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私がいたいのは
10-5 目が覚めて、走り出す
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◆
「・・・ちゃん!! 凛々奈ちゃん!」
ザーザーと遠くに聞こえる雨の音と自分の名前を呼ぶ声で目が冷めた。
「うぐぁ・・」
全身の痛みで顔が歪むが、それよりも大切な事が頭を過る。
「みーちゃん!!」
ハッとして倒れた状態から起き上がろうとすると目の前にいたシエルに押さえつけられた。
「まだ動いちゃだめ!! とりあえずこれ! 口にできる!?」
シエルは透明の棒付きキャンディを凛々奈の前に持ってくる。凛々奈の回復力を強化するフレーバー、リジェネレイト。
「あ、ありがと」
差し出されたキャンディを口にして凛々奈は一息付く。
「危なかったわね、もう数cm横を刺されていたら心臓に届いてたわよ」
言われて刺された自身の胸を見ると包帯が巻かれ、しっかりと処置されていた。
「ああ、刺された瞬間にギリギリ上半身捻ったからね、やっぱ私の反射神経最強だわ」
少しずつ、傷が塞がるのを感じる。
「一体何があったの、凛々奈?」
シエルの横には心配そうに見つめる月鈴もいる。
「ん~、トロイの木馬? いやこれは偶然入り込んだだけだしちょっと違うか?」
「どういう事?」
「シエルさん達、大ハズレを拾っちゃったんだよ、あの子供がハルさん達をやった犯人」
言われたシエルと月鈴が驚く。
「そんな・・・」
「ごめん、凛々奈・・・ あの子の治療は主に私がやってたんだ・・・ もしも先生が担当してたらすぐに気付いたのかも・・・」
月鈴はそう言い顔を伏せた。
「ううん、悪いのはあのクソガキだから、医者として人を助けようって行動した二人は立派だよ・・・闇医者だけど!」
「うん、ありがとう凛々奈」
「さて!」
凛々奈は勢い良く立ち上がった。
「それじゃあ私はみーちゃんを取り返しにいってくるわ」
「やっぱり、姿が見えないからもしかしてと思ったけれど、連れ去られてしまったのね・・・」
「ついでにあのクソガキに借りを返してやるわ、みーちゃんを取り返して借りを返す! ギブアンドテイク!」
「全然違うと思うよ・・・」
「待って凛々奈ちゃんそれならすぐに唯牙に連絡を・・・」
「無駄だよ」
シエルは電話で連絡をしようとするが凛々奈はそれを止めた。
「え!?」
「アイツら多分、ガチで私達にケンカ売りに来てる・・・」
「どういう事? 凛々奈?」
「私達に狙いを定めて闘り合おうって時、相手が絶対にやらなきゃいけない事って何だと思う?」
「えっ・・・ 分かんない」
月鈴が首をかしげる。
「神代唯牙をどう足止めするか、だよ」
「唯牙さんを?」
まだ月鈴は分かっていないようだ。
「それが達成出来ないならセンセが全部ボコって終わりだから、神代唯牙を殺せる人間なんてこの世に数人しか居ないし」
凛々奈は先程事務所を出て行った唯牙の表情を思い出す。
「多分今センセは動けない、どうやってんのかは分かんないけど、何かしらの問題に対処してる筈だよ」
そして凛々奈は診療所から出て行こうと歩き出す。途中で落ちていた自身のスマートフォンも拾う。サクラとの通話はもう切断されていた。
(サクラも怪我してるからな、頼るのはよそうか・・・)
「シエルさん、ここの地下にハルさんのバイク一台保管してあったよね? 鍵貸して」
「・・・分かったわ、ちょっとだけ待ってて」
言われたシエルは奥の部屋へと向かう。
「凛々奈、免許持ってたっけ?」
「無いよ! でもセンセに教わったから大丈夫!大丈夫!」
「無免許は駄目だろ!!」
「うるさい!! ナイフと銃持ってお仕事してる私がそんなもん気にするか!!」
月鈴と話していると奥からシエルが戻ってくる。バイクの鍵と棒付きキャンディを二本手にして。
「凛々奈ちゃん、鍵と・・・ これ」
凛々奈は鍵と黄緑色と黄色をしたキャンディを受け取る。
「まだ試作段階だけれど、唯牙に言われてたの・・ 近々大きな問題が起こる、自分が動けない時は凛々奈にできる限り手を貸してくれって」
「シエルさん・・・」
「その時唯牙が持ってきた血のサンプルから作ったフレーバー、凛々奈ちゃんには双子のって言えば伝わるって言ってたわ」
「双子? ああ・・・ おっけい」
察した凛々奈はポケットに貰った物をしまい込む。
「ありがとシエルさん、月鈴、行ってくる」
「凛々奈ちゃん・・・ 無理しちゃ駄目よ! みいなちゃんと絶対に帰って来て」
「凛々奈・・・ 死ななきゃ治してやるから! 絶対に死ぬなよ!!」
「あったりめえよ!」
笑顔を向けて手を降ると凛々奈は駆け出した。地下駐車場には被ったシーツが被せられたバイクがある。それを勢い良く外してバイクに跨る。
(やっば、頭いった・・・ クラクラする・・・)
シエル達の前では必死に強がって見せていたが、血を流しすぎた影響か凛々奈の体調は最悪だった。
(とりあえず一回事務所帰って準備とみーちゃんの位置調べないとな)
「待っててね、みーちゃん!」
最悪なコンディションの体をみいなへの思いで奮い立たせ、凛々奈は動き出した。
「・・・ちゃん!! 凛々奈ちゃん!」
ザーザーと遠くに聞こえる雨の音と自分の名前を呼ぶ声で目が冷めた。
「うぐぁ・・」
全身の痛みで顔が歪むが、それよりも大切な事が頭を過る。
「みーちゃん!!」
ハッとして倒れた状態から起き上がろうとすると目の前にいたシエルに押さえつけられた。
「まだ動いちゃだめ!! とりあえずこれ! 口にできる!?」
シエルは透明の棒付きキャンディを凛々奈の前に持ってくる。凛々奈の回復力を強化するフレーバー、リジェネレイト。
「あ、ありがと」
差し出されたキャンディを口にして凛々奈は一息付く。
「危なかったわね、もう数cm横を刺されていたら心臓に届いてたわよ」
言われて刺された自身の胸を見ると包帯が巻かれ、しっかりと処置されていた。
「ああ、刺された瞬間にギリギリ上半身捻ったからね、やっぱ私の反射神経最強だわ」
少しずつ、傷が塞がるのを感じる。
「一体何があったの、凛々奈?」
シエルの横には心配そうに見つめる月鈴もいる。
「ん~、トロイの木馬? いやこれは偶然入り込んだだけだしちょっと違うか?」
「どういう事?」
「シエルさん達、大ハズレを拾っちゃったんだよ、あの子供がハルさん達をやった犯人」
言われたシエルと月鈴が驚く。
「そんな・・・」
「ごめん、凛々奈・・・ あの子の治療は主に私がやってたんだ・・・ もしも先生が担当してたらすぐに気付いたのかも・・・」
月鈴はそう言い顔を伏せた。
「ううん、悪いのはあのクソガキだから、医者として人を助けようって行動した二人は立派だよ・・・闇医者だけど!」
「うん、ありがとう凛々奈」
「さて!」
凛々奈は勢い良く立ち上がった。
「それじゃあ私はみーちゃんを取り返しにいってくるわ」
「やっぱり、姿が見えないからもしかしてと思ったけれど、連れ去られてしまったのね・・・」
「ついでにあのクソガキに借りを返してやるわ、みーちゃんを取り返して借りを返す! ギブアンドテイク!」
「全然違うと思うよ・・・」
「待って凛々奈ちゃんそれならすぐに唯牙に連絡を・・・」
「無駄だよ」
シエルは電話で連絡をしようとするが凛々奈はそれを止めた。
「え!?」
「アイツら多分、ガチで私達にケンカ売りに来てる・・・」
「どういう事? 凛々奈?」
「私達に狙いを定めて闘り合おうって時、相手が絶対にやらなきゃいけない事って何だと思う?」
「えっ・・・ 分かんない」
月鈴が首をかしげる。
「神代唯牙をどう足止めするか、だよ」
「唯牙さんを?」
まだ月鈴は分かっていないようだ。
「それが達成出来ないならセンセが全部ボコって終わりだから、神代唯牙を殺せる人間なんてこの世に数人しか居ないし」
凛々奈は先程事務所を出て行った唯牙の表情を思い出す。
「多分今センセは動けない、どうやってんのかは分かんないけど、何かしらの問題に対処してる筈だよ」
そして凛々奈は診療所から出て行こうと歩き出す。途中で落ちていた自身のスマートフォンも拾う。サクラとの通話はもう切断されていた。
(サクラも怪我してるからな、頼るのはよそうか・・・)
「シエルさん、ここの地下にハルさんのバイク一台保管してあったよね? 鍵貸して」
「・・・分かったわ、ちょっとだけ待ってて」
言われたシエルは奥の部屋へと向かう。
「凛々奈、免許持ってたっけ?」
「無いよ! でもセンセに教わったから大丈夫!大丈夫!」
「無免許は駄目だろ!!」
「うるさい!! ナイフと銃持ってお仕事してる私がそんなもん気にするか!!」
月鈴と話していると奥からシエルが戻ってくる。バイクの鍵と棒付きキャンディを二本手にして。
「凛々奈ちゃん、鍵と・・・ これ」
凛々奈は鍵と黄緑色と黄色をしたキャンディを受け取る。
「まだ試作段階だけれど、唯牙に言われてたの・・ 近々大きな問題が起こる、自分が動けない時は凛々奈にできる限り手を貸してくれって」
「シエルさん・・・」
「その時唯牙が持ってきた血のサンプルから作ったフレーバー、凛々奈ちゃんには双子のって言えば伝わるって言ってたわ」
「双子? ああ・・・ おっけい」
察した凛々奈はポケットに貰った物をしまい込む。
「ありがとシエルさん、月鈴、行ってくる」
「凛々奈ちゃん・・・ 無理しちゃ駄目よ! みいなちゃんと絶対に帰って来て」
「凛々奈・・・ 死ななきゃ治してやるから! 絶対に死ぬなよ!!」
「あったりめえよ!」
笑顔を向けて手を降ると凛々奈は駆け出した。地下駐車場には被ったシーツが被せられたバイクがある。それを勢い良く外してバイクに跨る。
(やっば、頭いった・・・ クラクラする・・・)
シエル達の前では必死に強がって見せていたが、血を流しすぎた影響か凛々奈の体調は最悪だった。
(とりあえず一回事務所帰って準備とみーちゃんの位置調べないとな)
「待っててね、みーちゃん!」
最悪なコンディションの体をみいなへの思いで奮い立たせ、凛々奈は動き出した。
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