銃と少女と紅い百合

久藤レン

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血に染まる百合と私の出会い

1-13 帰ろう

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「うーん」

 みいなは煙草の匂いで目が冷めた。

「凛々奈さん・・・私、」

「ん?」

 抱き上げてくれている相手の顔を見る、凛々奈だと思って見上げると全然別の女の人だった。

「えっ!あっ!うわぁ!」

驚いて身体を動かしてしまいバランスを崩す。

「おっとっと!ごめんごめん!大丈夫!大丈夫!」

咥えタバコの女性は驚いていたが優しく抱き上げ直してくれた。

「だ、だれですか?」

「そりゃそうだよな、っとちょっと待ってね」

 そういうとその女の人は私を抱っこしたまま器用に煙草を携帯灰皿に捨てた。

「あ、下ろしてもらって大丈夫ですよ」

「はははっごめんね!子供の目の前で吸うのは如何かなと思ったんだけど、いろいろあってね 一本だけ吸わないとやってられなかった」

 申し訳なさそうに女の人は言った、悪い人ではないみたい

「私は神代唯牙、あのおてんば娘がセンセセンセって言って無かった?」

「あっ」

 そういえば凛々奈さんがセンセに助けて貰ったみたいな話をしてくれてた。

「すまなかったね、今回は私達が甘かったせいでまた君を危険な目に合わせてしまった」

「いえ!そんな!私の為に凛々奈さんが怪我したりして!ごめんなさい!!」

「ハハハッ!君が謝る事じゃないだろう!どうだい?痛いところとか体調に異変はないかい?」

 センセ・・・唯牙さんは優しく聞いてくれる、凛々奈さんとは顔は似てないけど、何だか雰囲気が似てて親子みたいだなって思った。

「はい、大丈夫です・・・けど、あっ凛々奈さんは!?」

 そういえば姿が無かったことに気付いて周りを見る。

「うわぁ!!」

 ちょっと離れたとこになんだか怖い顔した男の人達が山積みになってる!?

「凛々奈はちょっと忘れ物とりに行ってるよ 後ろのあれは気にしないでいいから」

「そ、そうですか(むりだよう!!)」

「ところでみいなちゃん、大事な話なんだけど」

 唯牙さんが真面目な顔になる。

「君はさっき何か不思議な感覚や変な体験をしなかったかい?」

「えっえっとなんだか腕が延びる人と凛々奈さんがたたかってました」

「確かにそれも変な事だけれど、君自身の事で何かあるかい?」

「そ、それは」
       
 あの時の変なノイズを思い出す

「よく分からないんですけど、凛々奈さんを助けなきゃって思って その時の事はよく覚えてないんですけど あの眼鏡の人が大きい包丁を持つ手を替える事が何でか分かって、大きい声で凛々奈さんに教えました」

「そう、か」

 唯牙さんは少し何か考えたような顔をしたあとに続ける。

「本当は君にはこれから私が用意した信頼できる家に行ってこんな物騒な世界とは無縁に、平和に生きて貰おうと思っていた」

「でも君がさっき覚えた違和感、君の体は特別な力を秘めている そしてその力を欲しがってる奴らがいるんだ、だからまた君を狙う奴が現れる」

「そんな、もう嫌なのに」

 絶望、今回は凛々奈さんは無事だった、けれどこれからもこんな事が続くのならまた私の為に誰が死んでしまう。

「わたしが居なくなればいいんで、しょうか?」

 虚ろな瞳で少女は呟いた

「コラ、二度とそんな事は言うな」

 近付いてきていた唯牙さんが軽く私の頭を小突いた。

「え?」

 私の前でしゃがんで私と目線を合わせて微笑みながら唯牙さんは言った。

「これからは私達と暮らそう、私と凛々奈がいればどんな奴からも守ってあげられる」

「でも、でも凛々奈さんはいっぱい怪我してッ!」

「今回は何も備えて無かったからね、これからは大丈夫 やる気になった私達は負けないよ それに必ず君を狙う奴らはみんなやっつけて、いつか君が安心して生きて行けるようにするよ 約束」

 ニコッと笑って言った

「わた、わたしは、お母さんとお父さんが死んじゃって なんにも・・なんにも・・・なんにも無くなっちゃって・・・・!」

 何でか涙が溢れて止まらなくなった

「これからッ!どうすればいいのかずっと、分かんなくて!」

 ギュッと抱きしめられる。

「幸せになればいい、お父さんとお母さんの事もとても悲しい事だろう でも忘れる必要なんかないから いつかその悲しみも心に抱いて前に進めるように」

「私達がそばにいるから」

「うぁあぁぁあああああああああん」

 唯牙さんの胸で泣き続けていた。



「ちょっとおおおおおおおお!」

「ん、おかえり」

 自分の体の何倍かある鉄塊を担ぎ上げて凛々奈さんが帰ってきた。

「何みーちゃん泣かしてんのよおおお!」

 鬼の形相で。

「これは!違うんです!あの!」

「ご苦労さん、そこ置いといて」

 特に気にする事なく唯牙さんは立ち上がって歩き出した。

「みーちゃーーん! 大丈夫!? 何か嫌な事言われた?イジメられた??」

「そんな事されてませんよ、優しく・・してくれました・・・」

 えへへ とみーちゃんが微笑む。

「ちょっとお!?逆に何してたのセンセぇ!?」

「車持ってくるわー」

 後ろ姿のまま手を降って歩いていってしまった。

「ありがとう御座います、凛々奈さん」

 みーちゃんは今までと違うスッキリとした笑顔をしていた。

「この前も、今日も私を助けてくれた いっぱい怪我もして・・・本当にありがとうです」

笑顔のみーちゃんを見て、やっぱりこの子は幸せになるべきだって 幸せにしてあげたい、この笑顔を守らなきゃって 思った。

「みーちゃん! みーちゃんがよければ一緒に暮らそう!私達が絶対守るから!!」

 なんだか告白みたいになってしまって顔が熱くなった、
それにあのモヤシが何か言っていたがもしかするとまだみーちゃんを狙う奴らが現れるかもしれない。

「はい!これからよろしくお願いします」

 満面の笑みで答えてくれた。

「えっそんなあっさり?」

「唯牙さんが言ってくれましたから、大丈夫だって」

「えっ?えっ? えーーーーーー!?」

「ちょっと何してくれてんのよセンセ!人が悩んで悩んで伝えたってーのに!!!」

 そこへ車に乗って唯牙さんが現れる。

「そのデカいのは上に結びつけちゃって 二人とも早く乗りな、帰るぞ」

 その後もわーわー言う凛々奈さんと一緒に車に荷物を載せて、私達は車で走り出した。



 夜の高速道路を私達は進んでいく、流れていく道を照らすライトをぼーっと見ながら。

「また寝ちゃったねみーちゃん」

「そりゃこれだけ波乱の一日になればな」

「そういえば上に乗ってるでっかいのレアな奴なの?」

「いや、見た所こいつは"ヘカトンケイル レプリカ" 詰まるところ量産品だな」

「ふーん レプリカって事はオリジナルがあるの?」

「ああ もしオリジナルだったらお前は生きてないだろうな」

「へー こわい こわい」

「・・・・・・・・・・・」

「センセ、、あのモヤシが言ってた みーちゃんを狙ってこれからいろんな奴が襲って来るって」

「ああ、この子は私達の想像以上に特別みたいだ」

「知ってたの!?」

「さつき少し情報が入ってな」

「そっか」

「これからもしかすると今までにない程の戦いになるかもしれんな」

「・・・うん」

「私はもう決めたぞ?」

「?」

「お前らを何があっても守ってやる そう決めた」

「へへっ私も決めた、絶対みーちゃんを守って あの子を傷つける奴がいなくなるまで やってやる」

「私がいればお前の出る幕はないかもしれんがな」

「ぶーっ!確かにそうだけどさ センセは最強だから でも」

「必要だったらセンセも私の事を頼ってね?センセが悲しむのも・・・居なくなっちゃうのも 私は嫌だよ?」

「余計な心配はするな、だが、ありがとう 凛々奈」

「うん、  ごめん センセ ちょっと 寝る」

「ああ おやすみ 凛々奈 よく頑張ったね」

「スー スー」



「・・・・・・・・・・・・・」


「ただの女の子にどうしてこうも運命って奴は厳しいのか」

「負けるなよ、二人とも」

 車はまだ 走り続ける。
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