迷いの森

聖 りんご

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捨てられた少女

捨てられた少女

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目の前が怒りで真っ赤に染まった。
しかし何もできないようにされて吐き出すことができなかった。

信じられない裏切りだった。

私の居場所が無くなった家…サロンで談笑する主たちの声を私は忘れる事はないだろう。

出ていく私なんて一欠片も気にされない。
玄関の扉を開けた。

空は雲ひとつない晴天なのに私の心にその暖かさは届かない。



歩き始めた。

見送りしてくれる使用人さえいない

私自身望んではいないけれど…

門番も置物のように私を無視する



広場に出るといつもと何も変わらない騒がしさに少し複雑な気持ちになる

広場のベンチに座ると少し肩の力が抜けて気持ちが前に向いた。

これからの事なんて何も決まってない。
だけど、何としても生きると強く思ったらベンチから自然と立ち上がった。

今まで行ったことのない方角へ歩きだした。

知らない景色になっていく…

小さな家ばかりになり整備されたレンガの道が土になる。

家がまばらになり整備されていないゴツゴツした道になった。

しばらくすると履いていた靴のヒールが片方取れてしまったが、替えの靴もないのでもう片方の靴のヒール部分を壊してそのまま歩き始めた。

周りが少し寂れてきた頃、太陽も傾いてきたので夜を過ごす場所を探す事にした。
しかし、宿に泊まるお金もないし路上は強姦や人攫いが怖い。
どうするか悩んでいると立ち入り禁止の立て札がある森が目に入った。
ここしかないと思い人目を気にしながら立ち入った森は今のところ危険なようには思えない。
けれど、しばらく歩いてみたが良い場所には巡り会えず
そうしている内に身体のエネルギーが切れたのか地面の揺れる感覚と共に倒れこんでしまった。
食べ物を調達しなかった自分に後悔しかない。
疲れきっているからか土の上なのに激しい睡魔が襲ってきたが何だかもうどうでも良くて意識を手放してしまった。

微かな足音を聞いた気がした…  






『ごはん…』
空腹で倒れた私は美味しそうな匂いで覚醒した。

眼を開けると見慣れない天井がある。
そういえば今私はフカフカのお布団に包まれている。

頭が急速に覚醒していき勢いよく起き上がった。
辺りを見渡すがどこを見ても一級品の家具、絨毯、カーテン…貴族の寝室にしかみえない
たった今まで私が寝かされていたであろうフカフカのベッドも高そうだ。

『私…売られた…?いや。拐われた…?』

(コンコン)

ドアがノックされて身なりの良い青年が入ってきた。

「気が付きましたか」
『あの…』
「まずはスープでもどうぞ。私は主人を呼んでまいります」

そう言うと青年はドアを閉めて立ち去った。

主人を呼びに行くと言っていたからには彼は執事か従僕なのだろう。
問題は呼びに言った主人の方だ。
きっと油ギッシュでボヨンボヨンの変態が来るに違いない。
逃げなくては行けないが、とりあえずお腹が空いているのでスープを飲む事にした。
スプーンを取り、いざ飲もうとした瞬間、またドアがノックされた。
溜め息と共につい『はやくない…』と呟いてしまった。
しかしドアを開けて入って来た人物を見て私は持っていたスプーンを落としてしまった。

変態親父が入ってくるはずのドアから入って来たのは輝く美貌の女性だった。
視線を外す事も動く事もできずにただ『綺麗』とだけが私から発せられた。

「まぁ。素直な子は大好きよ。」

「私はプリマ。この館の主よ。あなたを助けたのはジル。私の執事みたいなものよ。
あなた、道で倒れていたみたい。偶然見つけたジルがここに連れてきたの。」

プリマが話始めてやっと意識が自分にかえってきた。

『あの…助けていただき、ありがとうございます。』

慌ててジルへのお礼を述べると軽く会釈してくれた。

『私はミラと申します。私のような者にこんな手厚くお世話していただいてありがとうございます。あの…早々に立ち去りますので…』

「あら、お気になさらないで。まだ休んでいた方が良いわ。それに外は真っ暗よ?女の子を一人で放り出せないわ。それに…」

彼女の視線が私の顔からお腹に移ったので私は自身のお腹をみる。
するとそれが合図だったかのようにお腹が鳴いたので、私は顔を真っ赤にしうつ向いた。

「今から丁度夕食なの。一緒にいかが?」

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