おまじないしたら恋の妖精さんが出てきちゃった。わたしのお願い叶えてくれる?

みにゃるき しうにゃ

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本編

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 次の日、やたら朝早うに目が覚めたん。

 昨日のこと夢やったんやないかって、すぐあみぐるみ探してみたんよ。そしたら机の上に、うちの編んだあみぐるみがある。顔もあみぐるみのまんま、うちがつけたビーズの目と糸で縫った鼻と口の顔。妖精さんやない。

 やっぱぁ、夢じゃったん?

 悲しゅうなって、涙が出てきた。ほしたら。

「ふあぁっ。おはよう、早いんだね」

 あみぐるみの顔がぱっとタカキの顔に、妖精さんになった。

「びっくりしたやん。昨日の晩のこと、夢じゃったかと思うたやんか」

 ほっとしたら、力が抜けた。

 妖精さんはきょとんとしちょる。けど、うちの言いたい事が分かったんか「ああ」と頷いた。

「本来、妖精であるオレの姿はキミに見えないから、キミとコミュニケーションとる為にあみぐるみの身体を借りて、この姿をとってるんだよ。だから用のない時は、リンクを切ってるから元のあみぐるみに戻るんだよ」

 分かるような分からんようなこと言うて、妖精さんはにこりと笑うた。



 妖精になったあみぐるみを鞄につけて、いつもの時間に家を出る支度をする。

 ふみかとタカキの事を思うたら、ちょこっと胸が痛うなった。

「ね、いつからタカキ、うちを好きになるん?」

 玄関出る前にこそっと妖精に聞いてみた。したら妖精さん、きょとんとした顔で言うた。

「もうなってるよ? キミの願いは叶えてる。ただ、アフターフォローがいるかなと思ってまだ様子見てるんだけどね」

 て、ええええええ?

 もう、タカキうちのこと好きになっちょるん? けど、ふみかの事はどねーするん。まだふたり、付き合いだしたばっかしやん。

 びっくりしながら玄関開けて、更にびっくりした。

「おはよ、あみ」

 そこに、タカキが立っちょった。

 頭ん中がぐるぐるまわり始める。

 なんで? 今までそりゃ途中からは一緒に登校しよったけど、タカキん家の方が学校に近いけぇ、うちに迎えに来ることなんかなかったほに。

「どしたん? なんでタカキがおるほ?」

 つい、口から出る。けどすぐ、思い出した。妖精さんが願いを叶えてくれたけぇ、タカキはうちのこと好きになっちょる。やったら好きなコの家に迎えに来ても、おかしゅうないやん?

 焦っちょったらタカキがちょっと不機嫌そうな顔をした。

「なんでって、約束したじゃろーが昨日。今日から迎えに行くって。お前もう忘れたん?」

 ちょっと怒っちょるみたいやけど、顔が赤うなっちょおのを見ると照れちょるんかもしれん。やとしたら、ほんとにうちのこと好きになっちょるんかも。

 そう思うたら嬉しゅうて、顔がにやけてきてしもうた。

 ほいじゃけど、昨日タカキと会うちょった時はまだ妖精さんは出てきちょらんかった。まだ、タカキはふみかの事が好きじゃった。じゃけぇ、うちと待ち合わせの約束なんかしちょらん。なほに、タカキは約束したと思うちょる。なんで?

 妖精さんにどういう事か聞こうかと思うたけど、タカキの前であみぐるみに話しかけるわけにもいかん。必死で頭フル回転して昨日のこと思い返しよったら、ふと思い出した。

 そうじゃあね。昨日確かタカキ、ふみかと待ち合わせの約束しよった。うちと合流するまでの短い間やけど、ふたりで登校しようって。うち、そんなら今日から遠慮しようかって言うたんじゃけど、ふたりとも今まで一緒に行きよったほにうちをひとりぼっちで登校させられるわけないやんって言いよったんじゃった。

 昨日は悲しゅうて笑顔作るんに必死で、なに話したんかよう覚えちょらんかったけど、そうやん。たしかにタカキ、ふみかとそんな約束しよった。

「ご、ごめん。そうやった。なんか、タカキと両想いになれたんが夢みたいで……。約束も夢かと思うちょった」

 あわててごまかしてみる。そしたらタカキ、ぱっと顔を赤うしてそっぽを向いた。

「なん言いよるんか。つきあい始めたんも夢にしたら怒るけぇの」

 ど、どうしよお。なんかぶち嬉しいんやけど。嬉しゅうて涙が出そうなんやけど。

 感動して言葉が出てこん。どうしょー。顔がにやけて止まらん。

「あみ?」

 返事せんかったけぇ、タカキがうちの顔覗き込む。あんまし変な顔見せたくないけぇ、うちは慌てて言った。

「そ、そろそろ行かんと。ふみかが待っちょるよ?」

「おま、俺にだけ恥ずかしいこと言わせちょいて逃げる気か?」

「ほ、ほら。行かんと」

 顔を真っ赤にして怒るタカキから逃げるようにしてうちは走り出した。タカキもうちを追いかけるようにして走り出す。

 あー、もう胸がドキドキする。嬉しゅうて楽しゅうて、世界が薔薇色ってこういうこと言うんかね?

 パタパタ二人で走って、いっつもふみかと合流する場所まで行った。いつもよりちょっと遅うなったと思うほに、ふみかの姿が見あたらん。

「どうしたんやろ、ふみか。いつもやったらうちより早くここにおるそに」

 ふみかがうちより遅かったことなんて、今までなかった。

「そうなん? まあ、もうちょっと待ってみようや」

 タカキはいっつも一番最後に合流しよったけぇ、いつもはふみかが先に来ちょる事知らん。やけぇ、さして気にしちょらんみたいやった。

 けどうちは、ちょっと胸が痛んだ。本当やったらタカキはふみかと待ち合わせしちょったん。やけぇほんとなら、うちがひとりで、ふみかとタカキが仲良うしちょるところについて行くことになっちょった。じゃけぇ、ふみかの気持ちは分かる。昨日、ふたりはうちに、ひとりで登校させるわけにはいかんって言うてくれたけど、一緒に登校する方が辛いやんって思うちょった。ふみかとタカキが仲良うしちょおところなんか、見とうなかった。

 じゃけぇふみかも、うちらと一緒に登校しとうないんかもしれん。

「ねぇ、タカキ。もしかしたらふみか、気ぃきかせて先にひとりで行ってしもうたんやないかねぇ」

 ふみかは優しいけぇ、たぶんそうしたんじゃろうと思う。

 胸がチクチクする。けど、しょうがないやん。早うふみかが別の人好きになってくれたらええんじゃけど。

「そうか? まあ、そろそろ行かんと遅刻しそうやしの」

「うん。たぶん教室で会えるいね」

 そう言って歩きだそうとしたうちに、タカキが手を差し出した。

 こ、これって、手をつなごうってこと?

 ドキドキしながら、タカキを見る。タカキもちょこっと顔を赤うしてボソっと言うた。

「学校近くは駄目やけど、この辺あんま人おらんけぇ」

「うん」

 恥ずかしいけど嬉しゅうて、タカキの手に手を重ねる。

 こまい頃は平気で手ぇつないぢょったけど、大きゅうなってからはそんなん出来るわけなかったけぇ、タカキと手をつなぐんは久しぶり。思っちょったより大きゅうて温かい手に、心臓はますますバクバク鳴り出した。


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