おまじないしたら恋の妖精さんが出てきちゃった。わたしのお願い叶えてくれる?

みにゃるき しうにゃ

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本編

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 午後の授業は、放課後の事が気になって全然頭に入らんかった。妖精さんの魔法の腕は、今朝のタカキ見ちょるけぇ疑うちょらん。じゃけど、放課後三人で帰る時、ふみかにどねぇ言うたらええんやろ。

 これがほんとに本当のことやったら先にふみかと付き合うって言うたタカキも悪いんやけぇ、タカキに任せとくってのもありかと思うんじゃけど、今回本当はタカキは悪うないんじゃけぇ出来るだけうちがふみかと話ししてなんとかしたい。

 でも、なんて言うたらええん?

 そんなことぐるぐる考えよったら、あっと言う間に放課後になってしもうた。

 いつもとおんなしように三人で固まって帰る帰り道。さすがに学校近くは色んな人がおるけぇ、みんな差し障りのない話をした。

 それからひとけがなくなって、みんな黙りこくった。三人ともどう話を切り出せばええんか分からんのじゃろう。

 ほいでもふみかが何か言おうと口を開きかけたんを見て、うちは慌てて大声で叫んだ。

「ごめん、ふみか。ほんとごめん」

 これは、本心からの謝罪。ふみかからタカキをとったんは事実やけぇ。

「あみちゃん?」

 ふみかが驚いてうちを見る。けどうちは、ふみかの顔が見れんかった。

「昨日も、さっきも言えんかったんやけど、ごめん、ふみか。うち、タカキの事が好きなん。ずっと好きやったん。じゃけど、ふみかとも友達やけぇ、昨日二人が付き合いだしたって聞いて、そのこと言えんかったん。やけどね、やっぱぁ気持ちだけは言うときたいって思うたんよ。じゃけぇ今朝早う出てタカキ待ち伏せしたん。そんで、告白したほ」

 いっきにまくしたてて、うちはぎゅっと目ぇつぶった。ふみかがとまどっちょおんが気配でも分かる。

「そお、やったん。それで今日、タカキ迎えに来られんかったん」

 つぶやくふみか。目を開けると不安そうにタカキを見上げるふみかが目に入った。

 タカキはバツが悪そうにその視線をそらしちょお。

「すまん、ふみか」

 ぽつりと言うタカキに、ふみかは更に不安そうな顔になった。

「謝ることないっちゃ。明日からは約束通り迎えにきてくれるんやろ?」

 そこまで言うとふみかはくるりとこっちに向きを変えて立て続けに言うた。

「あみちゃん、気がつかんでごめんね。けどうちら……」

「ふみか、すまん。明日から、迎えに行けん」

 喋るふみかの言葉を遮ってタカキが言うた。驚いてふみかがタカキを見る。

「なんで?」

 しばらく言葉が出んかったけど、タカキは決心したように口を開いた。

「俺、ほんとはあみの事が好きじゃったんじゃ。ずっと三人でおって仲良しで、もちろんふみかの事も好きなんじゃけど、あみに告白されて気がついた」

 タカキの言葉にふみかはショックで真っ青になってしもうた。そんなふみかを見ちょったらかわいそうっちゅうか、罪悪感がこみ上げてくるっちゅうか……。けどその一方でタカキの言葉にうちは舞い上がった。こんなにはっきりタカキに好きって言われて嬉しゅうないわけがない。

 でもじゃけぇってふみかの前でにやけるわけにもいかんけぇ、うちは必死で歯をくいしばっちょった。

「なんで? タカキ、うちのことずっと好きやったって言うたやん。あれ嘘やったほ? ついこないだ言うたことやん?」

 ふみかの声が震える。唇が震える。瞳からぼたぼたと、涙があふれ出てくる。

 急に罪悪感が強うなって、胸が痛おなった。ふみかの涙につられて、うちまで涙が出そうになる。タカキもおんなしみたいで、つらそうな顔しちょる。

「ごめんね、ふみか」

 うちは謝ることしか出来んかった。

「ふみか、すまん」

 タカキも謝る。

 他にはどねぇしょうも出来ん。

 ふみかはその場にしゃがみ込んでわあわあ大声で泣き出した。

「うそつき。うちが一番好きって言うたやん。あみちゃんだって、おめでとうって言うてくれたやんか。なんで? なんで嘘つくん?」

 ふみかの言葉にうちもタカキも返事が返せん。ただ、ふみかが泣き止むのを待つしか出来んかった。

 ひとしきり泣いた後、ふみかは立ち上がった。うちらの顔を見んまんま、小さい声で言う。

「うち、昔っからほんとにタカキのこともあみちゃんのことも大好きなん。それはほんとなんよ。やけぇ、大人になってもおばあちゃんになっても、二人と仲良しでおりたいと思っちょる。けど、今は」

 そこまで言うて、また涙を流した。

「笑って祝福できるほど、大人じゃないけぇ、帰る。明日からもう朝も帰りも、一緒にはせんけぇ」

 そう言って、ふみかはかっけりだした。その背中を追うように、タカキがたっける。

「俺も、俺もふみかと大人になってもじーちゃんになっても仲良しでおりたい。おりたいけぇ、ムシのええこと言いよるかもしれんけど、ふみかが嫌じゃのうなったら、また遊ぼうや。一緒に学校行こう。待っちょるけぇ。待っちょるけぇの」

 ふみかはタカキの声を振り切ろうとするみたいに振り返らんとそのままかっけってった。


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