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白銀ハルと鋼の蝗虫
5-6 みんなでおやすみ
しおりを挟む夜、日付も変わった深夜。ハルはlastpalmの事務所の前に車を止めた。
「すっかり遅くなっちゃったな・・・」
事務所の明かりは消えており、ハルの車の周りの街灯だけが静かな夜を照らしている。
「トラブルは解決したけど、これだけメモと一緒に置いていこうか・・・・」
ハルはポケットに先程手に入れたUSBメモリを入れて車を降りた。そして事務所の入口へ向かい合鍵でドアを解錠して中へ入る。
「皆寝ちゃってるわよね」
明かりの付いていない薄暗い室内を唯牙のデスクへと歩いて行く。
「随分かかったな」
するといきなり横から声を掛けられた。
「うひゃぁ! なに!?」
ハルはビクッと体を硬直させて驚く。声の方を見ると、唯牙が壁にもたれ掛かってこちらを見ていた。
「ビックリした~!」
そう言うと唯牙は口の前で人差し指を立てにして静かにっとジェスチャーした。
「?」
ハルが首を傾げると唯牙は口の前の人差し指でそのままハルの後ろを指差す。そこにはソファの上で毛布を掛けて抱き合って寝ている凛々奈とみいなの姿があった。
「さっさと寝ろと言ったんだがな、お前の帰りを待ったまま結局そこで寝落ちだ」
「あらあら・・・・ ほんと、可愛い子達ね」
クスッと笑って小さな声で言うと、唯牙がハルに近づきハルの顎に手を当ててクイッと自分の顔に向かせてジッと見つめた。
「どこか怪我は? 血とお前の銃の火薬の匂いだ」
そのままハルの顔から足元まで体を見回す。
「別に大丈夫よ、トラブルは自己解決したわ ありがとう」
あまりにも近くで見つめられたのでハルは照れて目を逸らす。
「これ、例の件のデータ あとオマケでそのサンプルも車に積んであるわ」
照れ隠しに仕事の話を振って気を逸らす。
「ああ、そうか 相手は例の鎧殻モドキだったか・・ 何にせよ怪我がなくて良かったさ」
唯牙は安心した様に穏やかな表情になったかと思うとふわあーーーあ! と大きな欠伸をした。
「もしかして心配でずっと起きててくれたの?」
逆にハルが心配そうに見つめる。
「ま、念の為な」
欠伸をし終えて涙目を軽く指で拭って言った。
「うふふ ありがと、ユイ それじゃあ私は問題事も片付いた事だから帰るわね」
心配から泊まるように言われていたが、嗅ぎまわっている追跡者はもういない。
玄関を向いて帰ろうとすると後ろから手を掴まれた。
「いいから、今日は泊まっていけ」
唯牙の鋭い綺麗な瞳がハルを見つめる。
「・・・・そうね」
答えると唯牙は手を離して自室のある2階の階段へ歩き出す。
「もう眠すぎるから先寝てる、シャワー浴びたら勝手に入ってこい」
「は~い」
唯牙を見届けた後一人になったハルはソファで寝ている二人に近づいた。
「えへへ、次の差し入れはちょっと奮発して良い物持ってきてあげなくちゃね」
ニヤけながら寝ている二人の頭をそっと撫でた後、ハルはシャワーを浴びに浴室へ向かった。
・・・・・・・
「ユイ~~ 私のパジャマ出してないじゃないの~
足音を立てないように小走りでパジャマを取りに唯牙の部屋へ向かうハルだった。
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