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逃亡者は国王陛下
逃亡者の世界の裏側で
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話は王がテンダムとして別世界に行き野党に囲まれている頃、プリマが一息ついていた時に遡る。
館のベルが鳴りジルが扉を開けると一人の青年が立っていた。
「私、テンダム国王太子のアインと申します。我が国の王が魔女様の館をお騒がせており申し訳ございません。」
アインは丁寧に頭を下げた。
『なるほど。どうぞ中へお入りください。』
ジルはアインを屋敷に招き入れた。
そして、応接室のドアをノックしプリマに来客を伝えると返事が返ってきてからドアを開けた。
そこには再び仮面をつけ、優雅にお茶を飲むプリマがいた。
「お初にお目にかかれてうれしく思います。テンダム国王太子のアインと申します。この度は御迷惑をお掛けしまして申し訳ございません。」
『そうね……謝罪は受けましょう。』
「ありがとうございます。御迷惑をおかけしたお詫びとしてこちらをお持ちしました。どうかお納め下さい。」
アインは懐に手を入れ包みを取り出すと、それを丁寧に解いた。
中に入っていたのは手のひらサイズの血の様に赤いルビーだった。
『それは私には必要ないから受け取りません。』
「では、どのような物ならお受け取りいただけるのでしょうか。」
『そうね……』
プリマは少し考える素振りをしてジルをみる。
ジルは一礼してその場を去って行った。
『一つ私のお願いをきいてくれないかしら?』
「私などにできる事でしたら何事でも。」
『貴方のところで面倒をみて欲しい子たちがいるの。』
プリマがそう言い終わるとドアがノックされた。
入室を促すと入って来たのはミラとアランだった。
『この二人面倒をみてほしいの。』
「なるほど……承知致しました。」
『あら?素性は聞かないの?』
「噂は耳に入っています。それに魔女様の頼みを断るなんて恐れ多い事は致しません。」
『そう……。では、頼みますね。』
「かしこまりました。ところで魔女様、テンダム国王の身柄についてお話したく存じます。」
『そうね…ここには居ないわ。帰ってくることも無いし。』
その言葉にアインは少し焦りをみせた。
そしてプリマに丁寧に頭を下げて懇願した。
「どうか、テンダム国王を御返しください。」
『理由を聞いても?』
「私は王に反旗を翻した身です。国民は王の圧政に苦しみながらも私に力を貸してくれました。王の身柄を国民の前に晒し罪を裁かなくては皆が納得致しません。」
『貴方は……まともなようですわね。』
プリマは仮面を外しアインに笑顔を向けた。
アインはその美しさに一瞬心を奪われたが、自分を叱咤し真剣な顔でプリマを見つめた。
『貴方の国の王は今、この世界にいません。契約により別世界へと転送さしました。』
「別…世界……ですか……」
『ええ、そうです。これがその契約書です。』
ジルは契約書をアインに手渡した。
アインは内容を確認して愚かな父親の行動に少しため息をもらした。
「こちらの契約書には【今までの人生は此方の世界で本の中に封じられる。】とありますが、これについて詳しくお話いただく事はできるのでしょうか。」
『ええ、もちろんです。』
プリマがジルをみるとジルがプリマに一冊の本を手渡した。
黒く、辞書の様に厚いその本を手にしたプリマは表紙をアインにみせる。
そこには自身の父親の名前があった。
館のベルが鳴りジルが扉を開けると一人の青年が立っていた。
「私、テンダム国王太子のアインと申します。我が国の王が魔女様の館をお騒がせており申し訳ございません。」
アインは丁寧に頭を下げた。
『なるほど。どうぞ中へお入りください。』
ジルはアインを屋敷に招き入れた。
そして、応接室のドアをノックしプリマに来客を伝えると返事が返ってきてからドアを開けた。
そこには再び仮面をつけ、優雅にお茶を飲むプリマがいた。
「お初にお目にかかれてうれしく思います。テンダム国王太子のアインと申します。この度は御迷惑をお掛けしまして申し訳ございません。」
『そうね……謝罪は受けましょう。』
「ありがとうございます。御迷惑をおかけしたお詫びとしてこちらをお持ちしました。どうかお納め下さい。」
アインは懐に手を入れ包みを取り出すと、それを丁寧に解いた。
中に入っていたのは手のひらサイズの血の様に赤いルビーだった。
『それは私には必要ないから受け取りません。』
「では、どのような物ならお受け取りいただけるのでしょうか。」
『そうね……』
プリマは少し考える素振りをしてジルをみる。
ジルは一礼してその場を去って行った。
『一つ私のお願いをきいてくれないかしら?』
「私などにできる事でしたら何事でも。」
『貴方のところで面倒をみて欲しい子たちがいるの。』
プリマがそう言い終わるとドアがノックされた。
入室を促すと入って来たのはミラとアランだった。
『この二人面倒をみてほしいの。』
「なるほど……承知致しました。」
『あら?素性は聞かないの?』
「噂は耳に入っています。それに魔女様の頼みを断るなんて恐れ多い事は致しません。」
『そう……。では、頼みますね。』
「かしこまりました。ところで魔女様、テンダム国王の身柄についてお話したく存じます。」
『そうね…ここには居ないわ。帰ってくることも無いし。』
その言葉にアインは少し焦りをみせた。
そしてプリマに丁寧に頭を下げて懇願した。
「どうか、テンダム国王を御返しください。」
『理由を聞いても?』
「私は王に反旗を翻した身です。国民は王の圧政に苦しみながらも私に力を貸してくれました。王の身柄を国民の前に晒し罪を裁かなくては皆が納得致しません。」
『貴方は……まともなようですわね。』
プリマは仮面を外しアインに笑顔を向けた。
アインはその美しさに一瞬心を奪われたが、自分を叱咤し真剣な顔でプリマを見つめた。
『貴方の国の王は今、この世界にいません。契約により別世界へと転送さしました。』
「別…世界……ですか……」
『ええ、そうです。これがその契約書です。』
ジルは契約書をアインに手渡した。
アインは内容を確認して愚かな父親の行動に少しため息をもらした。
「こちらの契約書には【今までの人生は此方の世界で本の中に封じられる。】とありますが、これについて詳しくお話いただく事はできるのでしょうか。」
『ええ、もちろんです。』
プリマがジルをみるとジルがプリマに一冊の本を手渡した。
黒く、辞書の様に厚いその本を手にしたプリマは表紙をアインにみせる。
そこには自身の父親の名前があった。
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