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日高 拓海は粘着質

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次の日、皐月は普通に登校し自身の机に座ると拓海が皐月に早足近づいてきた。

「お前!なんで来ないんだよ!」

「え?行く訳ないでしょ。」

「いや、普通はこう「ど~しよ~こわぁい」とか言いながらも来るだろ!」

「キモっ。行かないわよ。」

「はぁ?!お前、今日は絶対来いよ!絶対だぞ!!」

拓海はドスドス自分の席に戻っていったが、皐月は聞こえないように「いや、行かないし」と呟く。

そしてそのやりとりは三日続き、四日目の放課後に逃亡に失敗した皐月は拓海に軽音部の部室に引っ張られていった。
その間中、皐月はムスッとした顔で抵抗し続けた。

やっと皐月を部室に連れてこれた拓海は達成感に満ち溢れ、勢いよくドアをあけた。
しかし、中には誰も居なかった。

「ちょっと!こんなとこ連れてきてなんなの?あの動画の事なら好きにすればいいわ。私もう帰るからね。」

「わ~待て!!!雨宮!話だけでも聞いてくれないか!」

「嫌に決まってるでしょ。なんであんな事した奴の話なんか聞かなきゃいけないのよ。」

「それについては謝る!ごめん。ただ脅すつもりは無かったんだ。」

「はぁ?何言ってんの?」

皐月は拓海を睨みつけた。
頭を九十度に下げる拓海は微動だにせず、その様子に皐月は少し冷静になった。
拓海を無視したこの数日の間、結局拓海は皐月の事を言いふらさなかった。
その事は皐月の中の拓海の評価をそこまで落とさなかった大きな要因になっている。

「話…くらいなら聞いてあげる。ずっと無視してたし…」

「マジで?!」

「少しだけだから!」

「マジで雨宮いいやつ!ありがとう!!」

拓海はガッツポーズをしながら喜んでいたが、皐月はそんな拓海を呆れた様子で眺めていた。
とりあえず立ち話も何なので、ふたりは適当に置かれたパイプ椅子に座った。

「手短に話してよね!」

皐月は足を組みふんぞり返って拓海の方をむいた。

「お前…パンツみえそ」

「バカッ!」

皐月は顔を真っ赤にして足を崩した。

「今のはお前が悪いんだろ?!俺何にもしてねぇし。むしろ教えてやったんだから紳士的じゃねーか!
もういいから話を聞いてくれ。
俺は!お前に俺の曲を歌って欲しいんだ。」

「あんたの曲?あんた作曲なんてしてるの?」

「おう。聴いたら絶対歌いたくなるぜ!」

「ふ~ん。まぁ、私そういうの興味ないからいいや。ごめんけど他当たってくれる?」

「はぁ?!待てよ!お前今のは聴いてみてくれる場面だろ?!」

「いや、だから興味無いし。ちゃんと話は聞いたんだからいいでしょ。」

皐月は問答無用で軽音部の部室から出ていった。
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