銃と少女と紅い百合

久藤レン

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血に染まる百合と私の出会い

1-3 襲撃の豪腕

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 公園の中央部に置いてある自販機へ歩いて来た。日が落ちているが郊外にあり比較的大きな公園なので何組かカップルがいちゃついていたりと少なからず人通りはあった。

「みーちゃん何飲むー?」

「え、あの、わたしおかね・・・」

「好きなの言いなー お姉さんはみーちゃんが頼めば何でも用意しちゃうぞーー?」

「じゃあ、甘い・・の」

「甘いのかー、そうだなー あ!これ!抹茶ラテ!これにしよ!私も一緒のにする!」

 ガコンガコン 2つ購入する。

「あー!2つ一緒に買ったら取出し口ひっかかっちゃったぁ!」

「みーちゃん、ちょっとフタ持ってて!」

「はっはい!」

 みいなはとてとて寄ってくる。

(なに~この可愛い生き物~)

「お姉さん?」

見惚れていると肩をちょんちょんと突かれる

 (ハッ!いかんいかん、癒されパワーが強すぎるなこの子は)

  ガタッ なんとか詰まっていた缶を取り出せた。

「はい、ごめんねなんか引っかっちゃった」

「いえ、ありがとうございます!」

 側のベンチへ2人で腰掛ける。

「どう?みーちゃん甘い?」

「はい!これ好きです!」

 微笑んで言う。目覚めたばかりの時よりは自然な笑顔でみいなは笑った。その笑顔を見て凛々奈も微笑む。

(辛い目に会ったこの子の悲しみを少しでも和らげられたらいいな・・・)

 そして今度お店の生クリームたっぷりの激甘ドリンクでも飲ませてあげようか、なんて美味しそうに飲むこの子を見て思って。

「みーちゃんさ、これからのことなんだけど」

 (そう、この子は両親を殺されて恐らく他の血縁も施設によって殺されてしまっているだろう。もしくは金でこの子の事を見てみぬふりをしたか、そんな奴らの所にはこの子は渡せない。

 私はセンセに拾われて殺しの技術、他にもいろんな泥臭いことを学んで悪人を殺して周っている。
 この人生を後悔してはいないし、望んだ人生だ。
 私は、私と同じ目に会いながらも優しく、他人の事で涙を流せるこの子がとても儚く見えて、この優しさを守りたいと)

「もし!みーちゃんがさッ!」

 言いかけた時、目の端で人影を捉えた。

 正面30m程離れた公園の入り口に街灯に照らされた男が二人、一人は痩せ型で身長は170cm位だろうか、乱れたロン毛で何故か白衣を着ている。これだけならば多少警戒はするかもしれないが騒ぐ程ではない。

  問題はもう一人、でかい、2mは超えているだろう、体格も筋肉質で人間のスケールでゴリラが立っているように感じる。
 角刈りのグラサンに顔まで厳ついを極めたような風貌。隣の男が小柄なせいかフィクションの巨人のように見える程の威圧感。

 そしてその男は丸太の様に大きなカバンを右脇に抱えている、いや右腕を肩から先を全て覆って隠している? そして彼らが見ているのは私の隣の少女。

「やばぃっ!」

 今自分は何も武器は持っていない、先日の件は皆殺し完了だと思っていたから。

「みーちゃん!走るよ!」

「えっ!えッ!?」

 みいなに向き直り彼女の手を引こうとした瞬間。

 爆発音と衝撃が公園内に響き渡った。


「みーちゃん!大丈夫!?」

「あ、あ、あ、ああの」

 混乱しているが無事の様だ、凛々奈は入り口の方を振り返る。

 男達がいた位置に砂埃が舞っている、強い風が吹き砂埃が晴れると、そこには右腕を地面に突き立てたさっきの大男とその周りに10m程の大きなクレーターが出来ていた。
 
男が隠していた右腕には自身の胴体程もある義手の様な物が付いていた。

 キーンッ 甲高い音が響く。いつの間にか大男から離れていた痩せ型の男が拡声器を手に喋りだす。

「えー、この公園に爆発物が仕掛けられたとのことですがー先程お聞きになった通りー爆発が確認されましたー他にも爆発物がある可能性がございますー皆様早急に避難してくださーい」

 とてつもなく棒読みで適当な声だった。しかし先程の爆発と合わせて公園内の人間にパニックを起こさせるには充分だった。

「マジで!?」「ヤバくね?早く帰ろうぜ!」

「早く!走って!!」「本当かよー」

 本気で危険を感じ走りだし逃げる人、半信半疑で公園の外へ向かう人、反応はそれぞれだが皆公園から出ていった。

「みーちゃん・・・」

 手を握る。あぁ、私達もそそくさと人の流れに乗って外へ向えば問題なく家に帰れるかな。なんて希望的な事を思うが。

「無理、絶対無理」

 思わず独り言が漏れる。
(あのモヤシ男は問題ない、問題はあの大男。完全に私達をロックオン、あの右腕 個人の戦闘力を戦闘機並に引き上げる事を目標とした兵器「武装鎧殻」
 裏の世界で出回っている最新最強の兵器、
ただとてつもなく金が掛かる事と適合する人体が限られる事から実用されている数は少ない筈なんだけど)

「手ブラじゃ荷が重すぎるよッ!」

 大男から目を離さずスマホを取出し救援を求める連絡をする為に操作しようとするが。

「圏外・・・」

 町外れとはいえ電波が入らない訳がない。恐らくあの腕が電波を妨害しているんだろう。

「流石最新最強、ハイテクじゃん」

 冷や汗が頬を伝う、(どうしよ、マジで)

「はーい、人払いは済んだ 適当でも5分位は人目無くなるでしょ」

 モヤシ男が大男に近付いていく。

「隣にいる女は?」

 大男が此方を見ながら言う。

「あーもう適当にぶっ飛ばしちゃって、死んでても半殺しでも 爆発に巻き込まれたってことでいいじゃん」

「しょーじき、面倒臭いんだよね逃げたモルモットを探し回るってなんかスゲー馬鹿な科学者みたいじゃん? しかも施設ブッ壊されてるし」

「人が国を跨いでお仕事してる時にはた迷惑な奴らだよ全く、とりあえずアレ連れてけばOKだからさ、殺さなきゃ良いからちゃっちゃと頼むわ」

 (血管がブチ切れそうになった、いや切れたかも)
どうでもいいから死ぬ気でコイツだけ殺してやろうかと思ったけど、でもそんな頭は隣でガタガタ震えて私の手を握る少女のお陰で冷静になった。

 またあの日々に戻される恐怖、トラウマ。
 (駄目だ! 冷静になれ! 私!今はこの子を逃がす! センセに連絡を取る! その方法だけを考えろ!)

「よし!」

「わっ」

「みーちゃん掴まって!」

 みいなを抱えて走り出す。
(奴らの反対の公園出口まで約25m! 全力で走る! 出口近くまでたどり着けば野次馬がいるかもしれない! 人が多ければ派手な攻撃はできない、あの腕さえ使えなければ時間稼ぎくらいは!)

「いくぞ」

 走り出したその刹那、すぐそば、凛々奈の左から声が聞こえた。

「は?」

 そこには右ストレートを打つ構えに既に入っている大男がいた。

「二人揃ってミンチになりたくなければ、分かるな」

 凛々奈は大男の後の芝生にみーちゃんを投げ飛ばし、
左手だけはガードできる位置にッ

ドギャバキャバキッ



「うわー人間があんな吹っ飛ぶの初めて見たよ」

「ある程度手加減しませんと原型が無くなりますんで、爆発事故に巻き込まれたように見える程度に破壊しました」

「手加減しましたであんなグロく出来るのすごいよ君、アレは?」

「気を失ってますが確保してます」

「はーい、OKOK 多分さっきの爆発でお巡りさん来るからさっさと撤収ね」



 死にたくなるほどの全身の痛みと、煙草の匂いで目が覚めた。
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