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ご機嫌な日高兄弟

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「ただいま~。」

皐月との初デートを終えた拓海が家に帰るとすでに静流は帰宅しリビングで寛いでいた。拓海は帰宅途中コンビニで買ったポテチをソファに寝転がる静流に投げ渡すと「今日の礼な。」と自分の部屋に上がって行った。

「キムチ納豆…兄貴分かってるな。」

静流は拓海がくれたポテチを開けると食べながらスマホのデータフォルダを眺める。
画面いっぱいに表示されるのは今日の雪菜とのデート中に撮った隠し撮りや自撮りで、静流はそれをニヤニヤしながらみている。
特に夢中でパフェを食べる姿はお気に入りのようで、待ち受けにすると雪菜にバレるかもしれないと考えてアプリでキーボード背景に設定した。

「次は何処にしようかな~。」

少し先の季節のデート特集が載った雑誌を手にした静流は雪菜の楽しそうな姿を思い浮かべながら雑誌のページをめくる。

暫くするとキッチンから母親に呼ばれ、夕食が出来たので拓海を呼んでくるように言われた静流は仕方なくダルそうに階段を上がった。

「兄貴、ご飯だって。」

「……ノックしろよ。」

ドアを開けると拓海はベッドに寝転がりながら電話をしていた。もちろん相手は皐月で、スマホから僅かにモレきこえる声は楽しそうだ。
夕食の呼びかけを無視すると片付けられ自分で何とかする羽目になるので、拓海は仕方なく皐月との電話を終わらせて静流とリビングに下りた。

ご飯中、拓海と静流はスマホをみながらニヤニヤしていた。母親としてはそんな息子二人を微笑ましいと思いながらも食事中のその態度は面白くないのは当然で、ご飯を食べ終わるまでスマホを見るのを禁止された二人は慌てて皿を空にして自分の部屋に篭った。

「ごめん。ご飯食べ終わったわ。……そんなか?何してた?」

再び電話をし始めた拓海の声は隣の部屋にダダ漏れで、びっくりする程優しい声に静流は恋の偉大さを知った気がした。静流はイヤホンをして音楽を聴きながら雪菜にバレている分の撮影データを送った。
しかし、中々既読がつかず片思い中の幼馴染の苦さに拓海の部屋の方の壁に向かってクッションを投げた。

「あ~あ~、俺も長電話したいな……。」

少しモヤモヤした静流は拓海に八つ当たりしたくなり、イヤホンを取ると隣の部屋に聞こえるように大きめの声で話し始めた。

「あ、兄貴のめっちゃプリティな花柄パンツが俺のに混ざってた!!ピンクの可愛い花柄パンツ返してあげなきゃ~。」

「てめっ!静流!!嘘ばっか言ってんじゃねぇぞ!!」

電話中のはずの拓海が慌てて静流の部屋に乱入すると静流は通話が切られていないスマホに向かってパンツの説明をし、スマホからは皐月の笑い声が響いた。
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