私のドラゴンライフ

聖 りんご

文字の大きさ
上 下
11 / 23

ブーム

しおりを挟む
紅の手伝いを終えたマリアは後の用事も無いので家に戻る事にした。マリアの家が見え初めると玄関前に緑色のドラゴンの姿があった。

マリアは翠に暇つぶしを渡していたのを思い出し、人間の遊戯にハマったのかと少しほんわかした気持ちで緑色のドラゴンに近づく。しかし、自分が翠だと思っていたものはブロックでつくられたドラゴンで、本物の翠の姿が無い。

「これは……凄いけど邪魔ね。」

マリアはブロックのドラゴンを収納すると今度こそ家に入ろうとしたが、何かがおかしい。違和感の正体が分からず悩んでいると、家の横からひょっこりと人化した翠が姿を現した。

「あ、マリアお帰り!!」

「ただいま戻りました。翠さん玄関先にブロックの置物を放置しないで下さい、とても邪魔でした。」

「力作だったのでだろ!!一番にマリアに見せたかったんだ!」

得意気に笑う翠にマリアは怒る気も無くなってしまった。しかしそこでふと先程感じた違和感の正体に気づくと、マリアの表情は凍りついた。

「翠さん…私の家のドアの鍵穴…形が変わってるのですが……。」

「凄いだろ!!ブロックで鍵穴と鍵つくったんだ!」

「今すぐ戻して下さい。」

マリアの怒気に恐怖し一瞬で鍵穴を元に戻した翠はそのまま逃亡を計ろうとするがマリアがそんな事を許す訳も無く、正座をさせられ一時間みっちり怒られた。

「他人の物は勝手に改造しない。良かれと思ってやっても迷惑な事が多いので、宜しいですね。」

「ハイ……。」

お説教が終わるとマリアは翠の住む巨大樹まで共に行き、翠が作ったブロックのドラゴンを入口前に置いた。

「やっぱりカッコイイな俺!!」

自画自賛しながらブロックのドラゴンを舐め回す翠を放ってマリアは自分の家に戻ると、お茶を入れ一息ついた。
紅のコレクションの王冠を見たせいか少しナーバスな気持ちになっているマリアはお茶を飲みながら昔の事を思い出していた。

別に戻らりたいと思い始めた訳では無いが、自分の生まれた国がどうなっているかは気になったので少し調べようと考えているとドアをノックする音が聞こえた。
マリアが玄関を開けると、そこには漆黒が立っていた。

「真っ黒なブロックが欲しいのだが。」

「真っ黒な…ブロックですか…?」

「ああ、翠が家に来て緑のブロックで作ったドラゴンを自慢するので見に行ってきた。気に入ったので作るように言うとブロックが無いからマリアに貰うように言われた。」

「なるほど……漆黒さん、残念ながらブロックに黒はありません。」

漆黒は目を見開きショックを受けた様子でフラフラと去って行った。すると、今度はドスンドスンと大きな音と共に翠がマリアを呼ぶ声がした。

「マリア~!なんで黒のブロックはないの?!俺のドラゴンが黒に染められちゃったよ~!!!」

泣きながら話す翠にマリアは深いため息をついた。
この里は感傷という言葉とは縁遠かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

処理中です...