上 下
59 / 59
たぶん最終章、レースの魔法の女神様の再来と呼ばれるのは また別のおはなし。

エピローグ

しおりを挟む



 それから。



 帰らなかったことをお姉さんは、とても喜んでくれた。万が一クロモとケンカすることがあったら、絶対に味方になるからとも言ってくれた。

 とっても心強い言葉に嬉しくて何度も頷いていたら、クロモが不機嫌そうに「ケンカなどしない」と呟いていたのが可笑しくって笑ってしまった。

 帰らないと決めたからせめて、両親に手紙を届けたらという話になった。

 元々わたしを向こうに送り届ける予定だったから、手紙を送るのは難しくないということだった。

 だから、わたしは何度も手紙を書いては捨て書いては捨てを繰り返した。

 わたしは無事だ、幸せだってことを伝えたいんだけど、お父さんお母さんからしたら娘が突然いなくなって「幸せだよ。でも帰れない」なんて手紙見ても、騙されてるんじゃないかとか脅されてるんじゃないかとか思うんじゃないかって考えちゃって。

 しかもあっちとこっちの時間の進み方が違い過ぎるから、例えば「子供が産まれたよ」「孫が産まれたよ」って報告の手紙を書いたとしても、向こうではひと月も経たない内に届くからイタズラにしか思えない。

 そんなこと考えだしたら、何も書けなくなった。

「急ぐ事はない。書ける時に書いたら良い」

 クロモの言葉に頷き、気を取り直す。

 そうだよね。向こうではまだわたしがいなくなったことさえ気が付いてないだろうから、慌てることはない。きっと何か良い案が浮かぶよね。

 そう思って手紙を書くのはやめた。



 ちゃんと結婚式を挙げようと言い出したのはお姉さんで、クロモはちょっと渋い顔をしたけどわたしは嬉しかった。

 後から聞いたんだけど、別に結婚式が嫌だった訳じゃなくて自分から言いたかったんだって。

 拗ねてる顔が可愛くって、つい抱きしめちゃった。



 結婚式を終えて本当の夫婦になって……。

 レースの魔法の事でバタバタしたり子育てに奮闘したり、魔法の女神様の意識に触れたり向こうの世界から持ってきてた本の中にタティングレースの本があって新しい魔方陣を作っちゃって女神様の再来とか言われちゃうんだけど、それはまた別のお話。


しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。


処理中です...