上 下
24 / 60

男子の友情

しおりを挟む
「どこ行く気だよ。」

「たっくんとの語らいの場なんて一つしかないでしょ!」

雪斗に引っ張られながら拓海がたどり着いたのは小さい頃よく遊んでいた公園のベンチだった。

「ここは俺たちの聖地でしょ。」

「そんな大層なものじゃねーだろ。」

「まあまあ、ジュース奢ってあげるから座っていたまえ。」

雪斗は拓海を強引に座らせると目の前の自販機に向かった。
ドリンクを選ぶ雪斗を見ながら諦めたようにため息をつく拓海はボーッとしながら無意識に皐月の事を考えていた。
普段の様子から想像できない程の弱々しい顔、涙を流す姿がずっと頭から離れないのだ。
気がつくとループしている。

「重症だよな……。」

「本当にね。」

独り言のつもりだったがドリンクを持って戻ってきた雪斗に聞こえていたようだ。

「たっくん多分自覚あるでしょ。」

「……何をだよ。」

「皐月ちゃんの事、大好きだよね~。」

「大好きとか言うなよ…恥ずいわ!」

「えーだって事実でしょ?どうするの?黙って見てるだけ~?」

「俺、今の感じ好きなんだよなー。四人でワイワイしてるの楽しいし壊したくねぇ…。けど、お前と話してるだけでイラつくんだよな~。」

「何それ心せまっ!」

雪斗は拓海の様子に余計なお世話だったと思い直し、ベンチから立ち上がる。

「ヤケ食いには付き合うから頑張んなよ~。」

それだけ言うと雪斗は拓海を置いて帰っていった。
拓海はベンチに座ったまま振り返りもしない雪斗に手を振った。
一人残された拓海は雪斗が奢ってくれたドリンクを見つめながら心の中で礼を言いベンチから立ち上がる。

すると、帰ったはずの雪斗が慌てた様子で戻ってきた。

「なんだ?どうしたんだよ。」

「忘れてた!明日、雪菜来るから。」

「はあ?!お前チケット渡したのかよ!!」

「強奪されたんだよ!皐月ちゃんと要さまの事は知らないから一緒にいるの見られちゃダメだよ?」

「無理だろ…。」

すでに文化祭を一緒にまわる予定を組んでいる拓海は嫌そうな顔で雪斗を見た。
拓海の視線に耐えきれない雪斗は視線をそらしながら気まずそうな顔をした。

「お前の身内なんだからちゃんと面倒みろよ。」

「無理。」

「早いだろ……。」

「たっくんのステージの時間は教えてないけどクラスはバレてるからあまり表に出ちゃダメだよ?」

「それこそ無理だろ!」

しおりを挟む

処理中です...