銃と少女と紅い百合

久藤レン

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紅蓮の炎と青い海

3-3 静かな夜に少女と炎

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 夕飯の片付けも終わって皆でしばらくのんびりした後、私とみーちゃん、センセとハルさんに別れて部屋で眠っていた。ホテルみたいなふかふかのベッドで心地よくもうすぐ眠りにつけそうだとウトウトしているとガチャリと扉の開く音がした。

扉の方を見るとみーちゃんが部屋から出ていく所だった。

(みーちゃん? お手洗いかな?)

 とりあえず戻ってくるまでは起きていようと待っていたが十分程経っても戻ってくる気配はなかった。

 私はベッドから立ち上がり部屋から出る。ざっと建物の中を探すがみーちゃんの姿がない。玄関の方を見るとみーちゃんの履いていたサンダルが無いのに気付く。

「みーちゃん!」

 何かあったのかと私は装備の入ったアタッシュケースを手にして外に飛び出した。

 周りを見回しながら走っていると昼間に遊んでいた砂浜まで辿り着いた。その波打ち際にみーちゃんは海の方を向いて立っていた。長い髪が風に揺れている。

 今夜は満月で月明かりに照らされているその姿がとても綺麗で儚く見えた。

「みーちゃん、夜中に一人で出歩いちゃ危ないよ」

 優しく声をかけながら近くに歩いていく。

「あ、凛々奈さん・・・・ごめんなさい」

 振り向いた少女は少し潤んだ瞳をしていた。

「・・・・どうかした? 嫌な夢でも見た?」

 隣まで歩いてきて声をかけた。

「いえ・・ 昔・・ 一回だけお父さんとお母さんと海に来たことがあったんです」

 月明かりに照らされた水面を見つめながら言う。

「その時もこんな満月で、一緒に砂浜を歩いたんです・・・・その時の事を思いだして」

 ザザー、ザザーっと波の音だけが夜に響いている。

「そっか」

そのまま少しの間、二人で何も言わずに薄っすらと青白く光る海を見つめていた。そしてみーちゃんの手を握る。

「少し、歩こ」

 ニコッと微笑みかけて少し手を引くとみーちゃんも少し微笑んで頷いた。波打ち際に沿って二人は歩く、静かな時間の中を。

 その穏やかな時間に 別の少女の声が鳴り響く。


「見ーつけたぁ!!!」

 声は上空から聞こえた。声の方を見ると誰かが上から降ってきていた。

 ダァン! と砂浜に着地すると衝撃で砂が舞い上がる。
 現れたのは橙の髪をサイドテールに纏め、ボロボロのマントを羽織った少女だった。

「みーちゃん! 後ろに!」

 自分の背中に少女を下がらせ謎の相手を見る。

(歳はみーちゃんと同じくらいかな、でもあの跳躍力とこのプレッシャー、普通のガキじゃない)


「ちょっと! 今いい雰囲気だったの! 邪魔すんじゃないわよ!」

 言いながら持ってきていたアタッシュケースを背中に隠してロックを外す。 確か中身は銃と特殊弾四発とキャンディ三つ。ただキャンディはクロノスタシスともう一つ、私の最終兵器があるけどみーちゃんがいる今そっちは使えない。 もう一個は戦闘用じゃない。

(やるなら一つで仕留めないとだね)

 戦闘になった場合のプランを頭で考えながら相手の動きを伺っていると。


「あぁ、会いたかった会いたかった会いたかった会いたかったやっと会えたわ私のあなた」

 謎の少女は腕で自分の体を抱いて顔を赤らめて恍惚の表情でみいなだけを見つめていた。

「私はフラム、フラム=ブレイブヒート、ああ、あなた、私のあなた、名前を聞かせて?」

 凛々奈の事は見えていないかの様にみいなだけに語りかける。

「ちょっと! いきなり現れて何なのよ! うちの子に色目使ってんじゃないわよ!!」


 一瞬で後ろ手のアタッシュケースを開き凛々奈の専用装飾銃"パレットバレット"を右手に握り銃口を向ける。ついでに特殊弾とキャンディをポケットに忍ばせた。

「凛々奈さん!」

 みーちゃんが心配そうに見つめている。

「大丈夫、とりあえずぶっ飛ばしてアイツが何なのか聞いてやるわ!」

 銃を持つ手に力を入れて相手を睨む。弾倉には既に"白の衝撃《ヴァイスインパクト》"が装填されている筈だ、相手の脳天に狙いを定める。
 すると先程までの表情とは違う冷たい視線が凛々奈に向けられる。


「ああ、アンタね、邪魔な半端者、失敗作って」

(失敗作? なんか前にも言われたような)

「能力も開花出来なかった半端者が!私とその子の邪魔してんじゃないわよッ!!」

バサッとマントの前面が開く、見えた手にはゴツゴツとした手甲がはめられている。そして怒りの声に呼応するように少女の周りに炎の渦が巻き上がった。

「なんなのよ! 最近ビックリ人間コンテストなの!? ゴム人間の次は燃えるガキって!」

 炎に包まれる少女との距離は10m程あったが届く熱風に顔をしかませる。

 立ち昇る炎の勢いは収まっていったが謎の少女は両手を握り戦闘の構えをとった。

「邪魔するんなら、消し炭よ」
 
 殺意を込めた目で凛々奈を見る

「まあ、どっちかっていうと私もビックリ人間側だけどね」

 突き刺す殺意を全く意に介さず、凛々奈はポケットから取り出した桃色のキャンディの包装をとった。そして指を指す様にキャンディの先を相手に向ける。

「とりあえずこれだけ言っとくけど!!」

「ウチの娘はやらん!!!」

 手にしたキャンディを口に入れると同時に二人の少女は動き出した。


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