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頑張り屋の雨宮さん

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「ねぇ要~、なんでいつの間にか日高と名前で呼びあってるの?よし、5連鎖きた。」

「拓海を調教したからだよ~。羨ましい?連鎖返しからのプラス3連鎖。」

「べ、別にそんな事ないよ。てか調教ってなに?!あ…」

昼の屋上で皐月と要はゲームの対戦をしながら昼食をとっていた。
本日、拓海は男子チームと昼を共にしている為屋上は皐月と要の貸切だ。
そして要にコテンパンに負けた皐月は戦利品として杏仁豆腐を渡すのであった。

「勝利の味は素晴らしいね~。」

「くっ、次は負けないし!」

「それで、最近一人でカラオケに行きまくった成果はどうなの~?」

要の質問に皐月はスマホの動画をみせて答えた。
カラオケで歌う皐月の歌声は明らかに以前より上手くなっているのが分かる程上達していた。

「私にかかればこんなもんよ!」

「ふ~ん。いっぱい歌ったんだね、フォルダがカラオケ動画だらけ~。」

「勝手に画面かえないでよ。」

膨れる皐月の頬をつつきながら要は皐月の頑張りに心の中で拍手を送った。
皐月のこの一途さを要は羨ましく思っていた。

大体のことが頑張らずにそれなりに出来てしまう要は、勉強もスポーツも俳句さえ努力せずにある程度の結果を出てきた。
挫折なんてもちろん知らない、頑張るという事も必要が無い。
その為か感情の起伏はあまりなく、何となくぼんやりと生きている。
そんな要を楽しませてくれる数少ない存在が雨宮 皐月だった。

「皐月はさ~歌手にでもなるの~?」

「歌手?なんで??」

「頑張ってるから~?」

「そりゃー頑張るわよ、歌うの好きだからね!
要と日高に負けてらんないからね!!
再生回数が伸びないのが私のせいだなんて絶対言われたくないからね!!!」

「皐月は負けず嫌いだな~。
でもそういうところ好きだよ。」

要は皐月の背中から思いっ切り抱きついた。
その勢いに倒れそうになりながら皐月は要の腕を掴み戯れている内に昼休みが終わった。

皐月と要が教室に戻ると機嫌の悪そうな拓海と目が合い放課後部室ではなく屋上に来るように言われた。
何か面倒な事になりそうで、放課後に皐月は逃亡を計る。
しかし、要がしっかり捕獲し屋上に皐月を引っ張って行った。
屋上に着くと拓海の他にもう一人男子がおり、いきなり要に抱きつこうとして要と皐月に撃退された。
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