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わんわんまかろん

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「ただいま」

 玄関先で靴を脱ぎながら言うと、勢いのある幼い声が台所から響いてきた。

「おっかえりーなのです!」

 台所で待っていたのはミコトの妹、リンカである。どうやら夕飯の支度をしていたようだ。

「今日の夕飯は何だろう」

「今日は、LISTERのノノちゃん風味、チョイ甘スパイシーなイタリアンカレーなのです!」

 LISTERとは、リンカの好きなグループアイドルの名称だ。中でも、前田ノノと言うセンターアイドルは、SNS内で、今最も輝きを見せている有名人だ。リンカはその前田ノノの猛烈なファンとなる。

 そもそも、ノノちゃん風味料理はいつから始まっていたのだろうか……。ふわふわと頭の中で最近の料理を思い出してみる。

 LISTERの猛烈なファンであるリンカは、前田ノノを好きすぎるあまり、自分で作る料理をなんでもノノちゃん風にしてしまう癖がある。味は美味しいから何とも言えないが、毎日ノノちゃん風味じゃぁ……ねぇ。少し心配になるミコト。

「昨日は確か、ノノちゃん風味ナポリタンだったかな」

 ソファーに鞄を置き、襟の帯を外しながらミコトは言う。

「そうでした!一昨日はノノちゃん風味オムライスでその前は、ノノちゃん風味チャーハンで……その、その前は……」

 リンカはノノちゃん風味○○がどれくらい前から始まっていたか必死に思い出そうとしている。

「ノノちゃんエンドレスは流石にキツイぞ。せめて、ミミちゃん風で頼む」

 ミコトがリンカに冗談交じりで忠告した。

「ミミちゃん?はて?」

 考えるポーズをして、とぼけるリンカ。

「まあ、なんでもいいや、とりあえずいつも料理、ありがとう」

「はいなのです!」 

 リンカは元気に返事をして、晩御飯の支度を急がせた。

 約十五分後、ノノちゃん風味なんとかかんとかカレーがミコトの前に置かれた。「頂きます」と二人で手を合わせる。

「うん。美味い。確かに美味い」

 うんうんと頷きながらカレーを口に運ぶミコト。それを見るリンカの表情はとても満足げだ。

 「ごちそうさま」と食事を終えミコトは、自室に向かい、今日手に入れた『ワンマカ』のキーホルダーを机に座りながらなんとなく眺めた。

 ――金じゃなくて青、か……、

 キーホルダーを眺めて小さく嘆くと、何故か強い眠気が迷い込んできた。

 少しベッドで休もうと、目をつむりながらベッドに横になっていると、三十分もしないうちに深い眠りについてしまった。

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