独身彼氏なし作る気もなしのアラフォーおばさんの見る痛い乙女ゲーの夢のお話

みにゃるき しうにゃ

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今度は透見と美術館デート? その1

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 あれからみんなで話して結局、おかしな事はしないで今まで通り、でもわたしと透見二人でしばらく行動するって事で落ち着いた。

 みんなから叱られた棗ちゃんは少しの間しゅんとしていたけど、すぐに気を取り直して顔をあげた。

「そうですよね。わたしが手助けなんてしなくても透見が〈唯一の人〉として覚醒すれば二人はラブラブですものね」

 にこにこと笑いながらわたしを見る。

 ……なんか目的が違ってきてる気もするけど、まあ気にするまい。

 まあそんなわけで棗ちゃんに変な細工はしないって約束してもらって、でも確認する為にも透見と二人でってのは変更なしになった。



 翌日〈救いの姫〉や〈唯一の人〉の名前がきいたのか、早くも美術館の収蔵品を見せてもらえる事になった。

「では、出かける前に魔術の方を掛けますね」

 そう言って前回と同じように丁寧に呪文を唱え始める。同じ様に身体のあちこちに触られ、ドキドキする。けど、透見の方はどうなのかな。わたしの事意識してくれるなら少しはドキドキしてくれてると思うんだけど。

 そう思って透見の顔を盗み見る。透見は真剣な顔をして呪文を唱えている。けど、呪文を唱え終え顔を上げた透見はわたしと目が合った途端、ぱっと驚いたような顔をした後みるみる赤くなった。

 わわわ。……照れる。思わずぱっと顔を背け、それからそろっともう一度透見を見た。すると彼も同じ様に恐る恐るこちらを見ていて……お互い照れ笑いをしてしまった。

「……前回はみんなや棗さんがいましたが、今日は私と二人ですので息苦しいでしょうが外を歩く時は声をたてないようにして下さい」

 透見に言われ、こくりと頷く。黙々と歩くのはちょっと気まずいかもしれないけど、小鬼に見つかるわけにはいかないもんね。

「では行きましょうか」

 すっと手を差し出され、びっくりした。これが園比なら『あー、また』とか思うんだけど、まさか透見がこんな事をするとは思わなかった。

 びっくりはしたけど透見の気が変わらない内にとその手にわたしの手を重ねる。あー、緊張する。けど、嬉しい。

 ちらりと透見を見ると、彼もうっすらと赤くなっている。つい「ふふ」っと笑いそうになって声をたてちゃいけないんだったと思い出した。

 するとちらりとこちらを見た透見もにこりといつもの優しい笑みを浮かべた。



 美術館に着くと透見はすっと手を放し、静かに話しかけてきた。

「姫君、もう声を出してもかまいませんよ」

 図書館の時もそうだったけど、建物の中は比較的安全だからという事だ。

「うん。大きい美術館なんだねぇ」

「そうですか?」

 透見の返事にしまった、と思った。何の気なしに「大きい」なんて口にしちゃったけど『美術館』なんだもん、ある程度大きいのは当たり前じゃん。

 慌てて取り繕う……というか、本当の事を言う。

「あ、ごめん。つい大きいって言っちゃったけど、美術館ってそんなにたくさんは行った事ないから、本当はよく分かってないかも。ぱっと見の外観の印象と実際に入った時の広さが違うことって何回かあったし……」

 言いながら自分が何を言いたいのか分かんなくなってきた。

 どうしようってオロオロしてるところへ美術館の職員さん……というか、学芸員さん? がこちらへやって来た。

「緋川さん、ですか?」

 にこりと笑って声を掛けてくれたのは、ヒョロリとしたちょっと気弱そうにも見える眼鏡を掛けた男性だった。

「はい。私が緋川です。そしてこちらは救いの姫君です」

 そう言って透見がわたしを紹介する。

 ここに来て……ていうか、この夢を見始めて〈救いの姫〉〈救いの姫〉って言われ続けて、慣れたつもりでいたんだけど、こんな風に大人の人に正式に(?)紹介されるとなんかやっぱりかなり照れる。

 けどだからって怯んでるわけにもいかないから、すっと背を伸ばしてにっこりと笑った。

「はじめまして。今日はよろしくお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします。まさか本物の〈救いの姫〉にお会い出来るとは……。光栄です」

 そう言うと彼は少し頬を紅潮させ、すっと頭を下げた。そして慌てて頭を上げ、懐から名刺を取り出す。

「す、すみません。申し送れましたわたくしこの美術館の館長を任されております、永嶋と申します」

 名刺を出され、戸惑う。わたし名刺なんて持ってないし、OL経験のないわたしは名刺交換ってのもやった事ない。だからこういう場合どうするのが正解なのか、知らない。

「あ、えーと。ご丁寧にありがとうございます」

 取りあえずそう言い、名刺を受け取る。オロオロしないように気をつけたつもりだけど、情けないというか恥ずかしい。

「すみません。わたし名刺持ってなくて」

 申し訳なくて謝ると、永嶋さんは慌てて首を振った。

「いえ、こうして私の名刺を受け取っていただけるだけで光栄です」

 目を細め、優しい笑みを浮かべてくれる。

「そうですよ。それに姫君は〈唯一の人〉以外に名乗ってはいけないのですから名刺の作りようがありませんしね」

 にこり、と笑って透見が言った。けど、あれ? なんか透見の笑顔が黒いような気が……? なんで?

 けどわたしの気のせいなのか永嶋さんの方はそんな風に感じていないようで透見に向かって「そうですよねー」と暢気な笑顔を向けていた。

「ではこちらのお部屋へどうぞ」

 扉を開き、永嶋さんが部屋へと案内してくれる。

 通されたのはシンプルな会議室みたいな部屋だった。壁際には大きめの彫刻や壺、スタンドライトなんかが置いてあって、中央に置かれた大きなテーブルの上には幾つかの絵画が置かれている。

「当美術館にある〈唯一の人〉や〈救いの姫〉に関する物はこれだけです。電話でお話した神社からの寄贈の物の他にも地元の画家や絵師が描いたものも含まれています」

 言いながら永嶋さんは神社から寄贈された物とそうでない物を手で指し示した。

「ありがとうございます。……こちらはカメラで撮影しても?」

 いつ持って来ていたのか、透見がデジカメを取り出し尋ねる。

 そっか、写真撮っとけば後でみんなで見て検討する事も出来るもんね。さすが透見。

 にしても、やっぱりなんか透見の口調が冷たい気がする……。

「ああはい。けれどフラッシュは使わないで下さいね」

 にこりと笑って永嶋さんがなぜかわたしに向かって言った。カメラを持っているのは透見なのに。わたしの方が失敗しそうって思われちゃったかな。


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