24 / 26
標準語訳?
11
しおりを挟むこれでもう、大丈夫。もう、なんにも心配することないだろう。
そうは思ったものの、なにか不安が拭いされなくて妖精さんにはもうちょっといてもらうことにした。
「キミが幸せと思えるまでつきあうよ。そのための恋の妖精なんだから」
優しく笑う妖精さんを見てるとほっとする。なのにタカキと二人になると途端に不安になる。魔法はちゃんと効いてて、タカキはちゃんとわたしのこと好きなはずなのに。タカキはふみかの事わたしの友達程度にしか思ってないはずなのに、心の奥底にふみかへの想いが残ってるような気がして。
不安が的中した、と思ったのはすぐだった。
いつものようにタカキと二人で話していた時のこと。
いつもと同じ学校に続く道。人通りの少ない道でつないだタカキの手の温かさ。このままこの幸せが続きますようにって祈りながらタカキと話する。
「日曜さ、今度はタワー登りにいかない?」
次のデートに誘ってみる。恋人なんだから、毎週デートするよね? ていうか、今までも毎週のように三人で遊んでたんだけど。でも、今は恋人同士なんだから、デートっぽい所選んでタカキを誘ってみた。
「ああ。タワーかぁ、いいなあ。けどこの間の神社も楽しかったな?」
思い出しながらタカキが楽しそうに言う。
「うん」
わたしも笑顔で頷いたけど、水族館じゃなくて神社での事を楽しかって言ったタカキに不安を覚えた。
そんなわたしの不安も知らないで、タカキが言う。
「飢えた鳩におそわれてお前むちゃくちゃになったのに、それだけ飢えてる鳩がかわいそうってお前何回も鳩の餌買ってさぁ」
え?
耳を疑った。うそでしょ? って言いたくなった。だけど、そんなの言えない。
「なんだかんだ言ってお前やさしいんだな。そういうとこ、好きだなーって思う」
嬉しそうに愛しそうに、タカキがわたしを見る。けど、わたしはひきつった顔しか出来なかった。
「あみ?」
それに気がついたタカキが心配そうな顔になる。
「ご、ごめん。ちょっと……」
握ってた手を離す。うつむいて、つぶやく。
「ごめん、その、ちょっと。先、行かして」
言ってそのままタカキを見ないまんま、わたしは走り出した。
神社で持ってたポテトはやったけど、わたしハトのエサなんか買ってない。鳩に何回も餌をやったのは、ふみかじゃん。
タカキにふみかと二人で遊んだ時の記憶は無くなってるはずなのに。なんで? なんでわたしとのほんとの思い出じゃなくて、ふみかとの思い出がわたしとの思い出にすり替わってるの?
気持ち悪い。涙が出そうなのを飲み込んで走る。
タカキが追いかけてくる音が最初は聞こえたけど、わたしが振り返らなかったせいか、やがて聞こえなくなった。
それでも走って学校に駆け込む。
「あみちゃん?」
昇降口で、聞きなれた声が聞こえた。反射的に振り返って、ふみかと目が合う。
「どうしたの? あみちゃん、気分悪いの? 一緒に保健室、行こうか?」
青い顔をしていたんだろう、わたしを心配してふみかが言う。
「ううん、大丈夫。トイレ行けば……。ありがとね」
それだけ言って、わたしはまた駆けだした。
ふみかなんか見たくなかった。本当にふみかさえ幼なじみじゃなかったら良かったのにとさえ思った。
なのにふみかは、本当に心配そうにわたしを見ていた。そしで久しぶりにまともに見たふみかの姿は、やせていた。わたしの心配より自分の心配しなさいよって言いたくなるくらい、細くなってる。
それなのになんでわたしの心配なんかしてくるの? そんなに痩せたのは、わたしのせいでしょう?
ますます胸が気持ち悪くなった。教室に寄らないまんま、トイレの個室に駆け込む。鞄に付けたあみぐるみをはずして握りしめる。ぎゅっと握りしめる。
けど、妖精さんを呼ぶことは出来なかった。何回も呼ぼうと思ったけど、声が出なかった。
予鈴のチャイムを聞きながら、あみぐるみを鞄に戻した。のろのろとトイレから出て教室に向かう。
本鈴が鳴る頃、教室にたどり着いた。タカキが慌ててこっちに来かけたけど、先生が来たから席に着く。
タカキとふみかが心配そうにこっちを見てるのが分かる。大丈夫って笑ってあげたいけど、笑える自信がなかった。
HRが終わって、慌ててタカキがやって来る。
「大丈夫か? 悪い、俺、ただトイレに行きたいだけなのかと思って。けど具合悪かったんだな。ふみかちゃんが心配してたぞ。保健室行くか?」
優しく声をかけてくるタカキの顔を見る事なく、わたしは頷いた。
今日はもう、これ以上タカキやふみかと顔を合わせられない。ひとりで、考えたい。
保健室に行った後、早退した。微熱があったし、顔色がすぐれなかったから、保健室の先生も帰りなさいって言ってくれた。
帰りながらも頭の中がぐるぐる回った。タカキが好きだったふみか。ふみかが好きだったタカキ。だけどわたしもタカキが好きで、魔法をかけてわたしを好きって思わせてもらった。だからタカキはわたしを好きって思ってる。
けど、どんなに魔法をかけてもらってもタカキが本当に好きなのはふみかなんだ。ふみかの事が好きだから、何回魔法かけてもふみかの影が付きまとう。たとえふみかを消してしまっても、タカキの中からふみかの影を消すことは出来ない。
ふみかはホントに小さい頃からの幼なじみで親友だった。何をするのも一緒で、小さい頃はタカキより大好きで仲良しだった。こんな事がなければずっと仲良しでいれたのに。
なんでこんな事になってしまったんだろう? どこでやり方間違えたんだろう?
ノドが痛い。出そうになる涙を飲み込む。
ただの幼なじみで仲良し三人組だった頃のわたし達と、妖精さんが現れてからのわたし達の姿が頭の中でぐるぐる回る。
頭の中がぐるぐるで、足がふらつく。
足がふらつくから足下を見ながら、家に帰る。
顔を上げると遠くに自分ちが見えた。
ずっと心の奥底にあった良心が、決心しなさいってわたしに言った。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる