツはと浅葱は顔を顰める。
「現実の銃にチャージショット出来る奴は無えよ」
「ハァ!? 銃と言ったらチャージショットでしょうが!!!」
「お前はゲームのやりすぎだ」
「ロッ○マンだって4からチャージショット出来るのよ!?」
「いろんな弾撃てるだけで我慢しろ!!」
「んだよ~、武器オタの癖にロマンが分かんないかなぁ~」
◆
「やっぱり、チャージショットはロマンよね!!! ヴァイスインパクト.RM|《レールマグナム》 フルチャージ!!」
フォートレスの真上から凛々奈は両手で真下に向かって引き金を引いた。
激しい閃光と衝撃波。まるでそこに雷が落ちたかの様な衝撃だった。凛々奈はフォートレスの居た位置から数十メートル離れた所に尻もちをついている。
「い、痛あああああああああい!!!!」
涙目で夜空に叫ぶ。
「アホかぁ!!! 武器オタの奴加減しろ!!! 肩から千切れるかと思ったわ!!!」
自身の撃ちだした弾丸の威力に吹き飛ばされていた。
「私じゃなかったら指から肩まで骨が粉々んなるわよこれ・・・」
いたた、とゆっくり立ち上がりフォートレスの居た場所を見る。
「・・・・わぁお」
そこには形も残って居ないグチャグチャのフォートレスの残骸と巨大なクレーターが出来ていた。
「・・・・マジで加減しろよ」
余りの威力に顔を引き攣らせる凛々奈。
『パレットバレット.RM|《レールマグナム》 バッテリー65%』
すると手元のパレットバレットから声が聞こえた。
「うぉわ! ビックリした!! 喋ったああ!?」
慌ててパレットバレットを落としそうになる。
「おお~ なんかいきなりハイテクになったわね~
てか今の声みーちゃんに似てて可愛かったわ」
スリスリとパレットバレットに頬ずりをする。実はパレットバレットから流れる声は浅葱がこっそり録音しサンプリングしたみいなの声の合成音声で出来ている。
「っと今はそれどころじゃないか! みーちゃん!」
散らばった兵器の残骸を踏み越えて凛々奈は、また走り出した。
いつの間にか雨が止んでいた空は一面の灰色から雲に覆われた星の一つも輝かない真っ黒な闇へと変わっていた。凛々奈はバイクを停車させてヘルメットを脱ぐ。揺れた凛々奈の黒と白の髪がキラリと煌めいた。
「また此処に来るなんてね」
小高い丘の上で小さく呟く。眼下に広がるのは同じ形の建物がいくつも並んだ倉庫地帯。その奥には空よりも漆黒の海が広がっている。
此処はあの日、みいなの為に初めて凛々奈が闘った場所、あの倉庫地帯。しかしあの時とは違い今夜丘に立っているのは一人。白銀凛々奈だけだった。丘の上から全体を見回すとあの日とは違い人気も無く静かだ。凛々奈は丘から高く跳躍し倉庫地帯を囲んでいるフェンスを飛び越える。
(今行くからね、みーちゃん!)
そして凛々奈は走り出す。たった一人で夜の中を。すると前方の倉庫から低い音と不気味な振動が伝わって来た。気になった凛々奈が其方に注意を向けると同時に爆発音と共に倉庫の壁をぶち抜いて何かが凛々奈に飛来する。
「うぉわ!!」
走る勢いのまま横に跳ねてそれを避けると凛々奈の居た場所から爆炎があがる。
ギャリギャリギャリギャリ
重い機械音が鳴る方を見ると5mはあろうかと言う鉄の塊が下部のキャタピラを動かし近づいて来ている。戦車というには大きすぎる異様な物体だった。
「なんだお前、メタル○ラッグか?」
鉄の塊は中央にある巨大な砲身を凛々奈に向ける。先程の攻撃はここから放たれたカノン砲だった。
「チッ」
舌打ちと同時にまた凛々奈は動きだす。砲撃に注意を払い距離を詰めようと左右に動きながら駆ける。しかし巨大な砲身よりも上部には大型の機関銃が取り付けられており、そこから銃弾の雨が降り注ぐ。
「危なッ」
凛々奈は全力で横に跳ねて別の倉庫の影に隠れた。盾になっている壁から火花と金属がぶつかる甲高い音が響く。
「あー、なんか見たことあるなって思ったらあれか」
凛々奈は過去に同じタイプの兵器と会った時の事を思い出す。
「機動武装ドローン・・・ なんとかかんとか、あの時は私では火力不足だってセンセがワンパンでブッ壊したのよね~」
『機動武装ドローン フォートレス。最新の無人兵器』
凛々奈は腰に手を伸ばす。
「でも今回はこの子のお披露目に丁度いいわ」
ホルスターから引き抜いた白銀の銃に白と黒、二色の弾丸を込めた。
「ふふふ、やっぱり・・・」
凛々奈が言いかけると壁越しのフォートレスからガゴンッと音がする。
「っと、行くわよ!!」
ドゴォン
凛々奈の居た倉庫の壁ごと爆発する。煙の中から凛々奈が飛びだした。そして凛々奈はパレットバレットの撃鉄を強く引く。するとパレットバレットの銃身の装甲が稼働し開いた。その隙間は黄金の輝きを放ち光が洩れる。
銃を強く握ったまま全速力で凛々奈は駆ける。襲い来る機関銃の弾丸も追いつかない程早く。そのまま凛々奈は横の倉庫の壁を勢いのまま踏み台にしてフォートレスの真上に跳ねた。
◆ 数年前 凛々奈と浅葱
「うおおお!!! 可愛い!!!」
凛々奈(10)がパレットバレットを手に飛び跳ねている。
「一応お前の身体能力に合わせて作ってあるからな、一点物だ 壊すなよ」
浅葱は不機嫌そうに言った。
「ねーねー! これあれ出来る!? あれ!!」
凛々奈が目を輝かせて浅葱を見る。
「ああん? あれ?」
「チャージショット!!!」
何を言ってるんだコイツはと浅葱は顔を顰める。
「現実の銃にチャージショット出来る奴は無えよ」
「ハァ!? 銃と言ったらチャージショットでしょうが!!!」
「お前はゲームのやりすぎだ」
「ロッ○マンだって4からチャージショット出来るのよ!?」
「いろんな弾撃てるだけで我慢しろ!!」
「んだよ~、武器オタの癖にロマンが分かんないかなぁ~」
◆
「やっぱり、チャージショットはロマンよね!!! ヴァイスインパクト.RM|《レールマグナム》 フルチャージ!!」
フォートレスの真上から凛々奈は両手で真下に向かって引き金を引いた。
激しい閃光と衝撃波。まるでそこに雷が落ちたかの様な衝撃だった。凛々奈はフォートレスの居た位置から数十メートル離れた所に尻もちをついている。
「い、痛あああああああああい!!!!」
涙目で夜空に叫ぶ。
「アホかぁ!!! 武器オタの奴加減しろ!!! 肩から千切れるかと思ったわ!!!」
自身の撃ちだした弾丸の威力に吹き飛ばされていた。
「私じゃなかったら指から肩まで骨が粉々んなるわよこれ・・・」
いたた、とゆっくり立ち上がりフォートレスの居た場所を見る。
「・・・・わぁお」
そこには形も残って居ないグチャグチャのフォートレスの残骸と巨大なクレーターが出来ていた。
「・・・・マジで加減しろよ」
余りの威力に顔を引き攣らせる凛々奈。
『パレットバレット.RM|《レールマグナム》 バッテリー65%』
すると手元のパレットバレットから声が聞こえた。
「うぉわ! ビックリした!! 喋ったああ!?」
慌ててパレットバレットを落としそうになる。
「おお~ なんかいきなりハイテクになったわね~
てか今の声みーちゃんに似てて可愛かったわ」
スリスリとパレットバレットに頬ずりをする。実はパレットバレットから流れる声は浅葱がこっそり録音しサンプリングしたみいなの声の合成音声で出来ている。
「っと今はそれどころじゃないか! みーちゃん!」
散らばった兵器の残骸を踏み越えて凛々奈は、また走り出した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる