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ブーム
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紅の手伝いを終えたマリアは後の用事も無いので家に戻る事にした。マリアの家が見え初めると玄関前に緑色のドラゴンの姿があった。
マリアは翠に暇つぶしを渡していたのを思い出し、人間の遊戯にハマったのかと少しほんわかした気持ちで緑色のドラゴンに近づく。しかし、自分が翠だと思っていたものはブロックでつくられたドラゴンで、本物の翠の姿が無い。
「これは……凄いけど邪魔ね。」
マリアはブロックのドラゴンを収納すると今度こそ家に入ろうとしたが、何かがおかしい。違和感の正体が分からず悩んでいると、家の横からひょっこりと人化した翠が姿を現した。
「あ、マリアお帰り!!」
「ただいま戻りました。翠さん玄関先にブロックの置物を放置しないで下さい、とても邪魔でした。」
「力作だったのでだろ!!一番にマリアに見せたかったんだ!」
得意気に笑う翠にマリアは怒る気も無くなってしまった。しかしそこでふと先程感じた違和感の正体に気づくと、マリアの表情は凍りついた。
「翠さん…私の家のドアの鍵穴…形が変わってるのですが……。」
「凄いだろ!!ブロックで鍵穴と鍵つくったんだ!」
「今すぐ戻して下さい。」
マリアの怒気に恐怖し一瞬で鍵穴を元に戻した翠はそのまま逃亡を計ろうとするがマリアがそんな事を許す訳も無く、正座をさせられ一時間みっちり怒られた。
「他人の物は勝手に改造しない。良かれと思ってやっても迷惑な事が多いので、宜しいですね。」
「ハイ……。」
お説教が終わるとマリアは翠の住む巨大樹まで共に行き、翠が作ったブロックのドラゴンを入口前に置いた。
「やっぱりカッコイイな俺!!」
自画自賛しながらブロックのドラゴンを舐め回す翠を放ってマリアは自分の家に戻ると、お茶を入れ一息ついた。
紅のコレクションの王冠を見たせいか少しナーバスな気持ちになっているマリアはお茶を飲みながら昔の事を思い出していた。
別に戻らりたいと思い始めた訳では無いが、自分の生まれた国がどうなっているかは気になったので少し調べようと考えているとドアをノックする音が聞こえた。
マリアが玄関を開けると、そこには漆黒が立っていた。
「真っ黒なブロックが欲しいのだが。」
「真っ黒な…ブロックですか…?」
「ああ、翠が家に来て緑のブロックで作ったドラゴンを自慢するので見に行ってきた。気に入ったので作るように言うとブロックが無いからマリアに貰うように言われた。」
「なるほど……漆黒さん、残念ながらブロックに黒はありません。」
漆黒は目を見開きショックを受けた様子でフラフラと去って行った。すると、今度はドスンドスンと大きな音と共に翠がマリアを呼ぶ声がした。
「マリア~!なんで黒のブロックはないの?!俺のドラゴンが黒に染められちゃったよ~!!!」
泣きながら話す翠にマリアは深いため息をついた。
この里は感傷という言葉とは縁遠かった。
マリアは翠に暇つぶしを渡していたのを思い出し、人間の遊戯にハマったのかと少しほんわかした気持ちで緑色のドラゴンに近づく。しかし、自分が翠だと思っていたものはブロックでつくられたドラゴンで、本物の翠の姿が無い。
「これは……凄いけど邪魔ね。」
マリアはブロックのドラゴンを収納すると今度こそ家に入ろうとしたが、何かがおかしい。違和感の正体が分からず悩んでいると、家の横からひょっこりと人化した翠が姿を現した。
「あ、マリアお帰り!!」
「ただいま戻りました。翠さん玄関先にブロックの置物を放置しないで下さい、とても邪魔でした。」
「力作だったのでだろ!!一番にマリアに見せたかったんだ!」
得意気に笑う翠にマリアは怒る気も無くなってしまった。しかしそこでふと先程感じた違和感の正体に気づくと、マリアの表情は凍りついた。
「翠さん…私の家のドアの鍵穴…形が変わってるのですが……。」
「凄いだろ!!ブロックで鍵穴と鍵つくったんだ!」
「今すぐ戻して下さい。」
マリアの怒気に恐怖し一瞬で鍵穴を元に戻した翠はそのまま逃亡を計ろうとするがマリアがそんな事を許す訳も無く、正座をさせられ一時間みっちり怒られた。
「他人の物は勝手に改造しない。良かれと思ってやっても迷惑な事が多いので、宜しいですね。」
「ハイ……。」
お説教が終わるとマリアは翠の住む巨大樹まで共に行き、翠が作ったブロックのドラゴンを入口前に置いた。
「やっぱりカッコイイな俺!!」
自画自賛しながらブロックのドラゴンを舐め回す翠を放ってマリアは自分の家に戻ると、お茶を入れ一息ついた。
紅のコレクションの王冠を見たせいか少しナーバスな気持ちになっているマリアはお茶を飲みながら昔の事を思い出していた。
別に戻らりたいと思い始めた訳では無いが、自分の生まれた国がどうなっているかは気になったので少し調べようと考えているとドアをノックする音が聞こえた。
マリアが玄関を開けると、そこには漆黒が立っていた。
「真っ黒なブロックが欲しいのだが。」
「真っ黒な…ブロックですか…?」
「ああ、翠が家に来て緑のブロックで作ったドラゴンを自慢するので見に行ってきた。気に入ったので作るように言うとブロックが無いからマリアに貰うように言われた。」
「なるほど……漆黒さん、残念ながらブロックに黒はありません。」
漆黒は目を見開きショックを受けた様子でフラフラと去って行った。すると、今度はドスンドスンと大きな音と共に翠がマリアを呼ぶ声がした。
「マリア~!なんで黒のブロックはないの?!俺のドラゴンが黒に染められちゃったよ~!!!」
泣きながら話す翠にマリアは深いため息をついた。
この里は感傷という言葉とは縁遠かった。
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