あなたは私にドキドキしない

聖 りんご

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私の居場所

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「好きだ、愛してる。カリン無しじゃ生きて行けないんだ。」

ダルはカリンを抱きしめながら消え入りそうな声で呟いた。
その声はカリンの耳に届いてはいたが、カリンの中で反発する心が素直にその言葉を受け止めさせない。

「妹だって言った!」

「うん。」

「くっつくといつも迷惑そうだった!」

「うん。」

「なんで?!ズルいよ!!」

「ごめん、泣かないでくれ。」

「ダルのバカ~!!」

カリンは今度こそダルを振り払って走って部屋を出ていった。
ダルがその場で立ち尽くしていると勢いよくダルの母親が入ってきてダルの両頬を思いっ切り叩いた。

「バカ息子!今追いかけなくてどうすんだい?!早く行っておいでっ!」

そうダルを激励するとダルの背中にもみじ型ができる程強く背中を叩いた。

「い゛っ!!た…い。母さん……言いたいことは色々あるけど、ありがとう行ってくる。」

ダルは走って部屋を出ていく。
ダルの母親はそんなダルの姿をヤレヤレといった様子で見送った。

ダルにはカリンの行先に覚えがあった。
落ち込んだ時、独りになりたい時いつも決まって行くのは教会で、鐘まで登って隅で泣いているのだ。

「やっぱりここにいた。」

「帰って!放っておいてよ…。」

「できるわけないだろ。」

ダルはカリンの隣に座った。
長い、長い沈黙がその場を支配した。
太陽はすっかり高い位置まで出てきている。

「私、ずっとダルの事が好きでどうしたら私を好きになってくれるんだろうってずっと…ずっと考えてた。」

「怖かったんだ…カリンがいなくなるのが。
だからずっと気づかないフリをしてたんだと思う。
昨日、カリンが気持ちをぶつけてくれた時、このままだとカリンが離れていくと思って怖かった。
そこでやっと自覚した…ごめん。」

「遅いよ…私がどれだけ傷ついたかわかってる!!」

「ごめん…何でもするから許して欲しい。」

「本当に……?」

「ああ。」

「じゃあ…私をダルのお嫁さんにして下さい。絶対に離れないで。」

カリンは立ち上がりダルに軽くキスしが、ダルは離れようとしたカリンを引き寄せて深いキスをし抱き寄せた。

「ありがとう…。」

二人で手を繋ぎダルの家に帰ると互いの両親が揃っていた。

「カリン…カリンがついに…」

「「私達の勝利だわね。」」

「……どういう事だ?」

二人の母親がカリンとダルに近づくとカリンに鍵を渡した。

「はい。戦利品!」

「やった~!おば様、お母さんありがとう!!」

「なんの鍵だ?全く分からん。」


話はぶどう酒祭りの前日に遡る……。
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