迷いの森

聖 りんご

文字の大きさ
上 下
21 / 48
逃亡者は国王陛下

逃亡者の世界の裏側で

しおりを挟む
話は王がテンダムとして別世界に行き野党に囲まれている頃、プリマが一息ついていた時に遡る。

館のベルが鳴りジルが扉を開けると一人の青年が立っていた。

「私、テンダム国王太子のアインと申します。我が国の王が魔女様の館をお騒がせており申し訳ございません。」

アインは丁寧に頭を下げた。

『なるほど。どうぞ中へお入りください。』

ジルはアインを屋敷に招き入れた。
そして、応接室のドアをノックしプリマに来客を伝えると返事が返ってきてからドアを開けた。

そこには再び仮面をつけ、優雅にお茶を飲むプリマがいた。

「お初にお目にかかれてうれしく思います。テンダム国王太子のアインと申します。この度は御迷惑をお掛けしまして申し訳ございません。」

『そうね……謝罪は受けましょう。』

「ありがとうございます。御迷惑をおかけしたお詫びとしてこちらをお持ちしました。どうかお納め下さい。」

アインは懐に手を入れ包みを取り出すと、それを丁寧に解いた。
中に入っていたのは手のひらサイズの血の様に赤いルビーだった。
 
『それは私には必要ないから受け取りません。』

「では、どのような物ならお受け取りいただけるのでしょうか。」

『そうね……』

プリマは少し考える素振りをしてジルをみる。
ジルは一礼してその場を去って行った。

『一つ私のお願いをきいてくれないかしら?』

「私などにできる事でしたら何事でも。」

『貴方のところで面倒をみて欲しい子たちがいるの。』

プリマがそう言い終わるとドアがノックされた。
入室を促すと入って来たのはミラとアランだった。

『この二人面倒をみてほしいの。』

「なるほど……承知致しました。」

『あら?素性は聞かないの?』

「噂は耳に入っています。それに魔女様の頼みを断るなんて恐れ多い事は致しません。」

『そう……。では、頼みますね。』

「かしこまりました。ところで魔女様、テンダム国王の身柄についてお話したく存じます。」

『そうね…ここには居ないわ。帰ってくることも無いし。』

その言葉にアインは少し焦りをみせた。  
そしてプリマに丁寧に頭を下げて懇願した。

「どうか、テンダム国王を御返しください。」

『理由を聞いても?』

「私は王に反旗を翻した身です。国民は王の圧政に苦しみながらも私に力を貸してくれました。王の身柄を国民の前に晒し罪を裁かなくては皆が納得致しません。」

『貴方は……まともなようですわね。』

プリマは仮面を外しアインに笑顔を向けた。

アインはその美しさに一瞬心を奪われたが、自分を叱咤し真剣な顔でプリマを見つめた。

『貴方の国の王は今、この世界にいません。契約により別世界へと転送さしました。』

「別…世界……ですか……」

『ええ、そうです。これがその契約書です。』

ジルは契約書をアインに手渡した。
アインは内容を確認して愚かな父親の行動に少しため息をもらした。

「こちらの契約書には【今までの人生は此方の世界で本の中に封じられる。】とありますが、これについて詳しくお話いただく事はできるのでしょうか。」

『ええ、もちろんです。』

プリマがジルをみるとジルがプリマに一冊の本を手渡した。
黒く、辞書の様に厚いその本を手にしたプリマは表紙をアインにみせる。
そこには自身の父親の名前があった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

私のドラゴンライフ

聖 りんご
ファンタジー
私、マリアのお仕事はドラゴン達のお世話をする事です。 掃除、食事、お風呂の手伝い、ケンカの仲裁も私のお仕事。 ドラゴンってとても可愛いのに皆怖がるから不思議です。 ※水曜日更新になります。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

異世界の片隅で、世界神にもらったチート能力のせいで精神病んでます……。

ねぎ(ポン酢)
ファンタジー
異世界に飛ばされ、お約束通りチート能力を賜ったヨド。しかしその能力が嫌で嫌でしかたない。異世界に来て何だかんだ言いながらも面倒を見てくれた浮浪児ハックにその能力を譲渡する為に霊峰の神殿に向け旅をしているのだが、行く先々で彼の能力は必要とされる……。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...