6 / 26
本編
6
しおりを挟む午後の授業は、放課後の事が気になって全然頭に入らんかった。妖精さんの魔法の腕は、今朝のタカキ見ちょるけぇ疑うちょらん。じゃけど、放課後三人で帰る時、ふみかにどねぇ言うたらええんやろ。
これがほんとに本当のことやったら先にふみかと付き合うって言うたタカキも悪いんやけぇ、タカキに任せとくってのもありかと思うんじゃけど、今回本当はタカキは悪うないんじゃけぇ出来るだけうちがふみかと話ししてなんとかしたい。
でも、なんて言うたらええん?
そんなことぐるぐる考えよったら、あっと言う間に放課後になってしもうた。
いつもとおんなしように三人で固まって帰る帰り道。さすがに学校近くは色んな人がおるけぇ、みんな差し障りのない話をした。
それからひとけがなくなって、みんな黙りこくった。三人ともどう話を切り出せばええんか分からんのじゃろう。
ほいでもふみかが何か言おうと口を開きかけたんを見て、うちは慌てて大声で叫んだ。
「ごめん、ふみか。ほんとごめん」
これは、本心からの謝罪。ふみかからタカキをとったんは事実やけぇ。
「あみちゃん?」
ふみかが驚いてうちを見る。けどうちは、ふみかの顔が見れんかった。
「昨日も、さっきも言えんかったんやけど、ごめん、ふみか。うち、タカキの事が好きなん。ずっと好きやったん。じゃけど、ふみかとも友達やけぇ、昨日二人が付き合いだしたって聞いて、そのこと言えんかったん。やけどね、やっぱぁ気持ちだけは言うときたいって思うたんよ。じゃけぇ今朝早う出てタカキ待ち伏せしたん。そんで、告白したほ」
いっきにまくしたてて、うちはぎゅっと目ぇつぶった。ふみかがとまどっちょおんが気配でも分かる。
「そお、やったん。それで今日、タカキ迎えに来られんかったん」
つぶやくふみか。目を開けると不安そうにタカキを見上げるふみかが目に入った。
タカキはバツが悪そうにその視線をそらしちょお。
「すまん、ふみか」
ぽつりと言うタカキに、ふみかは更に不安そうな顔になった。
「謝ることないっちゃ。明日からは約束通り迎えにきてくれるんやろ?」
そこまで言うとふみかはくるりとこっちに向きを変えて立て続けに言うた。
「あみちゃん、気がつかんでごめんね。けどうちら……」
「ふみか、すまん。明日から、迎えに行けん」
喋るふみかの言葉を遮ってタカキが言うた。驚いてふみかがタカキを見る。
「なんで?」
しばらく言葉が出んかったけど、タカキは決心したように口を開いた。
「俺、ほんとはあみの事が好きじゃったんじゃ。ずっと三人でおって仲良しで、もちろんふみかの事も好きなんじゃけど、あみに告白されて気がついた」
タカキの言葉にふみかはショックで真っ青になってしもうた。そんなふみかを見ちょったらかわいそうっちゅうか、罪悪感がこみ上げてくるっちゅうか……。けどその一方でタカキの言葉にうちは舞い上がった。こんなにはっきりタカキに好きって言われて嬉しゅうないわけがない。
でもじゃけぇってふみかの前でにやけるわけにもいかんけぇ、うちは必死で歯をくいしばっちょった。
「なんで? タカキ、うちのことずっと好きやったって言うたやん。あれ嘘やったほ? ついこないだ言うたことやん?」
ふみかの声が震える。唇が震える。瞳からぼたぼたと、涙があふれ出てくる。
急に罪悪感が強うなって、胸が痛おなった。ふみかの涙につられて、うちまで涙が出そうになる。タカキもおんなしみたいで、つらそうな顔しちょる。
「ごめんね、ふみか」
うちは謝ることしか出来んかった。
「ふみか、すまん」
タカキも謝る。
他にはどねぇしょうも出来ん。
ふみかはその場にしゃがみ込んでわあわあ大声で泣き出した。
「うそつき。うちが一番好きって言うたやん。あみちゃんだって、おめでとうって言うてくれたやんか。なんで? なんで嘘つくん?」
ふみかの言葉にうちもタカキも返事が返せん。ただ、ふみかが泣き止むのを待つしか出来んかった。
ひとしきり泣いた後、ふみかは立ち上がった。うちらの顔を見んまんま、小さい声で言う。
「うち、昔っからほんとにタカキのこともあみちゃんのことも大好きなん。それはほんとなんよ。やけぇ、大人になってもおばあちゃんになっても、二人と仲良しでおりたいと思っちょる。けど、今は」
そこまで言うて、また涙を流した。
「笑って祝福できるほど、大人じゃないけぇ、帰る。明日からもう朝も帰りも、一緒にはせんけぇ」
そう言って、ふみかはかっけりだした。その背中を追うように、タカキがたっける。
「俺も、俺もふみかと大人になってもじーちゃんになっても仲良しでおりたい。おりたいけぇ、ムシのええこと言いよるかもしれんけど、ふみかが嫌じゃのうなったら、また遊ぼうや。一緒に学校行こう。待っちょるけぇ。待っちょるけぇの」
ふみかはタカキの声を振り切ろうとするみたいに振り返らんとそのままかっけってった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?
【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください
楠結衣
恋愛
田舎の薬屋に生まれたエリサは、薬草が大好き。薬草を摘みに出掛けると、怪我をした一匹の子犬を助ける。子犬だと思っていたら、領主の息子の狼獣人ヒューゴだった。
ヒューゴとエリサは、一緒に薬草採取に出掛ける日々を送る。そんなある日、魔王復活の知らせが世界を駆け抜け、神託によりヒューゴが勇者に選ばれることに。
ヒューゴが出立の日、エリサは自身の恋心に気づいてヒューゴに告白したところ二人は即結婚することに……!
「エリサを泣かせるなんて、絶対許さない」
「エリサ、愛してる!」
ちょっぴり鈍感で薬草を愛するヒロインが、一途で愛が重たい変態風味な勇者に溺愛されるお話です。

悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる