リンバース公爵領の教会で

聖 りんご

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愛しき人を待つ乙女

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最近、教会には毎日祈りに来る少女がいました。

それは、公爵家の近くで魔法の練習をしていた少女で、毎日来ては真剣な様子で一時間程祈り帰って行きます。

司祭は少し心配になり声をかけることにしました。

「こんにちは。熱心に祈りを捧げていらっしゃいますね。」

「こんにちは。願掛けみたいなものです。」

「良ければ、お話してみませんか?」

「そう、ですね……」

二人は懺悔室に入り、司祭が小窓を開いた。

「神の声に心を開いてください。神に貴女の心にある想いを聞いて頂きましょう。」

「私は、今愛しい人と離れ離れになっています。私が想いを伝えたばかりにあの人は私を置いて旅立ちました。」

(なるほど、恋人の帰りをお待ちでしたか。)

「彼はとても格好良くて、優秀で、怖い人でした…」

(もしや、虐待に悩んで……?)
司祭は少女の言い様が少し気になりまさしたが、ここで聞き返してはいけないと堪えました。

「でも、私はそんな彼が好きです。私の無くしたリボンと同じ物を探してプレゼントしてくれたり、鞭で叩いてくれって言ったり、私を盗撮して写真集をつくっていたり……とても怖い一面もあるけど、私はそんな日常が心地よかったんです。」

(語る口調は穏やかなのに内容にツッコミ所が多々ありますね……)

「そんな彼との日常を私の一言が壊してしまった事に、私は後悔をしてます。彼は待っていてと言いましたが、いつ帰ってくるか分からない、いつもそばに居たのに今は子の指輪だけなんです。ずっと側にいて欲しかっただけなのに……」

(なんて健気な!それにしても…………)

「神はきっと貴女たちを見守っています。離れて辛いその心は神が与えた試練なのです。それを乗り越え時、きっと大きな幸せが貴女たちに訪れるでしょう。」

「ありがとうございます。お話を聞いていただいて少し楽になりました。」

「最後に、祈りましょう。」

「神よ、そのひろきお心で私たちの行末をどうか見守って下さい。」

「父と子と聖霊の御名において、貴女たちに幸多き事を。」

「アーメン」

「……これは私の一人言ですが、先日、一人の青年がここに来ました。彼は、愛しく想う女性の為に旅立つ決意を神に示して行きました。
彼はきっと戻ってきて想いをとげると私は思って居ます。」

「ありがとう…ございます!」

少女は涙を流しながらも輝く笑顔で教会を後にしました。
少女を見送った後に司祭は神の像に祈らりを捧げました。

「神よ、未熟なるこの身をどうかお許し下さい。私は彼女たちの幸せを願わずにはいられません。
彼女たちだけではありませんね…どうか、迷える者たちが幸せをつかめますように。」

司祭は祈りを終えるとミサに向かいました。


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