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捨てられた少女
少女は出し抜かれ不服である
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男爵領に着くと殺伐としていた。
心なしか店も少なくなった気がする。
屋敷の近くの広場に差し掛かるといつもとは別の賑わいをみせていた。
人々は広場に簡易の舞台を作り、その舞台を取り囲むようにたくさんの人が集まっている。
『良いタイミングで到着したみたいね。』
「プリマ様はご存知だったのですか?」
『ジルに報告させていたから知っていたわ。だからワザワザ出向いたのよ。』
どうやらこの舞台は男爵家を裁くための場のようで、舞台上では檻に入れられた一家が喚いていた。
そして丁度良い事に、ミラを嵌めた役人の一人が領民側にいるので男爵を裏切ったのであろう。
「これに割って入るの気が引けますね。」
『こういう時の為に彼を連れてきたのよ。』
プリマは同行者に視線で出番である事を告げた。
彼はそれに黙って頷き広場に響く大きな声で叫んだ。
「善良なる民たちよ。私はこの国の第二王子である。この騒ぎの代表者は名乗りでよ。」
その言葉に数十秒の静寂がうまれ、舞台の上から男が一人降りてきて頭を下げた。
「アスランと申します。」
「面をあげよ。アスラン、此度の騒ぎは何事か。」
「壇上におります男爵一家の暴挙に耐え兼ねた者がここに集まっております。
私は役人をしておりますので男爵家に裁きを与えるためにおります。」
「役人。そうであったか。では男爵家の罪とは何か。」
「男爵たちは高い税を払わせ搾取し、気に入らなければ暴力をふるう最低の人間です。」
「男爵家には数日前に追放された者がいたようだが、その者は裁かれないのか。」
「その者は横領と不貞の罪により追放され行方がわかりません。もし発見しましたらまだ問われていない罪があるか調べなくてはなりません。」
「では、調べる前に私のお話を聞いてくださいませんか?」
アスランと第二王子の話にタイミングよく割り込んだミラはアスランに微笑み、壇上へと歩いていく。
アスランはその美しさに見惚れていた。
王子もミラの後に続いて壇上へと上がる。
壇上では男爵家の面々がミラを凝視して顔を青ざめた。
「お久しぶりにございます。元家族の皆様。お元気そうで何よりでございます。」
「元気なもんか!早く私を助けろ。このノロマ!」
「そうです。家に置いてやった恩も忘れて!早くここから出すように言いなさい!!」
「何を呑気に挨拶をしている!お前の夫がこんな酷い目に遭ってるんだぞ!!」
「ちょっと!早く助けなさいよ!!そんな綺麗な格好生意気よ!早く私に差し出しなさい!!」
口々にミラを罵りながら助けを求める一家にミラは覚めた眼差しを向けた。
「なぜ私がその様な事をする必要があるのですか?私は真実を話す為にこの場に来ました。
私は、男爵に無実の罪をきせられて追放されました。証拠はここにあります。」
ミラは証拠資料を王子に渡し、それに眼を通した王子は眉間にシワを寄せた。
「今、ミラ嬢より提出された書類は男爵家の裏帳簿と脱税、それに関与した者が載ったものだった。そこには、男爵とその婦人、役人のアスランの名前もある。」
その言葉を聞いたアスランは全力で逃げようとしたが、領民たちに囲まれ取り押さえられた。
「男爵とアスランの身は私が預かり必ず裁こう。その間、この領地は王族預かりとし、後に新しい領主を遣わす。この場は解散せよ。」
領民たちは渋々広間から撤収していった。
今までされてきた仕打ちを思うと到底納得できる結末ではないが、王族に逆らうなどできるはずがない。
ミラも不完全燃焼で納得できずにいると、今まで静観していたプリマが『ぬるい。』と一言呟いた。
心なしか店も少なくなった気がする。
屋敷の近くの広場に差し掛かるといつもとは別の賑わいをみせていた。
人々は広場に簡易の舞台を作り、その舞台を取り囲むようにたくさんの人が集まっている。
『良いタイミングで到着したみたいね。』
「プリマ様はご存知だったのですか?」
『ジルに報告させていたから知っていたわ。だからワザワザ出向いたのよ。』
どうやらこの舞台は男爵家を裁くための場のようで、舞台上では檻に入れられた一家が喚いていた。
そして丁度良い事に、ミラを嵌めた役人の一人が領民側にいるので男爵を裏切ったのであろう。
「これに割って入るの気が引けますね。」
『こういう時の為に彼を連れてきたのよ。』
プリマは同行者に視線で出番である事を告げた。
彼はそれに黙って頷き広場に響く大きな声で叫んだ。
「善良なる民たちよ。私はこの国の第二王子である。この騒ぎの代表者は名乗りでよ。」
その言葉に数十秒の静寂がうまれ、舞台の上から男が一人降りてきて頭を下げた。
「アスランと申します。」
「面をあげよ。アスラン、此度の騒ぎは何事か。」
「壇上におります男爵一家の暴挙に耐え兼ねた者がここに集まっております。
私は役人をしておりますので男爵家に裁きを与えるためにおります。」
「役人。そうであったか。では男爵家の罪とは何か。」
「男爵たちは高い税を払わせ搾取し、気に入らなければ暴力をふるう最低の人間です。」
「男爵家には数日前に追放された者がいたようだが、その者は裁かれないのか。」
「その者は横領と不貞の罪により追放され行方がわかりません。もし発見しましたらまだ問われていない罪があるか調べなくてはなりません。」
「では、調べる前に私のお話を聞いてくださいませんか?」
アスランと第二王子の話にタイミングよく割り込んだミラはアスランに微笑み、壇上へと歩いていく。
アスランはその美しさに見惚れていた。
王子もミラの後に続いて壇上へと上がる。
壇上では男爵家の面々がミラを凝視して顔を青ざめた。
「お久しぶりにございます。元家族の皆様。お元気そうで何よりでございます。」
「元気なもんか!早く私を助けろ。このノロマ!」
「そうです。家に置いてやった恩も忘れて!早くここから出すように言いなさい!!」
「何を呑気に挨拶をしている!お前の夫がこんな酷い目に遭ってるんだぞ!!」
「ちょっと!早く助けなさいよ!!そんな綺麗な格好生意気よ!早く私に差し出しなさい!!」
口々にミラを罵りながら助けを求める一家にミラは覚めた眼差しを向けた。
「なぜ私がその様な事をする必要があるのですか?私は真実を話す為にこの場に来ました。
私は、男爵に無実の罪をきせられて追放されました。証拠はここにあります。」
ミラは証拠資料を王子に渡し、それに眼を通した王子は眉間にシワを寄せた。
「今、ミラ嬢より提出された書類は男爵家の裏帳簿と脱税、それに関与した者が載ったものだった。そこには、男爵とその婦人、役人のアスランの名前もある。」
その言葉を聞いたアスランは全力で逃げようとしたが、領民たちに囲まれ取り押さえられた。
「男爵とアスランの身は私が預かり必ず裁こう。その間、この領地は王族預かりとし、後に新しい領主を遣わす。この場は解散せよ。」
領民たちは渋々広間から撤収していった。
今までされてきた仕打ちを思うと到底納得できる結末ではないが、王族に逆らうなどできるはずがない。
ミラも不完全燃焼で納得できずにいると、今まで静観していたプリマが『ぬるい。』と一言呟いた。
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