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雨宿りとフードの男
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リンバース公爵領は珍しく大雨が降っていました。
こんな日は教会には誰も来ない。司祭はそう思っておりましたが、教会の扉は開かれました。
「少し、雨宿りをしても良いでしょうか。」
黒いフードを被った男性は司祭に尋ねました。
「大丈夫ですよ。雨に濡れて冷えたでしょう。今、温かい飲み物とタオルを持ってきましょう。」
司祭が別室から飲み物とタオルを持って戻ってくると、男性は片膝をつき、神に祈りを捧げていた。
「暫く雨は止みません。ゆっくり休まれて行くといい。」
司祭は男の近くにタオルと飲み物を置くと、邪魔をしないようにその場を後にしようとした。
しかし、男は祈るのをやめて司祭に話を聞いて欲しいと願い出たので、司祭は話を聞く事にした。
「実は私、隣国から来たのですが。少々事情があり地元の名士の方とお会いしたいのですが……」
「隣国の方でしたか…それは長旅でしたね。ここは公爵様が治める土地なのでご相談は公爵様にされるのが一番でしょう。失礼ですが貴方の身元はしっかりしていますか?」
「はい、大丈夫です。」
「では雨が止んだらお連れしましょう。」
「助かります。」
司祭と男は雨が止むのを待ち公爵の屋敷に向かいました。
屋敷に着くと門番に公爵様にお目通りしたいという旨を伝えた。
暫くすると屋敷からメイドが出てきた。
「クララさんこんにちわ。」
「司祭様こんにちわ。公爵様に会いたいという方はこの方ですね?」
「クララ……姉さん……?」
「ん?今なんて……」
男はフードを取り、クララを見据えた。
「……貴方、リンデル?!何故ここに?公爵様にお会いしたいとは何事?」
クララは酷く動揺していた。
しかし、今の彼は公爵様の客人なのでここで話をするわけにはいかない。
「クララさん、まずは公爵様の元へ。」
司祭に促されクララは案内を再開した。
ノックし客間に入ると公爵はすでにいた。
「司祭様にお客人、よくぞ来てくれました。」
(アレ……この声、最近聞いた気がする…?)
司祭は思い出そうとしたがすぐには思い出せなかった。
「公爵様。急に来てしまい申し訳あらりません。お時間をいただき、ありがとうございます。」
「構わないよ。お客人名を聞いても?」
「お初にお目にかかります。私はリンデルと申します。隣国で騎士団に所属しておりました。」
「ほう…そんな方が私にどんな御用が?」
「実は少々厄介なことがありましてお力をお借りできないかと思いまして…」
「とりあえずお話を聞きましょう。」
リンデルの話は深刻なものだった。
隣国がこの国に攻め込もうとしているというのだ。
その理由は王がこの国の令嬢をひと目みて大層気に入り、その令嬢を寄越すよう言っては断られ腹を立てたという事だ。
「ほう…なるほど。その話、よく私の元に持ってきてくれました。しかし、一つ問題があります。この話の信憑性です。」
「それについてはコレを。」
リンデルば二通の封筒を差し出した。
表に【協力者様へ】と書かれた封筒を手に取った公爵は手紙を読むと頷いた。
「わかりました。御安心ください。」
「何卒、宜しくお願いいたします。」
こうして話は終わり、リンデルと司祭は屋敷を出た。
屋敷を出る前にクララにはリンデルが暫く教会に滞在する旨を伝えると後日訪問すると言われたので司祭は満面の笑みで頷いた。
屋敷を出て少したつと、少し先で魔法の練習をしている男女の姿が見えた。
格好からして公爵家のご令嬢と執事のようだ。
話している内容までは聞こえてこないが、声の調子から
何やら楽しそうな様子で微笑ましく思っているとフッとまた違和感を覚えた。
さっき公爵の声を聞いた時と同じ感覚だった。
しかし、やっぱり思い出せないので気のせいだと頭を振り教会へ歩き出した。
こんな日は教会には誰も来ない。司祭はそう思っておりましたが、教会の扉は開かれました。
「少し、雨宿りをしても良いでしょうか。」
黒いフードを被った男性は司祭に尋ねました。
「大丈夫ですよ。雨に濡れて冷えたでしょう。今、温かい飲み物とタオルを持ってきましょう。」
司祭が別室から飲み物とタオルを持って戻ってくると、男性は片膝をつき、神に祈りを捧げていた。
「暫く雨は止みません。ゆっくり休まれて行くといい。」
司祭は男の近くにタオルと飲み物を置くと、邪魔をしないようにその場を後にしようとした。
しかし、男は祈るのをやめて司祭に話を聞いて欲しいと願い出たので、司祭は話を聞く事にした。
「実は私、隣国から来たのですが。少々事情があり地元の名士の方とお会いしたいのですが……」
「隣国の方でしたか…それは長旅でしたね。ここは公爵様が治める土地なのでご相談は公爵様にされるのが一番でしょう。失礼ですが貴方の身元はしっかりしていますか?」
「はい、大丈夫です。」
「では雨が止んだらお連れしましょう。」
「助かります。」
司祭と男は雨が止むのを待ち公爵の屋敷に向かいました。
屋敷に着くと門番に公爵様にお目通りしたいという旨を伝えた。
暫くすると屋敷からメイドが出てきた。
「クララさんこんにちわ。」
「司祭様こんにちわ。公爵様に会いたいという方はこの方ですね?」
「クララ……姉さん……?」
「ん?今なんて……」
男はフードを取り、クララを見据えた。
「……貴方、リンデル?!何故ここに?公爵様にお会いしたいとは何事?」
クララは酷く動揺していた。
しかし、今の彼は公爵様の客人なのでここで話をするわけにはいかない。
「クララさん、まずは公爵様の元へ。」
司祭に促されクララは案内を再開した。
ノックし客間に入ると公爵はすでにいた。
「司祭様にお客人、よくぞ来てくれました。」
(アレ……この声、最近聞いた気がする…?)
司祭は思い出そうとしたがすぐには思い出せなかった。
「公爵様。急に来てしまい申し訳あらりません。お時間をいただき、ありがとうございます。」
「構わないよ。お客人名を聞いても?」
「お初にお目にかかります。私はリンデルと申します。隣国で騎士団に所属しておりました。」
「ほう…そんな方が私にどんな御用が?」
「実は少々厄介なことがありましてお力をお借りできないかと思いまして…」
「とりあえずお話を聞きましょう。」
リンデルの話は深刻なものだった。
隣国がこの国に攻め込もうとしているというのだ。
その理由は王がこの国の令嬢をひと目みて大層気に入り、その令嬢を寄越すよう言っては断られ腹を立てたという事だ。
「ほう…なるほど。その話、よく私の元に持ってきてくれました。しかし、一つ問題があります。この話の信憑性です。」
「それについてはコレを。」
リンデルば二通の封筒を差し出した。
表に【協力者様へ】と書かれた封筒を手に取った公爵は手紙を読むと頷いた。
「わかりました。御安心ください。」
「何卒、宜しくお願いいたします。」
こうして話は終わり、リンデルと司祭は屋敷を出た。
屋敷を出る前にクララにはリンデルが暫く教会に滞在する旨を伝えると後日訪問すると言われたので司祭は満面の笑みで頷いた。
屋敷を出て少したつと、少し先で魔法の練習をしている男女の姿が見えた。
格好からして公爵家のご令嬢と執事のようだ。
話している内容までは聞こえてこないが、声の調子から
何やら楽しそうな様子で微笑ましく思っているとフッとまた違和感を覚えた。
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