リンバース公爵領の教会で

聖 りんご

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恋する乙女

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失恋の傷が塞がらない司祭は懺悔室にいました。

小窓を開けて今日の訪問者の懺悔をききます。

「改心を呼びかけておられる神の声に心を開いてください。神のいつくしみに信頼して、あなたの罪を告白してください。」


「はい。私は悪い娘です。私は、自分の想いをおし殺せず執事と恋人関係になりました。」

(また身分違いの恋ですか……)
司祭はため息をついた。
失恋の傷をまだ癒せていない司祭には恋の話は辛いものだった。

「恥ずかしい事に、私は自分の事しか考えていませんでした。相手の事を考えれば、もっとやり方があったはずなのに…私の考えの無さが彼を変えてしまった……」

(この方はとても優しいのですね。そして彼を深く愛している。)
司祭は胸がくるしくなった。想いが通じても辛いことがあるのだと知った。

「彼は……彼は私のせいで……マッチョになってしまったのです。」

(マッチョ!なぜマッチョ!!)

「お父様が課した肉体労働は過酷なものでした。しかし、彼は耐えてくれた……私の為に!私はそんな彼を愛しつづけようとしました。しかし、身体が拒絶するんです。」

(なんてヒドイ……)

「神よ、私はどうすれば良いのでしょうか!」

(私はどうすれば良いのでしょうか!!)
これも神の試練なのかと司祭は大いに悩んだ。

「これは、貴女への試練なのです。愛する者の見た目は酷く変わってしまったかもしれない。けれどもその心までは変わっていません。」

「試練……。私はこれを乗り越える事ができるでしょうか……。」

「神は、乗り越えられない試練をお与えにはなりません。大丈夫、貴女は乗り越えていけるはずです。祈りましょう。」

「神よ、いつくしみ深くわたしを顧み、豊かなあわれみによってわたしのことをお許し下さい。私の汚れた心を洗い、罪深いわたしを清めてください。」

「神があなたにゆるしと平和を与えてくださいますように。わたしは父と子と聖霊の御名によって、あなたの罪をゆるします」

「アーメン」

「貴女は、幸せになれます。信じましょう。」

「ありがとうございます。」


訪問者の退室を確認すると司祭は部屋から出た。
そして神の像をただ見つめた。

「神よ、これも貴方のお導きですか。私は、今の話をきいて自分の愚かさを実感しました。感謝致します。」

司祭は祈りを捧げた。
祈りを終えると、司祭は清々しい顔をしていた。
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