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第6話
その2
しおりを挟む正直に言えばオミは、ミナのお父さんとお母さんがスミさんに渡したチョーカーを返しに来たことは、不満でした。
たかがひとりのメイドの為にその家の旦那様と奥様がわざわざ動くなんて、と。
その家になくてはならない、欠かせない使用人ならば稀にそういう事もあるでしょうが、スミさんは見た目は珍しいですが仕事内容は誰とでも替えがきくような、そんな仕事のはずです。
だからオミは、気に入りませんでした。もし旦那様一人でそれを返しに来ていたなら、容姿の珍しいスミさんを囲おうとするエロオヤジと思ったでしょう。
しかし二人でやって来て、どうしてスミさんがこのチョーカーを受け取れないのかを説明され、またオミがどういうつもりでスミさんにそれを贈ったのかを訊かれて、オミは戻って来たチョーカーを受け取らないわけにはいきませんでした。
それでも奥様の言葉は心に残りました。
「知っての通り、わたくし達は身分差など気にしません。ですから貴方が本気なのでしたら、スミさんを口説くのを止めようとは思っていません。けれど身分を笠に無理強いしたり、弄ぶのを目的に口説くのでしたら、スミさんには近づけさせません」
愛を取り、王族の地位を捨てた奥様です。本当にオミがスミさんを好きになれば、反対はしないでしょう。
正直なところオミはまだ、スミさんの事をちょっと可愛いなとは思っていても、それは他の女の子に感じるのと同じくらいの気持ちでした。
だけど人見知りのミナに好かれ、主人である旦那様と奥様にも可愛がられているスミさんに、俄然興味がわいてきました。
その日のお茶会は、和やかな雰囲気で終わりを迎えました。
最初はお嬢様も、三人からどんな風に口説かれ迫られるのだろうとビクビクしていましたが、誕生パーティーの時のような話題は出るものの、特別に何かがあるというわけもなく終わりを迎え、ホッとしました。
「良かったら今度はウチのお茶会に来ないかい?」
「あ、もちろんタカやオミも一緒にね」
イチヤとフツカの二人が、帰り際にそう誘ってきました。
お嬢様は戸惑い、スミさんを見ました。メンバーは今日と変わらないのですが、余所のお宅、しかも王族が開くお茶会となるとやっぱりお嬢様にはハードルが高く感じてしまうのです。
お嬢様の不安そうな視線を受け、スミさんは頭を下げながら口を開きました。
「申し訳ございません。お返事は旦那様と奥様と相談の上、お嬢様の体調も鑑みて致しますのでご容赦下さい」
本当でしたらメイドであるスミさんが返事をするのはいけない事ですが、お嬢様の事を知っているイチヤやフツカは腹を立てる事はありませんでした。
「じゃあ近い内に招待状出すから」
「良い返事、待ってるよ」
ニコニコと手を振り、二人は帰って行きました。
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