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皆で潜入オークション
7 エピローグ
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一番上のフロアが屋上ごと吹き飛んでモクモクと煙が上がっているビル。そこから1キロ程離れた町中を流れる小さな川の横にあるベンチに派手な仮面をつけた女性が足を組んで腰掛けている。煙が上がるビルと近くのビルやレストラン等の店舗の照明を反射してキラキラ光る川をぼーっとその女性は眺めていた。その横にはカラフルな布の様な物がぐしゃぐしゃになって置かれている。
「ふぅ、神代唯牙・・・ なかなか面白い人だったね・・・」
誰に言うでもなく独り言を言う。
「思った通りいい人そうだし実力もある、仲良くなっておいて損はないな・・・ しかし疲れた、流石は殲滅の爆雷帝だ、対峙していて冷や汗が止まらなかった」
そう言ってシャツの胸元を手でパタパタと扇ぐ、唯牙に破られたシャツは無理やり中央で結んで胸元だけを隠すような形になっていた。
「ふーむ、そろそろ来る頃だと思うんだが・・・」
時間を確認しようと腕時計を見ようとした時。
「時雨ー!!」
可愛らしい元気な声が聞こえた。
「おお!! 待っていたよ君達!!!」
立ち上がり振り返るとそこには紙袋を両手に持って大きく上げて振っているライカと新品のシャツを胸に抱えて持っているフーカがいた。
「ちょっとライカ! そんなに振り回したら溢れちゃうよ!!」
フーカが振り回しているライカの手を引っ張って下げる。
「だいじょぶだって! 時雨~ 買ってきたよ~」
二人は元気に駆け寄ってくる。
「はい時雨、これ先に」
時雨の元までやってくるとフーカは抱いていた新品のシャツを時雨に手渡した。
「うむ! お使いありがとう!! ちょっとまっていてくれたまえ!!!」
一人だった時と全く違うテンションで時雨は言うと貰ったシャツを手にしたまま横にあったカラフルな布、脱出に使ったパラシュートを頭から被り体を隠す。暫くもぞもぞと動いたかと思うと勢いよく布が上がり中から綺麗なシャツを着た時雨が現れた。
「着替え完了だ!!」
大げさに決めポーズをとりながら言う。
「こっちもちゃんと買ってきたよ! 今日はいっぱい動いたからお腹を減っちゃったよ! 食べよ食べよ!」
ライカは紙袋をもってベンチの右端に座る。
「僕もお腹ペコペコ~」
お腹をさすりながらフーカは左端に座る。
「早く! 時雨!!」
ライカが言うと二人は真ん中に空いたスペースを手で叩いて時雨を呼ぶ。
「はっはっはっ! 分かってるよ! 全く両手に花だねぇ!」
二人に挟まれた真ん中に座るとライカが袋の中から何かを取り出して時雨に手渡す。
「はい! 今日から始まった限定バーガーとアイスコーヒー!」
それは一般的なチェーン店のハンバーガー、近頃宣伝されている期間限定のメニューだった。
「ありがとう! さて今回のは当たりかな?」
「私は多分好きだと思うな~今回の~」
ライカはまた袋に手を入れようとする。
「君達! 駄目だよちゃんと手を洗わないと!! あそこに水道があるからそこで洗っておいで!! 私はさっき洗ったからね!」
時雨が指を指す方には小さな広場があり、隅には手洗い用の蛇口と水飲みがついた水道があった。
「むぅ~! めんどくさい!」
「駄目だよ! ・・・・お母さんにも言われてただろ?」
真面目に言う時雨の言葉を聞くとフーカは立ち上がってライカの手を引く。
「・・・行くよライカ」
「・・・うん」
二人が手を洗いに行くと時雨は空を見上げる。
「ほんとに、あの子達は君のおとなしい所とおてんばな所をそれぞれ引き継いじゃってるよ・・・ソラ・・」
もういない、あの子達の母親に向かって言う。
あの子達の母親で、時雨の大切だった人。彼女の顔が浮かび昔の思い出が蘇ろうかという時。
「洗ってきたー!!」
「ライカ! ちゃんと拭くの!」
走って来るライカとハンカチを持って追いかけてくるフーカに意識を戻される。
「よし!それじゃ食べようか!!」
さっきと同じ様に両端にそれぞれ座る二人。
「フーカはハイ、これでしょ」
「うん、ありがと」
ライカが袋からまたハンバーガーを取り出して今度はフーガに渡す。
「おや? フーカは普通のハンバーガーかい?」
「だって僕辛いの苦手だもん・・・」
「にゃはははは! 今回のちょっと辛そうだもんね~!」
ライカは袋から時雨とは違う派手な包装の限定バーガーを取り出す。
「そうか! 次のはフーカが好きな味だといいねぇ!! それじゃあいただきます!」
「「いただきまぁす!」」
三人を仲良く一緒に食べる。
「うむ! なかなかイケるじゃないか!」
「う~ん、私は前の限定バーガーの方が好きかな~」
「ねえねえ、辛くなかったら僕にも一口ちょうだい?」
「そんなに辛くないぞ、食べてみるかい?」
時雨がフーカに持っていたハンバーガーを差し出すとフーカは恐る恐る小さく一口食べた。
「うわっ! 辛ッ!」
「はっはっはっ! フーカは本当に辛いのが駄目だねぇ!」
「ずるい!! わたしも!!」
辛さに耐えるフーカを笑っていると逆からライカが首を伸ばして時雨のハンバーガーを一口食べる。
「おいおい、私のが無くなってしまうじゃないか!」
「うーん、たしかにちょっとだけ辛いかも」
食べながらライカが言う。
「ははは、次に期待だねぇ!」
三人はのんびりと川を眺めながらハンバーガーセットを食べ終えた
「それで、どうだった? 楽しかったかい?」
バーガーの包み紙などのゴミを片付けながら時雨は二人に聞く。
「うん! 久しぶりに力も使って運動できて気持ち良かった!!」
「僕も楽しかったよ~ やっぱりたまには能力を使って運動しないと気持ち悪いんだよね~」
「それは良かったね!」
「ねーねー時雨~ また凛々奈達の所に遊びに行っていい?」
「あ、僕も行きたい」
「そうだねぇ! 今回で顔見知りになったしまた行っても大丈夫だろう!」
「「やった~!」」
「二人共・・・ 今は、楽しいかい?」
時雨は右手を顔に持っていき派手な仮面に手を掛ける。
「不安はないかい? 悲しくないかい? 何か、嫌な事はないかい?」
そう言って仮面を外す。今まで隠れていた時雨の顔が見えた。その顔は優しそうな、母親の様な暖かい表情をしていた。
「・・・・・うん、僕達時雨と一緒に居られて幸せだよ」
「お母さんが死んじゃった時はもう全部イヤになってたけど、私達は時雨のおかげで毎日楽しいよ、」
「「えへへ、時雨大好き」」
時雨の両頬に二人が顔を近付けて口付けをした。それに顔を赤くした時雨はその顔を隠すようにまた仮面をつけて言う。
「わはははは! 本当に両手に花だねぇ!」
「時雨~ そういえばそっちはどうだったの?」
ライカが自分の方の時雨の腕を抱いて顔を見上げながら聞く。
「うん?」
「なんか強い人だったんでしょ~そっちの」
フーカも腕を抱いて顔を見上げる。
「ああ、ヤバかったねぇ! だけど見たかった物も見れたし中々いい経験だったよ」
「「ふ~ん」」
「というわけで今日の遊びは大成功だね!!」
「「大成功~」」
「さて、疲れたしもう帰ろうか!」
時雨が言い三人は同時に立ち上がり歩き出す。
「私大人になったら時雨と結婚する~」
「僕がするから駄~目」
「ははははは、大人になる頃には他に素敵な人が見つかるよ!」
「やだもん、時雨とずっと居るもん!」
「ぼ、僕も!」
「わっはっは! 私は幸せ者だねぇ!!!」
二人が腕を掴んだまま歩く。時雨は空を見上げる。
(神代唯牙、そういえば答えていなかったね)
見上げた顔を下げて両腕にギュッと抱きついている二人を見る。
(因子を持つこの子達が君の所の“卵”の子に惹かれないのは・・・・)
(因子の衝動なんかよりもずっと強い思い、愛を知ってるからだよ)
「ふぅ、神代唯牙・・・ なかなか面白い人だったね・・・」
誰に言うでもなく独り言を言う。
「思った通りいい人そうだし実力もある、仲良くなっておいて損はないな・・・ しかし疲れた、流石は殲滅の爆雷帝だ、対峙していて冷や汗が止まらなかった」
そう言ってシャツの胸元を手でパタパタと扇ぐ、唯牙に破られたシャツは無理やり中央で結んで胸元だけを隠すような形になっていた。
「ふーむ、そろそろ来る頃だと思うんだが・・・」
時間を確認しようと腕時計を見ようとした時。
「時雨ー!!」
可愛らしい元気な声が聞こえた。
「おお!! 待っていたよ君達!!!」
立ち上がり振り返るとそこには紙袋を両手に持って大きく上げて振っているライカと新品のシャツを胸に抱えて持っているフーカがいた。
「ちょっとライカ! そんなに振り回したら溢れちゃうよ!!」
フーカが振り回しているライカの手を引っ張って下げる。
「だいじょぶだって! 時雨~ 買ってきたよ~」
二人は元気に駆け寄ってくる。
「はい時雨、これ先に」
時雨の元までやってくるとフーカは抱いていた新品のシャツを時雨に手渡した。
「うむ! お使いありがとう!! ちょっとまっていてくれたまえ!!!」
一人だった時と全く違うテンションで時雨は言うと貰ったシャツを手にしたまま横にあったカラフルな布、脱出に使ったパラシュートを頭から被り体を隠す。暫くもぞもぞと動いたかと思うと勢いよく布が上がり中から綺麗なシャツを着た時雨が現れた。
「着替え完了だ!!」
大げさに決めポーズをとりながら言う。
「こっちもちゃんと買ってきたよ! 今日はいっぱい動いたからお腹を減っちゃったよ! 食べよ食べよ!」
ライカは紙袋をもってベンチの右端に座る。
「僕もお腹ペコペコ~」
お腹をさすりながらフーカは左端に座る。
「早く! 時雨!!」
ライカが言うと二人は真ん中に空いたスペースを手で叩いて時雨を呼ぶ。
「はっはっはっ! 分かってるよ! 全く両手に花だねぇ!」
二人に挟まれた真ん中に座るとライカが袋の中から何かを取り出して時雨に手渡す。
「はい! 今日から始まった限定バーガーとアイスコーヒー!」
それは一般的なチェーン店のハンバーガー、近頃宣伝されている期間限定のメニューだった。
「ありがとう! さて今回のは当たりかな?」
「私は多分好きだと思うな~今回の~」
ライカはまた袋に手を入れようとする。
「君達! 駄目だよちゃんと手を洗わないと!! あそこに水道があるからそこで洗っておいで!! 私はさっき洗ったからね!」
時雨が指を指す方には小さな広場があり、隅には手洗い用の蛇口と水飲みがついた水道があった。
「むぅ~! めんどくさい!」
「駄目だよ! ・・・・お母さんにも言われてただろ?」
真面目に言う時雨の言葉を聞くとフーカは立ち上がってライカの手を引く。
「・・・行くよライカ」
「・・・うん」
二人が手を洗いに行くと時雨は空を見上げる。
「ほんとに、あの子達は君のおとなしい所とおてんばな所をそれぞれ引き継いじゃってるよ・・・ソラ・・」
もういない、あの子達の母親に向かって言う。
あの子達の母親で、時雨の大切だった人。彼女の顔が浮かび昔の思い出が蘇ろうかという時。
「洗ってきたー!!」
「ライカ! ちゃんと拭くの!」
走って来るライカとハンカチを持って追いかけてくるフーカに意識を戻される。
「よし!それじゃ食べようか!!」
さっきと同じ様に両端にそれぞれ座る二人。
「フーカはハイ、これでしょ」
「うん、ありがと」
ライカが袋からまたハンバーガーを取り出して今度はフーガに渡す。
「おや? フーカは普通のハンバーガーかい?」
「だって僕辛いの苦手だもん・・・」
「にゃはははは! 今回のちょっと辛そうだもんね~!」
ライカは袋から時雨とは違う派手な包装の限定バーガーを取り出す。
「そうか! 次のはフーカが好きな味だといいねぇ!! それじゃあいただきます!」
「「いただきまぁす!」」
三人を仲良く一緒に食べる。
「うむ! なかなかイケるじゃないか!」
「う~ん、私は前の限定バーガーの方が好きかな~」
「ねえねえ、辛くなかったら僕にも一口ちょうだい?」
「そんなに辛くないぞ、食べてみるかい?」
時雨がフーカに持っていたハンバーガーを差し出すとフーカは恐る恐る小さく一口食べた。
「うわっ! 辛ッ!」
「はっはっはっ! フーカは本当に辛いのが駄目だねぇ!」
「ずるい!! わたしも!!」
辛さに耐えるフーカを笑っていると逆からライカが首を伸ばして時雨のハンバーガーを一口食べる。
「おいおい、私のが無くなってしまうじゃないか!」
「うーん、たしかにちょっとだけ辛いかも」
食べながらライカが言う。
「ははは、次に期待だねぇ!」
三人はのんびりと川を眺めながらハンバーガーセットを食べ終えた
「それで、どうだった? 楽しかったかい?」
バーガーの包み紙などのゴミを片付けながら時雨は二人に聞く。
「うん! 久しぶりに力も使って運動できて気持ち良かった!!」
「僕も楽しかったよ~ やっぱりたまには能力を使って運動しないと気持ち悪いんだよね~」
「それは良かったね!」
「ねーねー時雨~ また凛々奈達の所に遊びに行っていい?」
「あ、僕も行きたい」
「そうだねぇ! 今回で顔見知りになったしまた行っても大丈夫だろう!」
「「やった~!」」
「二人共・・・ 今は、楽しいかい?」
時雨は右手を顔に持っていき派手な仮面に手を掛ける。
「不安はないかい? 悲しくないかい? 何か、嫌な事はないかい?」
そう言って仮面を外す。今まで隠れていた時雨の顔が見えた。その顔は優しそうな、母親の様な暖かい表情をしていた。
「・・・・・うん、僕達時雨と一緒に居られて幸せだよ」
「お母さんが死んじゃった時はもう全部イヤになってたけど、私達は時雨のおかげで毎日楽しいよ、」
「「えへへ、時雨大好き」」
時雨の両頬に二人が顔を近付けて口付けをした。それに顔を赤くした時雨はその顔を隠すようにまた仮面をつけて言う。
「わはははは! 本当に両手に花だねぇ!」
「時雨~ そういえばそっちはどうだったの?」
ライカが自分の方の時雨の腕を抱いて顔を見上げながら聞く。
「うん?」
「なんか強い人だったんでしょ~そっちの」
フーカも腕を抱いて顔を見上げる。
「ああ、ヤバかったねぇ! だけど見たかった物も見れたし中々いい経験だったよ」
「「ふ~ん」」
「というわけで今日の遊びは大成功だね!!」
「「大成功~」」
「さて、疲れたしもう帰ろうか!」
時雨が言い三人は同時に立ち上がり歩き出す。
「私大人になったら時雨と結婚する~」
「僕がするから駄~目」
「ははははは、大人になる頃には他に素敵な人が見つかるよ!」
「やだもん、時雨とずっと居るもん!」
「ぼ、僕も!」
「わっはっは! 私は幸せ者だねぇ!!!」
二人が腕を掴んだまま歩く。時雨は空を見上げる。
(神代唯牙、そういえば答えていなかったね)
見上げた顔を下げて両腕にギュッと抱きついている二人を見る。
(因子を持つこの子達が君の所の“卵”の子に惹かれないのは・・・・)
(因子の衝動なんかよりもずっと強い思い、愛を知ってるからだよ)
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