5 / 18
序章
序章:4 " 自己の確立"
しおりを挟む「なーに彰人、顔真っ赤にして。恥ずかしかったん?お子ちゃまだなぁ!」
少しだけ暗い雰囲気を紛らわすように、須田は赤みの取れない顔をする彰人のこと茶化すと
「……っ!だって!」
お子様扱いに憤慨して頬を膨らましながら抗議すると、けらけらと笑い声を上げながら頭を撫でられた
「ちょっと!須田さん、子ども扱いしないでってば!」
抗議後もなお続ける須田に噛み付くようにそういうと、少しだけ驚いた表情を見せた
「そっちの方がいいな」
「え?」
「ん?いやー、彰人ずっと敬語で俺たちと話すからさ、今みたいに砕けた感じで話してくれた方がいいなーって」
先程までの茶化すための笑みではなく、純粋に嬉しそうに笑う須田の顔を見て今度は別の意味で照れて顔が赤くなる
「あの、えっと……がんばりま……頑張るね?」
敬語を使わないは使わないで緊張して何故か疑問系になりつつも返事をすると笑いながら再び撫でてくれた
「……ん、あれ?みんな来てたの?」
話し声に気がついたのか、河野も起き上がって少しだけ寝癖のついた髪のまま眠そうに目を擦っていた
「あれ、起きたの拓哉」
福部が膝から起き上がったパートナーに声をかけると河野は小さくあくびを漏らしながら頷いた
「ふぁ……うん」
少しだけぼんやりとしながら座っている河野に、福部は須田から受け取った飲み物を渡した
「須田達が買ってくれたんだよ」
「あれ……ありがとう、ごめんね」
福部から受け取りながら河野は礼を述べると、早速蓋を開けてお茶を飲み、再び福部の膝に戻っていった
「みんな疲れてそうだし今日はのんびりして解散しよっか」
河野や沢井がCareを受けた直後ということもあり、休ませるためにと福部が提案をするとその場にいた全員が頷いた
沢井も起こしていた体を上條の膝に横にすると、静かに目を閉じた
「しんどかったら一緒に帰るで?」
頭を撫でながら上條がそういうと、沢井は目を閉じたまま膝の上で首を振った
「ん……」
その様子に上條は短く返事をすると、そのままスマホを取り出し枕となっていた
彰人はその様子を見ていて、信頼し合うパートナーがいる羨ましさのようなものを感じた
須田は常に彰人に気を遣ってくれており、何かあればすぐに護ってくれる存在ではあるものの、どうしてもまだ心の底から信頼しているかと言われると引っかかるものがあった
「彰人?」
「なん……なぁに?」
「こっちおいで」
須田から声をかけられて振り向くと、彼は自分の膝を軽く叩きながら手招きした
前みたいに抱っこするのかと思って近寄って行き膝に座ると少しだけ驚いた顔をしたため、意図していたのが違った行動なのだと気が付き慌てて降りようとしたが、一度乗ってしまった体を抱きしめられ動けなくなる
「膝枕俺もしてぇなって思ったけどこっちの方がいいわ」
口角を緩ませながらそういうと彰人の肩に顔を埋めるように抱きしめられ、首に触れる須田の髪の毛がくすぐったくあったがそのまま体重を預けるように目を閉じた
全員が静かに過ごすサークル室には、誰かが持ってきた風鈴の音と一緒に、6月中旬の初夏の風が流れていた
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
女神に冷遇された不遇スキル、実は無限成長の鍵だった
昼から山猫
ファンタジー
女神の加護でスキルを与えられる世界。主人公ラゼルが得たのは“不遇スキル”と揶揄される地味な能力だった。女神自身も「ハズレね」と吐き捨てるほど。しかし、そのスキルを地道に磨くと、なぜかあらゆる魔法や武技を吸収し、無限成長する力に変化。期待されていなかったラゼルは、その才能を見抜いてくれた美女剣士や巫女に助けられ、どん底から成り上がりを果たす。
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる