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五人集めて
SPACE‐F-
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待っていると、マドカの声が廃棄場の奥から聞こえてきた。
「ねえ!ミコト、来てちょうだい!」
ミコトは返事をして、ガラクタの山を登ってマドカの元へ向かった。
かなり険しい道だった。
――あの小さい体でよく登れたな……。
ミコトは感心しながら息を荒げて進んだ。
ガラクタの山を過ぎた廃棄場の奥にはコンクリートの平らな地面があった。
「ようやく来たわね、待ちくたびれたわ」
マドカは何かと向き合いながら言葉だけ放った。
「ごめん待たせた」
廃棄場を抜けるのに苦戦したミコトはガラクタの山をよじ登るのに五分程かかってしまった。
「これ、見てちょうだい」
マドカの視線の先には一体の物体があった。
「ロボット、か」
鉄材で集められたロボットの体は軽く破損していた。そのせいで、どうやら上手く起動しないようだ。
「ミコト、このロボット、直せたりしない?」
ミコトはロボットの破損部分を数秒眺めて答えた。
「やってみる」
ミコトは散らばっていたネジとボルトを拾い上げ、都合良く落ちていたトルクレンチでネジのボルトを締めた。
「ピー、ポポポポ……」
ロボットの本体から音が鳴った。
「お」
どうやらミコトはロボットを直すことができたようだ。
「ピー、ポポポポ……第三機、レノ。起動します」
ロボットの名前はレノと言う。レノが起動した。
「流石!ミコト!」
喜ぶマドカは感心しながら手を叩いた。
「思ったより簡単だった」
手に持っていたトルクレンチを地面の端に投げ捨ててミコトは言った。
「人間、二人認知。私はレノです」
カタコトな口調でレノは言った。
「……レノ、レノ……」
マドカの表情が変わった。
「レノ、君は一体何なんだ?」
ミコトがレノに向かって尋ねた。
「この世界、SPACE‐F‐の案内機です」
「SPACE‐F‐?」
ミコトは尋ねた。
「はい。この世界の名称はSPACE‐F‐と言います」
「確かにレノって言うのよね。その胸につけられている印は何?」
レノの胸には バツ印の傷がつけられてあった。損傷と言って良いだろう。
「生前、つけた傷の一つです」
レノが静かに答えた。
「……そう、レノ。分かったわ」
マドカは何かを確信したかのように答えた。
レノの頭上に雲のような電光掲示板が流れた。
「コードネームを入力してください」
レノが言った。
レノが表示した電光掲示板のすぐ下にキーボードのような欄が表示された。
それに驚いたミコトは口をぽかんと開けた。
――ここはSF世界か?
水色に光るキーボードを見て思った。
マドカは冷静さを保って言った。
「私は、マドカ」
そして、不思議と慣れた手つきでキーボードを操作し始めた。
――マ、ド、カ。
「さあ、ミコトも入力して」
マドカがミコトに向かって言った。
「あ、ああ」
戸惑いながらもミコトは答えた。
そして、レノの頭上に表示された雲のようなキーボードで文字を入力した。
――ミ、コ、ト。
おぼつかない手つきでミコトが入力すると、青緑のランプが表示された。
「マドカ、ミコト、人間二人、認証しました」
レノが淡々と発した。
「レノ、よろしく」
ミコトはレノに向かって言った。
「よろしくお願いします」
カタコトな口調でレノが答えた。
「では、これから、ミッションをクリアしてもらいます」
「ミッション?」
ミコトが尋ねた。
「はい。これからお二人には三人のメンバーを集めていただき、計五人のチームを作ってもらいます」
さっきとは少し違う電光掲示板がレノの頭上に表示された。それと同時に黄色い拡声器が空から落ちてきた。
ガコン。
鉄材でできたレノの腕は短く、地面に落ちた拡声器を拾うことは出来なかった。
「落ちてきたマイクのスイッチを入れてください。そして、掲示板に向かってマイクでメンバーの募集をかけてください。掲示板が反応します」
マドカは拡声器を拾ってコンコンと拡声器を叩いて言った。
「ミッション?メンバー?マイク?募集?……全くわかんないけど、なんだか面白そうじゃない。ミコト、やってみる価値あると思わない?」
数秒考えたミコトは、うんと頷き答えた。
「そうだな。まずは……メンバーを集めないといけないんだっけ。マドカ、それにスイッチはないか?」
「スイッチね……あったわ」
マドカはスイッチの場所を探した。拡声器の手元に小さいボタンがあった。
マドカがスイッチをオンにすると、キーンと拡声器が悲鳴を上げた。
「わっ!」
「ビックリした」
驚いたマドカは拡声器を落としそうになった。
ミコトも驚いて、慌てて耳を塞いだ。
スイッチの入れられた拡声器は何事もなかったかのようにマドカの手に収まっていた。
「音は、鳴るみたいね。レノ、募集ってどうしたらいいの?」
「掲示板が青に光ったらマイクでSPACE‐F‐ミッション募集とでも言ってみてください」
レノが答えると、電光掲示板はピコンと音を立て青色に変わった。
「取り敢えずやってみるわ」
マドカは拡声器を口に近づけすっと息を吸った。
「ああ、まかせた」
ミコトはマドカの横顔を眺めて答えた。
「……あ、あ。私はマドカ、これからSPACE‐F‐のミッションをするわ。ミッション開始、そしてクリアするためにはあと三人のメンバーが必要なの。この世界にいるものよ。協力者求むわ」
マドカはそう言って拡声器のスイッチを切った。
「この、メッセージはSPACE‐F‐に滞在するすべての人々に発信されます。ピー、ポポポポ……送信しました」
そう言うと、レノはマドカのメッセージをSPACE‐F‐全体に発信した。レノの頭上にあった電光掲示板がすっと消えた。
「これで、私たちのすることは終わり?」
「どうやら、そうみたいだ。後は少し待つとしよう」
そう言って、ミコトは廃棄場の隅にあるガラクタの山に腰を掛けた。
マドカとレノはそのまま立って待っていた。
「ねえ!ミコト、来てちょうだい!」
ミコトは返事をして、ガラクタの山を登ってマドカの元へ向かった。
かなり険しい道だった。
――あの小さい体でよく登れたな……。
ミコトは感心しながら息を荒げて進んだ。
ガラクタの山を過ぎた廃棄場の奥にはコンクリートの平らな地面があった。
「ようやく来たわね、待ちくたびれたわ」
マドカは何かと向き合いながら言葉だけ放った。
「ごめん待たせた」
廃棄場を抜けるのに苦戦したミコトはガラクタの山をよじ登るのに五分程かかってしまった。
「これ、見てちょうだい」
マドカの視線の先には一体の物体があった。
「ロボット、か」
鉄材で集められたロボットの体は軽く破損していた。そのせいで、どうやら上手く起動しないようだ。
「ミコト、このロボット、直せたりしない?」
ミコトはロボットの破損部分を数秒眺めて答えた。
「やってみる」
ミコトは散らばっていたネジとボルトを拾い上げ、都合良く落ちていたトルクレンチでネジのボルトを締めた。
「ピー、ポポポポ……」
ロボットの本体から音が鳴った。
「お」
どうやらミコトはロボットを直すことができたようだ。
「ピー、ポポポポ……第三機、レノ。起動します」
ロボットの名前はレノと言う。レノが起動した。
「流石!ミコト!」
喜ぶマドカは感心しながら手を叩いた。
「思ったより簡単だった」
手に持っていたトルクレンチを地面の端に投げ捨ててミコトは言った。
「人間、二人認知。私はレノです」
カタコトな口調でレノは言った。
「……レノ、レノ……」
マドカの表情が変わった。
「レノ、君は一体何なんだ?」
ミコトがレノに向かって尋ねた。
「この世界、SPACE‐F‐の案内機です」
「SPACE‐F‐?」
ミコトは尋ねた。
「はい。この世界の名称はSPACE‐F‐と言います」
「確かにレノって言うのよね。その胸につけられている印は何?」
レノの胸には バツ印の傷がつけられてあった。損傷と言って良いだろう。
「生前、つけた傷の一つです」
レノが静かに答えた。
「……そう、レノ。分かったわ」
マドカは何かを確信したかのように答えた。
レノの頭上に雲のような電光掲示板が流れた。
「コードネームを入力してください」
レノが言った。
レノが表示した電光掲示板のすぐ下にキーボードのような欄が表示された。
それに驚いたミコトは口をぽかんと開けた。
――ここはSF世界か?
水色に光るキーボードを見て思った。
マドカは冷静さを保って言った。
「私は、マドカ」
そして、不思議と慣れた手つきでキーボードを操作し始めた。
――マ、ド、カ。
「さあ、ミコトも入力して」
マドカがミコトに向かって言った。
「あ、ああ」
戸惑いながらもミコトは答えた。
そして、レノの頭上に表示された雲のようなキーボードで文字を入力した。
――ミ、コ、ト。
おぼつかない手つきでミコトが入力すると、青緑のランプが表示された。
「マドカ、ミコト、人間二人、認証しました」
レノが淡々と発した。
「レノ、よろしく」
ミコトはレノに向かって言った。
「よろしくお願いします」
カタコトな口調でレノが答えた。
「では、これから、ミッションをクリアしてもらいます」
「ミッション?」
ミコトが尋ねた。
「はい。これからお二人には三人のメンバーを集めていただき、計五人のチームを作ってもらいます」
さっきとは少し違う電光掲示板がレノの頭上に表示された。それと同時に黄色い拡声器が空から落ちてきた。
ガコン。
鉄材でできたレノの腕は短く、地面に落ちた拡声器を拾うことは出来なかった。
「落ちてきたマイクのスイッチを入れてください。そして、掲示板に向かってマイクでメンバーの募集をかけてください。掲示板が反応します」
マドカは拡声器を拾ってコンコンと拡声器を叩いて言った。
「ミッション?メンバー?マイク?募集?……全くわかんないけど、なんだか面白そうじゃない。ミコト、やってみる価値あると思わない?」
数秒考えたミコトは、うんと頷き答えた。
「そうだな。まずは……メンバーを集めないといけないんだっけ。マドカ、それにスイッチはないか?」
「スイッチね……あったわ」
マドカはスイッチの場所を探した。拡声器の手元に小さいボタンがあった。
マドカがスイッチをオンにすると、キーンと拡声器が悲鳴を上げた。
「わっ!」
「ビックリした」
驚いたマドカは拡声器を落としそうになった。
ミコトも驚いて、慌てて耳を塞いだ。
スイッチの入れられた拡声器は何事もなかったかのようにマドカの手に収まっていた。
「音は、鳴るみたいね。レノ、募集ってどうしたらいいの?」
「掲示板が青に光ったらマイクでSPACE‐F‐ミッション募集とでも言ってみてください」
レノが答えると、電光掲示板はピコンと音を立て青色に変わった。
「取り敢えずやってみるわ」
マドカは拡声器を口に近づけすっと息を吸った。
「ああ、まかせた」
ミコトはマドカの横顔を眺めて答えた。
「……あ、あ。私はマドカ、これからSPACE‐F‐のミッションをするわ。ミッション開始、そしてクリアするためにはあと三人のメンバーが必要なの。この世界にいるものよ。協力者求むわ」
マドカはそう言って拡声器のスイッチを切った。
「この、メッセージはSPACE‐F‐に滞在するすべての人々に発信されます。ピー、ポポポポ……送信しました」
そう言うと、レノはマドカのメッセージをSPACE‐F‐全体に発信した。レノの頭上にあった電光掲示板がすっと消えた。
「これで、私たちのすることは終わり?」
「どうやら、そうみたいだ。後は少し待つとしよう」
そう言って、ミコトは廃棄場の隅にあるガラクタの山に腰を掛けた。
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