26 / 111
紅蓮の炎と青い海
3-3 静かな夜に少女と炎
しおりを挟む
夕飯の片付けも終わって皆でしばらくのんびりした後、私とみーちゃん、センセとハルさんに別れて部屋で眠っていた。ホテルみたいなふかふかのベッドで心地よくもうすぐ眠りにつけそうだとウトウトしているとガチャリと扉の開く音がした。
扉の方を見るとみーちゃんが部屋から出ていく所だった。
(みーちゃん? お手洗いかな?)
とりあえず戻ってくるまでは起きていようと待っていたが十分程経っても戻ってくる気配はなかった。
私はベッドから立ち上がり部屋から出る。ざっと建物の中を探すがみーちゃんの姿がない。玄関の方を見るとみーちゃんの履いていたサンダルが無いのに気付く。
「みーちゃん!」
何かあったのかと私は装備の入ったアタッシュケースを手にして外に飛び出した。
周りを見回しながら走っていると昼間に遊んでいた砂浜まで辿り着いた。その波打ち際にみーちゃんは海の方を向いて立っていた。長い髪が風に揺れている。
今夜は満月で月明かりに照らされているその姿がとても綺麗で儚く見えた。
「みーちゃん、夜中に一人で出歩いちゃ危ないよ」
優しく声をかけながら近くに歩いていく。
「あ、凛々奈さん・・・・ごめんなさい」
振り向いた少女は少し潤んだ瞳をしていた。
「・・・・どうかした? 嫌な夢でも見た?」
隣まで歩いてきて声をかけた。
「いえ・・ 昔・・ 一回だけお父さんとお母さんと海に来たことがあったんです」
月明かりに照らされた水面を見つめながら言う。
「その時もこんな満月で、一緒に砂浜を歩いたんです・・・・その時の事を思いだして」
ザザー、ザザーっと波の音だけが夜に響いている。
「そっか」
そのまま少しの間、二人で何も言わずに薄っすらと青白く光る海を見つめていた。そしてみーちゃんの手を握る。
「少し、歩こ」
ニコッと微笑みかけて少し手を引くとみーちゃんも少し微笑んで頷いた。波打ち際に沿って二人は歩く、静かな時間の中を。
その穏やかな時間に 別の少女の声が鳴り響く。
「見ーつけたぁ!!!」
声は上空から聞こえた。声の方を見ると誰かが上から降ってきていた。
ダァン! と砂浜に着地すると衝撃で砂が舞い上がる。
現れたのは橙の髪をサイドテールに纏め、ボロボロのマントを羽織った少女だった。
「みーちゃん! 後ろに!」
自分の背中に少女を下がらせ謎の相手を見る。
(歳はみーちゃんと同じくらいかな、でもあの跳躍力とこのプレッシャー、普通のガキじゃない)
「ちょっと! 今いい雰囲気だったの! 邪魔すんじゃないわよ!」
言いながら持ってきていたアタッシュケースを背中に隠してロックを外す。 確か中身は銃と特殊弾四発とキャンディ三つ。ただキャンディはクロノスタシスともう一つ、私の最終兵器があるけどみーちゃんがいる今そっちは使えない。 もう一個は戦闘用じゃない。
(やるなら一つで仕留めないとだね)
戦闘になった場合のプランを頭で考えながら相手の動きを伺っていると。
「あぁ、会いたかった会いたかった会いたかった会いたかったやっと会えたわ私のあなた」
謎の少女は腕で自分の体を抱いて顔を赤らめて恍惚の表情でみいなだけを見つめていた。
「私はフラム、フラム=ブレイブヒート、ああ、あなた、私のあなた、名前を聞かせて?」
凛々奈の事は見えていないかの様にみいなだけに語りかける。
「ちょっと! いきなり現れて何なのよ! うちの子に色目使ってんじゃないわよ!!」
一瞬で後ろ手のアタッシュケースを開き凛々奈の専用装飾銃"パレットバレット"を右手に握り銃口を向ける。ついでに特殊弾とキャンディをポケットに忍ばせた。
「凛々奈さん!」
みーちゃんが心配そうに見つめている。
「大丈夫、とりあえずぶっ飛ばしてアイツが何なのか聞いてやるわ!」
銃を持つ手に力を入れて相手を睨む。弾倉には既に"白の衝撃《ヴァイスインパクト》"が装填されている筈だ、相手の脳天に狙いを定める。
すると先程までの表情とは違う冷たい視線が凛々奈に向けられる。
「ああ、アンタね、邪魔な半端者、失敗作って」
(失敗作? なんか前にも言われたような)
「能力も開花出来なかった半端者が!私とその子の邪魔してんじゃないわよッ!!」
バサッとマントの前面が開く、見えた手にはゴツゴツとした手甲がはめられている。そして怒りの声に呼応するように少女の周りに炎の渦が巻き上がった。
「なんなのよ! 最近ビックリ人間コンテストなの!? ゴム人間の次は燃えるガキって!」
炎に包まれる少女との距離は10m程あったが届く熱風に顔をしかませる。
立ち昇る炎の勢いは収まっていったが謎の少女は両手を握り戦闘の構えをとった。
「邪魔するんなら、消し炭よ」
殺意を込めた目で凛々奈を見る
「まあ、どっちかっていうと私もビックリ人間側だけどね」
突き刺す殺意を全く意に介さず、凛々奈はポケットから取り出した桃色のキャンディの包装をとった。そして指を指す様にキャンディの先を相手に向ける。
「とりあえずこれだけ言っとくけど!!」
「ウチの娘はやらん!!!」
手にしたキャンディを口に入れると同時に二人の少女は動き出した。
扉の方を見るとみーちゃんが部屋から出ていく所だった。
(みーちゃん? お手洗いかな?)
とりあえず戻ってくるまでは起きていようと待っていたが十分程経っても戻ってくる気配はなかった。
私はベッドから立ち上がり部屋から出る。ざっと建物の中を探すがみーちゃんの姿がない。玄関の方を見るとみーちゃんの履いていたサンダルが無いのに気付く。
「みーちゃん!」
何かあったのかと私は装備の入ったアタッシュケースを手にして外に飛び出した。
周りを見回しながら走っていると昼間に遊んでいた砂浜まで辿り着いた。その波打ち際にみーちゃんは海の方を向いて立っていた。長い髪が風に揺れている。
今夜は満月で月明かりに照らされているその姿がとても綺麗で儚く見えた。
「みーちゃん、夜中に一人で出歩いちゃ危ないよ」
優しく声をかけながら近くに歩いていく。
「あ、凛々奈さん・・・・ごめんなさい」
振り向いた少女は少し潤んだ瞳をしていた。
「・・・・どうかした? 嫌な夢でも見た?」
隣まで歩いてきて声をかけた。
「いえ・・ 昔・・ 一回だけお父さんとお母さんと海に来たことがあったんです」
月明かりに照らされた水面を見つめながら言う。
「その時もこんな満月で、一緒に砂浜を歩いたんです・・・・その時の事を思いだして」
ザザー、ザザーっと波の音だけが夜に響いている。
「そっか」
そのまま少しの間、二人で何も言わずに薄っすらと青白く光る海を見つめていた。そしてみーちゃんの手を握る。
「少し、歩こ」
ニコッと微笑みかけて少し手を引くとみーちゃんも少し微笑んで頷いた。波打ち際に沿って二人は歩く、静かな時間の中を。
その穏やかな時間に 別の少女の声が鳴り響く。
「見ーつけたぁ!!!」
声は上空から聞こえた。声の方を見ると誰かが上から降ってきていた。
ダァン! と砂浜に着地すると衝撃で砂が舞い上がる。
現れたのは橙の髪をサイドテールに纏め、ボロボロのマントを羽織った少女だった。
「みーちゃん! 後ろに!」
自分の背中に少女を下がらせ謎の相手を見る。
(歳はみーちゃんと同じくらいかな、でもあの跳躍力とこのプレッシャー、普通のガキじゃない)
「ちょっと! 今いい雰囲気だったの! 邪魔すんじゃないわよ!」
言いながら持ってきていたアタッシュケースを背中に隠してロックを外す。 確か中身は銃と特殊弾四発とキャンディ三つ。ただキャンディはクロノスタシスともう一つ、私の最終兵器があるけどみーちゃんがいる今そっちは使えない。 もう一個は戦闘用じゃない。
(やるなら一つで仕留めないとだね)
戦闘になった場合のプランを頭で考えながら相手の動きを伺っていると。
「あぁ、会いたかった会いたかった会いたかった会いたかったやっと会えたわ私のあなた」
謎の少女は腕で自分の体を抱いて顔を赤らめて恍惚の表情でみいなだけを見つめていた。
「私はフラム、フラム=ブレイブヒート、ああ、あなた、私のあなた、名前を聞かせて?」
凛々奈の事は見えていないかの様にみいなだけに語りかける。
「ちょっと! いきなり現れて何なのよ! うちの子に色目使ってんじゃないわよ!!」
一瞬で後ろ手のアタッシュケースを開き凛々奈の専用装飾銃"パレットバレット"を右手に握り銃口を向ける。ついでに特殊弾とキャンディをポケットに忍ばせた。
「凛々奈さん!」
みーちゃんが心配そうに見つめている。
「大丈夫、とりあえずぶっ飛ばしてアイツが何なのか聞いてやるわ!」
銃を持つ手に力を入れて相手を睨む。弾倉には既に"白の衝撃《ヴァイスインパクト》"が装填されている筈だ、相手の脳天に狙いを定める。
すると先程までの表情とは違う冷たい視線が凛々奈に向けられる。
「ああ、アンタね、邪魔な半端者、失敗作って」
(失敗作? なんか前にも言われたような)
「能力も開花出来なかった半端者が!私とその子の邪魔してんじゃないわよッ!!」
バサッとマントの前面が開く、見えた手にはゴツゴツとした手甲がはめられている。そして怒りの声に呼応するように少女の周りに炎の渦が巻き上がった。
「なんなのよ! 最近ビックリ人間コンテストなの!? ゴム人間の次は燃えるガキって!」
炎に包まれる少女との距離は10m程あったが届く熱風に顔をしかませる。
立ち昇る炎の勢いは収まっていったが謎の少女は両手を握り戦闘の構えをとった。
「邪魔するんなら、消し炭よ」
殺意を込めた目で凛々奈を見る
「まあ、どっちかっていうと私もビックリ人間側だけどね」
突き刺す殺意を全く意に介さず、凛々奈はポケットから取り出した桃色のキャンディの包装をとった。そして指を指す様にキャンディの先を相手に向ける。
「とりあえずこれだけ言っとくけど!!」
「ウチの娘はやらん!!!」
手にしたキャンディを口に入れると同時に二人の少女は動き出した。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる