春風の中で

みにゃるき しうにゃ

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和解と波乱の兆し

あともう少しで

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 わいわいとお茶とお菓子を堪能した後、みんなで星見の塔のすぐ傍の草原に出た。見晴らしの良いその場所はいつもマインやシガツが魔法の実技をする時に使っている場所だ。

 気持ちが良いだけでなく、誰かがやって来ればすぐに分かる便利な場所でもある。

 先日と同じ様にエルダはシガツに離れた場所でソキを呼ぶようにと指示した。先日と違う点は、もし怖くなければみんなの方が少しずつソキに近づいて良いという点だった。

「ソキ」

 シガツが、彼の友達の精霊の名を呼ぶ。するとみんなの話を聞いていたのだろうか、前回よりはすんなりと彼女は降りて来た。

「大丈夫、かな」

 ソキはシガツの傍らに立ち、みんなの方へと目をやる。するとニコニコ笑いながらキュリンギが彼女に向けて手を振った。それが嬉しくて、ソキもハニカミながら小さく手を振り返した。

「……空を飛んでないと、普通の女の子みたいね」

「でしょ? 多少魔法が使えたってわたしが普通の女の子なように、ソキも空が飛べる風の精霊だけど、普通の女の子と変わらないよ」

 風に乗って、村の女の子とマインの会話が聞こえてきた。

 人間の女の子とそう変わらないと言ってくれるマインの気持ちも嬉しかった。

「どうする? みんな。わたしはソキちゃんとお話したいから行くけど」

 キュリンギさんがみんなに尋ねてくれている。

「良い人だな、キュリンギさん」

 傍で聞いていたシガツが嬉しそうにそう言った。

「うん。そうだね」

 キュリンギさんもマインと同じ様に、ソキが風の精霊と知っても恐れずにいてくれたのだ。マインのように魔法を習っているわけでもないのに。

 ソキも嬉しくて今すぐに彼女に「ありがとう」と伝えに行きたかった。だけど今は動いてはいけない事になっているから、来てくれるのを待ってるしかなかった。

 キュリンギが歩き始めるのを見てマインもその横に付いて歩き出した。キュリンギが率先して動いてくれたのがとても嬉しくて「ありがとうございます」と声をかける。

「あら。お礼を言われる事なんて何もしていないわ」

 にこにこと笑いながらキュリンギは言う。

「でも、キュリンギさんのおかげでみんなも動き出したから」

 ちらりとマインが後ろを見ると、迷いながらもゆっくりと他の子達も動き出していた。もし見習いとはいえ魔法が使えるマインひとりがソキの元へ行ったとしても、みんな付いて来なかったんじゃないだろうか。

「みんなもソキちゃんに興味があるのよ」

 くすりと肩をすくめて笑うと、キュリンギは軽い足取りで風の精霊の元へと向かった。



 マインとキュリンギが来るのを待っていたソキはふと、風に乗って別の誰かがやって来る気配を感じた。

「誰かが来るみたい……」

 傍にいるシガツに告げ、ふわりと宙に浮き上がる。少し高めに舞い上がると遠くを見つめ、再びシガツの元へと降りて来た。

「大人の男の人が二人、こっちに来るよ。ソキ、隠れた方がいいかな」

 ソキの言葉にシガツは彼女が見ていた道へと目をやった。だけどまだ、シガツの目にその人影は捉えられない。

 大人の男性? もしかして師匠の所に魔法の依頼に来たんだろうか。

 シガツがここに来てから星見の塔にやって来たのはキュリンギと子供達だけだった。そして師匠の言葉から、本当は余程の用がない限りここに近寄らないよう村の人達に言ってある事を知っていた。

「そうだな。ソキは隠れてたほうがいいかもしれない」

 その男性達が村の人達ならソキがここにいる事も一応知っている。だがもし他所からやって来た者達だったら、風の精霊がいる事に驚き恐れてしまうかもしれない。

「うん、分かった」

 そう告げるとソキはスイっと空へと舞い上がり、そのままどこかへと飛んで行った。


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