異世界に飛ばされちゃったわたしは、どうもお姫様の身代わりに花嫁にされちゃったらしい。

みにゃるき しうにゃ

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たぶん最終章、レースの魔法の女神様の再来と呼ばれるのは また別のおはなし。

その9

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 そろそろお姉さんが来る頃かもとは思ったけど、来ると約束している訳でもない。だからとりあえず、のんびりとレースでも編んでいようと道具を取り出し日当たりの良い窓辺に腰掛ける。

 最近はだいぶ肌寒くなってきているから、ひざ掛けも忘れずに持って行く。あ、お茶とお菓子もつまめるように持って行こうかな。あーでもお菓子はやめといたほうが良いかな。手についた油分がレース糸についたら、せっかくのレースが汚れちゃう。

 お茶も本当は、万が一跳ねちゃった時の事を考えると持って行かない方が良いんだろうけど、まあいっか。

 ポカポカの陽射しの中、お茶を飲み飲みレースを編む。あんまり根を詰めて編むと肩が凝っちゃうから、休み休み。時々背伸びをしたりストレッチしたりしながら。

 ふと気づくと、お姉さんが来るならもうとっくに来てる時間が過ぎている事に気がついた。

 そっか、今日はお姉さん来ないのか。

 ちょっと淋しくは感じたけど、別に約束してたわけでもないから仕方がない。再び魔法書を広げてレース編みを再開する。

 お茶を飲もうとカップを持ち上げたら、空になってた。どうしよう。もう一杯飲もうかな。

 そう思って立ち上がった時、小鳥の声がやんで誰かが来る気配がした。この時間ならたぶん、シオハさんだろう。

 窓から外を覗くと、思った通りそこには荷物を抱えたシオハさんの姿があった。

「こんにちは、シオハさん。ちょっと待っててね。今日はクロモがいないから、防犯の魔法がかけてあるの。あれ? 防犯の魔法じゃなくって結界だっけ? 障壁? うーん。まあとにかく、家には勝手に入れないようになってるから、ちょっと待っててね」

 窓からそう声をかけて、パタパタと玄関に急ぐ。

 以前から扉にロックの魔法を掛けることはあったみたいなんだけど、最近なんだか心配性になったのか、わたしが一人でお留守番の日はそういう魔法をかけていくようになった。

 わたしの手には反応して開いてくれるけど、他の人では勝手に開けられない。無理やり入ろうとしたら何か罠が発動するらしい。それとクロモに連絡も行くって。

 あ、他の人って言ってもお姉さんは別だけど。自分で魔法解除しちゃうから。

「お待たせしました。どうぞ」

 わたしがドアを開けると、シオハさんが嬉しそうな笑みを浮かべた。

「ニシナ様。ご機嫌麗しゅう。貴女様の薔薇の笑みをいただけるだけで私の心は天にも昇る気持ちです」

 シオハさんの歯の浮く台詞にちょっと照れる。こんな事色んな人に言わなきゃならないなんて、商売人て大変なんだなぁ。

「それで、今日は何を持ってきてくれたの? あ、さっきも言ったけど今日はクロモ留守にしてるから、あんまり高い物は買えないの。ごめんなさいね。けど見るだけでも良いなら見るの楽しいから見せてもらってもいいかな?」

 わたしの言葉にシオハさんは、スッと真剣な顔をした。

「ご主人様はお留守……。本日はお一人なのでございますか?」

 一瞬街で会った時のことが蘇り、つい一歩引いてしまう。それに気づいたシオハさんも、すぐに笑顔で頭を下げる。

「それでニシナ様が危険な目に遭わぬよう、魔法をかけていかれたのですね」

 ニコニコといつもの営業スマイルに戻るシオハさん。ホッとしてわたしはいつも通り客間にシオハさんを迎え入れた。


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