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過保護な姉とお友達
9 プロローグ
しおりを挟む「ん? どうしたのみいなちゃん」
ある週末の夜、デスクに座る唯牙の前にみいなが立って少しもじもじと手を組んだ後口を開く。
「あ、あの明日お出かけしてもいいですか!?」
「別に構わないよ、何処か行きたい所でもあるのかい? 明日は私と凛々奈も予定はないからね」
そんな事かと軽く答えるがみいなは続ける。
「そ、そうではなくて・・・ 明日学校のお友達とお出かけしてきてもいいでしょうか・・・・?」
どうやら子供達だけで何処かへ遊びに行きたい様だ。
「ふむ、今までは確かに、何処へ行くのにも念の為私達が一緒だったからね」
「お二人が私の事を守る為なのは分かってます! でも・・・」
顔を伏せて申し訳なさそうに呟く。
「うん、構わないよ」
「え!?」
その答えに顔をあげるみいな。少し癖のある長い髪がピョコっと跳ねる。
「ただこれをもっていってくれるかな?」
唯牙は机の引き出しから取り出した物をみいなに手渡す。それは一般的な防犯ブザーの形をしたキーホルダーだった。
「こういう時の為に用意しておいたんだ、もしも君に何か危ない事が起こったらそれを使ってくれ」
貰った物をまじまじと見ながらみいなが言う。
「これ、この紐を引っ張るんですよね?」
「そうだよ、形はただの防犯ブザーだけど起動すると同時に私達に連絡が入る、それを持っていれば私達の手が空いている日なら少し出掛けるくらい大丈夫だろう」
「あ! ありがとう御座います!! 唯牙さん!! じゃ、じゃあ明日の準備をしてきます!!」
みいなは深々と頭を下げるとご機嫌なステップで自分の部屋へと向かっていった。
「学校で上手くやれてるみたいだね・・・」
その様子を見て安心する唯牙。しかし事務所の中心のソファーからただならぬ圧を感じる。
「・・・・・・・・・なんだ?」
そちらを見るとソファーに寝転がったまま凄まじい眼力で此方を睨む凛々奈がいた。
「な~に勝手に決めてんのよ!!! センセ!! みーちゃんだけでお出掛けなんて許しませんけど!!!」
唯牙の前まで飛び跳ねてやってきてデスクを両手で叩いて言う。
「だからちゃんと連絡手段を渡しただろうが」
「うがあああああ!! そんなんで安心できるか!!! お姉ちゃんは許しません!!! 心配で心臓が爆発するうう!!!」
人のデスクの前で暴れ回る凛々奈を見て溜息をつく唯牙。
「お前、みいなちゃんが思春期になったら間違いなく嫌われるな」
「んな事あるか!! 何時までもラブラブじゃぁい!!!」
「はあ、そんなに言うなら付いていってやればいいだろ」
「え!? いいの!?」
暴れ回っていた凛々奈は動きを止めてキラキラと輝く目で唯牙を見る。
「ただし影からだ、バレる事は許さんぞ、もしもバレたら・・・・」
「バレたら?」
「小遣い七割カット、三ヶ月」
「うぐぅ!!」
「それが約束できないなら許さん、殴ってでも止める」
「な・・・な・・・ 七割がなんぼのもんじゃい!! 私のみーちゃんへの思いを金で買えると思うなよ!!!」
そう言い残し凛々奈も自分の部屋へと走っていった。
「まったく、あいつが暴走しないように保険がいるな」
残された唯牙は何処かへ電話を掛け始めた。
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