私のドラゴンライフ

聖 りんご

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私の平和なドラゴンライフ

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マリアが庭でお茶をしているとリンリンと呼び鈴が鳴り、カップをソーサーに置き優雅な足取りで鏡に向かった。

「マリアンヌ様!」

「ライラ、お久しぶりね。あ、呼び捨ては失礼だったかしら?」

「からかわないで下さい!私は隣国に移りマリアンヌ様と過ごす予定でおりましたのに……。」

ライラの落ち込む様子にマリアはクスリと笑いを漏らした。
マリアが帰って来てから二ヶ月程過ぎ、ドラゴン狩りも無くなりとても平和な日々を過ごしていた。
グラデーン公爵は王を引きずり下ろし、王国から公国として組織を組み換え大忙しのようだ。ライラも公爵令嬢として寝回しや情報操作で忙しくマリアとの鏡越しの茶会をしている余裕は無かった。二ヶ月ぶりに息を抜けるこの瞬間をどんなに待ち焦がれていた事だろう。

「そういえば、マリアンヌ様はドラゴンの国の国交大使をされるとか。」

「流石ライラね。良い耳を持っているわ。」

ドラゴン達は国というものに全く興味は無かったのだが、各国のトップがドラゴンと対等でありたいと提案してきた。
別に今までと特に変わる事も無く、人間の都合で少し呼び方が変わっただけなのでドラゴン達は好きにすると良いと返事し国として成った訳だが、ドラゴンに近しい人間がマリアしかいないので必然的に窓口になり大層な役職まで付いたのが現実だ。

「まあ、これもお世話の一つね。今回の件、慰謝料の明細は届いたかしら。」

「はい、しかと受け取りました。ドラゴン様方の御要望の品ですので全て御用意致しますと父が言っておりました。」

「用意できたら引取りに行くので教えて下さいね。その時はライラの好きなケーキを手土産に持っていきましょう。」

「では私はマリアンヌ様のお気に入りの紅茶を用意してお待ちしております。」

鏡越しのお茶会は和やかに終わり、マリアは立ち上がった。
この後の予定は漆黒の家の片付けなのできちんと準備しなくてはならない。持ち物の確認をしていると庭先でドゴーンと大きな音がした。地響きで家の中の物がガタガタ音をたて慌てた琥珀の声も聞こえる。
どうやら出かける前に片付けと説教が必要になったようだ。

マリアはため息をつき外の有様を確認に行った。
翠に潰される花壇、抉れた地面、狼狽える琥珀、毎回毎回よく荒らしてくれるものだ。

「琥珀さん、翠さん、この惨状はどういう事でしょうか。」

二匹のドラゴンはマリアの前でピンと背筋をのばしきちんと正座した。


FIN
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