独身彼氏なし作る気もなしのアラフォーおばさんの見る痛い乙女ゲーの夢のお話

みにゃるき しうにゃ

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園比といちゃいちゃ(?)デート その3

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 だけどそれはわたしの気のせいだったみたい。

「ところでさ、〈唯一の人〉ってどうやって捜すの?」

 ケロリとそう尋ねてくる。

「どうやってって……地道に色んな人に会って?」

 すでに小鬼に見つかっているのに、効率の悪い捜し方だと思うけど、特別な能力とかを持ってるわけじゃないから他にどうしようもない。

 もっとも本当は四人の中から、あ、剛毅は除外したから三人の中から選ぼうとしてるから、出歩く必要は無かったりするんだけど。

「会ったら、分かるの?」

 う、するどいところをついてくる。

 園比としたら、単に疑問に思った事を素直に口に出しただけなんだろうけど、わたしとしては答えにくい。

「た、たぶん」

 言葉を濁すと園比はびっくりした顔でわたしを見た。

「たぶんて、分かんないかもしれないの!?」

 予想外の答えだったんだろう、叫んでわたしをじっと見る。

 うー、これは正直にわたしが選んだ人が〈唯一の人〉になるって言っちゃった方が良いのかな?

 もしもわたしが若くてそれなりにかわいい、普通の体型の設定でこの夢見てるんだったら、正直に話して〈唯一の人〉候補の男の子達にモテモテで誘惑されるってのも楽しいのかもしんないんだけど。でも現実のままのブスでブタでおばさんのわたしじゃあ、皆に逃げられてテキトーに合いそうな人見繕われて宛てがわれそうだよね……。

 そんな事を色々考えてる間園比も色々考えてたみたいで、急に「うん」と言うとにこりと笑ってこう言った。

「遊園地に行こう!」

「はあ?」

 なぜ遊園地? とか思いつつ、特に断る理由もないので園比に連れられ付いて行く。

 というか、同年代みんな幼馴染みとか言ってる狭い島とか言ってたのにそんな遊園地なんてあるの? とか思ってたら、想像してたよりずっと小さな、昔で言うならデパートの屋上にあった規模の遊園地だった。観覧車はそれなりの大きさがあるけど、他はミニコースターやブランコみたいなのに乗ってくるくる回るやつ(名前知らない)あと二つ三つ。小学生低学年でも乗れるような物ばかりで、一~二時間あったら全部制覇出来るんじゃないだろうか。

 そんな風にわたしが考えてるのが分かったのか。

「あ、子供向けの遊園地ってバカにしたでしょ?」

 いたずらっ子の瞳をして園比が言う。

「そんな事は……」

 ない、とも言いきれないかも。

「まあ、とにかく乗ろう」

 楽しそうに園比はわたしの手を引いてミニコースターへと向かった。

 ミニ、と名の付く通り、それは乗り場に立ってもコース全体を見渡せる規模だった。乗員も八名、一周するのに一分もかからないんじゃないかって程度。高低差もそんなにないんじゃないだろうか。

 ほんとの事言うと、絶叫系はあんまり得意じゃない。昔、せっかく並んでたのに直前で「やっぱ無理」と逃げ出して友達に怒られた経験もある。

 けどこのコースターは年齢制限もないやつだ。さすがにここで尻込みする程苦手じゃない。

 都会の有名な大きな遊園地と違い、行けば並ぶことなくすぐに乗れる。ていうか、八名の乗員すら満席にならず、出発するみたいだ。これで動かして採算は取れてるんだろうか?

 まあ、そんな心配は経営者に任せとこう。

「しゅっぱーっつ。怖かったら僕にしがみついてもいいからね」

 隣りに座った園比が楽しそうにそう言う。

「さすがにしがみつく程怖くはないよ」

 わたしも笑いながら言うけど実は、手すりを握った手は握力全開だ。そんなに怖くないのは分かってるのに、どうもこれだけは譲れない。

「それはどーかなー?」

 にやにやと笑いながら園比が言うと同時に、出発のブザーが鳴り、ガタンゴトンとコースターがなだらかな坂を登り始めた。

 高さも角度もゆるやかに登り、ふわっと軽く滑り降りる。それでも子供は怖いのか、それとも楽しいからなのかキャーキャーと叫ぶ声がする。

 わたしはというと、手はぎゅっと握ってはいるもののやはりさほど怖いとは思わず、まあ楽しく風を感じていた。

 隣りを見ると園比はさすが余裕で両手を上げ楽しんでいる。

 ミニコースターはあっと言う間に最終コーナー。ゴールが見えあっけなく終わろうとしたその時、思わぬ場所でふわりと浮遊した。

「ひゃあっ」

 予想してなかった場所での落下に思わず声が出る。

 はたから見れば、落差なんてほとんど分からないくらいの高さのそれは、それでもプチサプライズには充分で、わたし以外の人もそこで短く悲鳴を上げていた。

「あはは。結構怖かったでしょ?」

 たぶん園比はそれを知っていたんだろう、コースターから降りる時、手を差し伸べながらそう言った。

「怖いというより、びっくりしたよ」

 それが正直な感想。

 それでもびっくりしたせいか、胸のドキドキと共に足が少し震えてた。

 年のせいなのかどうなのか、たったそれだけでフラリと足がもつれてふらつく。

 待ってましたとばかりに園比が肩を抱き寄せ支えてくれる。

「大丈夫?」

 耳元で園比に囁かれ、頬が赤くなるのを感じた。

 さすがだ。伊達に女の子好きを公言してるわけじゃない。ちょっと、いやかなりドキッとしたかも。

 だけどこれって半分は吊り橋効果のせいなのかもしれない。だとしたらそんなものに流されちゃいけない。

 わたしは慌てて体制を立て直した。

「ありがと。いや、年かなぁ、足がふらついちゃった」

 照れ隠しに頭をポリポリと掻いて、笑って誤魔化してしまおう。

 そんなわたしの思いに気づいてるのかいないのか。

「じゃあ足休めるために、観覧車に乗る?」

 園比がそんな提案をしてくる。それについ頷きかけて、やめた。座って休むって事は賛成だけど、観覧車って高いし狭いし個室だし、園比と二人っきりってのはちょっと……気まずい。そんな気がする。

「えーと、もう乗り物はいいや。<唯一の人>捜しもしなくちゃいけないし、とりあえずそこに座ってジュース飲もう」

 園比を選ぶって決めた後なら観覧車で密室デートは外せないラブイベントだけど、まだ誰にするか決めてない今は、さっきのコースターで充分、だよね?

 そんな事を考えながら、わたしは近くにあったベンチに腰掛けた。


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