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破かれたワンピース
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「リリン、酷いわ!私のワンピースを破くなんて…。」
「とんだペテン師ねアン。私が貴女なんかのワンピースを破く理由は無いわ。」
「いいえ、リリンは私に嫉妬したのでしょ?私とマックスがお似合いだったから!」
街の広場で突如始まった争いごとに野次馬が集まる。
その中心にいるのは緑の瞳に涙を溜めて、スカート部分が少し破れた青いワンピースを着て震えてみせるアンと、涼し気な紫の瞳でアンを見据え腕を組んで堂々としているリリンだ。
傍から見るとか弱いアンをリリンが虐めているように見えてしまいとても分が悪い。
「ペテン師だなんて酷い。素直に謝ってくれさえすれば……私はそれでいいのに。」
「謝るような行為をしていないのだから言うわけ無いでしょ。貴女は私を貶めて何がしたいの?」
「またそうやって私を虐める……。」
野次馬は完全にアンの味方だった。
罪人を責めるようにヒソヒソとリリンに対する非難の言葉を囁き始めたその時、突如野次馬の中から一人の青年がアンとリリンに近づいた。
「マックス!」
青年に抱きついたアンは涙を溜めた眼で訴えかけた。
「リリンが…リリンが私のワンピースを破ったの!貴方に見てもらいたくて着てきたのに。」
「へえ~。リリン、そうなの?」
「私は否定したわ。」
「そっか。じゃあこの女は嘘つきだね。」
マックスのその言葉に周りが全て凍りついたように静かになった。
「う、嘘じゃないわ!ほら、実際に破れているでしょ?!」
「だから貴女のゔぐっ…。」
マックスはリリンの唇に口付けして言葉を遮った。
唇が離れ、顔を真っ赤にしたリリンが抗議しようと口を開こうとするも、マックスがリリンを抱き寄せ「まだ、さえずる気ならもっとしちゃうよ。」と囁いた事でリリンは口を閉じた。
「いやっ!酷いわマックス!!私の目の前でそんな事するなんて!!」
「酷いも何も、僕は恋人にキスしただけだよ。それよりも、酷いのは君の方だろ?僕の恋人を虐めるなんて…。」
「虐めてないわ!私が虐められたのよ!!」
必死の形相で訴えかけるアンにマックスは冷めた眼差しを送る。
光を宿さない藍色の瞳にアンは一瞬怯んだ。
「リリンが君に何をしたって?きちんと詳しく言ってごらん?」
「あ、リリンとはここでバッタリ会って…私がマックスに今から逢いに行くって言ったらいきなり怒り出して「アンタみたいなブスがマックスに近寄るなんて身の程知らず」って私のスカートの左側を破ったの!ほら、膝の辺りまで裂けて……。」
スカートから除くふくらはぎに野次馬をしていた男性陣は釘付けになり女性陣はそれに睨みをきかせた。
「なんだ、やっぱり自作自演じゃないか。」
「マックス酷いわ…。信じてくれないの?!」
「信じる訳ないでしょ。だってリリンは左手を怪我してるからそんな事出来ないもの。」
「う、嘘よ!何処にも包帯を巻いていないじゃない!!」
「リリンの今日のワンピースは半袖、怪我をしているのは二の腕だから見える訳ないよ。」
アンはリリンを睨みつけると左側の二の腕を掴もうとした。
しかし、マックスがそれを手刀で叩き落としリリンを抱き寄せる。
「そもそも、君に僕の名前を呼ぶことも許していないのにさっきから馴れ馴れしい。嫉妬?する訳ないだろ?名前を呼ぶ価値もない女と毎日愛を囁き合う恋人だよ?」
マックスは見せ付けるようにリリンの頬にキスをする。
また真っ赤になったリリンがマックスに視線で訴えかけるが、マックスはお構い無しにリリンに抱きつく。
アンは二人の様子に耐えられなくなり泣きながら走り去って行った。
野次馬達もきょうみを失ったようで解散し、広場に平和が戻るとリリンとマックスも何事も無かったかのように歩き出した。
「リリン、一人にしてごめんよ。」
「仕方ないわよ。マックスは困っている人を放っておけないのだもの。転んだお婆さんの荷物を持って送ってあげるマックスだから…好きよ。」
「リリンが好きって!き、今日は御祝いしよう!」
マックスは嬉しさのあまりリリンを抱き抱えた。
「とんだペテン師ねアン。私が貴女なんかのワンピースを破く理由は無いわ。」
「いいえ、リリンは私に嫉妬したのでしょ?私とマックスがお似合いだったから!」
街の広場で突如始まった争いごとに野次馬が集まる。
その中心にいるのは緑の瞳に涙を溜めて、スカート部分が少し破れた青いワンピースを着て震えてみせるアンと、涼し気な紫の瞳でアンを見据え腕を組んで堂々としているリリンだ。
傍から見るとか弱いアンをリリンが虐めているように見えてしまいとても分が悪い。
「ペテン師だなんて酷い。素直に謝ってくれさえすれば……私はそれでいいのに。」
「謝るような行為をしていないのだから言うわけ無いでしょ。貴女は私を貶めて何がしたいの?」
「またそうやって私を虐める……。」
野次馬は完全にアンの味方だった。
罪人を責めるようにヒソヒソとリリンに対する非難の言葉を囁き始めたその時、突如野次馬の中から一人の青年がアンとリリンに近づいた。
「マックス!」
青年に抱きついたアンは涙を溜めた眼で訴えかけた。
「リリンが…リリンが私のワンピースを破ったの!貴方に見てもらいたくて着てきたのに。」
「へえ~。リリン、そうなの?」
「私は否定したわ。」
「そっか。じゃあこの女は嘘つきだね。」
マックスのその言葉に周りが全て凍りついたように静かになった。
「う、嘘じゃないわ!ほら、実際に破れているでしょ?!」
「だから貴女のゔぐっ…。」
マックスはリリンの唇に口付けして言葉を遮った。
唇が離れ、顔を真っ赤にしたリリンが抗議しようと口を開こうとするも、マックスがリリンを抱き寄せ「まだ、さえずる気ならもっとしちゃうよ。」と囁いた事でリリンは口を閉じた。
「いやっ!酷いわマックス!!私の目の前でそんな事するなんて!!」
「酷いも何も、僕は恋人にキスしただけだよ。それよりも、酷いのは君の方だろ?僕の恋人を虐めるなんて…。」
「虐めてないわ!私が虐められたのよ!!」
必死の形相で訴えかけるアンにマックスは冷めた眼差しを送る。
光を宿さない藍色の瞳にアンは一瞬怯んだ。
「リリンが君に何をしたって?きちんと詳しく言ってごらん?」
「あ、リリンとはここでバッタリ会って…私がマックスに今から逢いに行くって言ったらいきなり怒り出して「アンタみたいなブスがマックスに近寄るなんて身の程知らず」って私のスカートの左側を破ったの!ほら、膝の辺りまで裂けて……。」
スカートから除くふくらはぎに野次馬をしていた男性陣は釘付けになり女性陣はそれに睨みをきかせた。
「なんだ、やっぱり自作自演じゃないか。」
「マックス酷いわ…。信じてくれないの?!」
「信じる訳ないでしょ。だってリリンは左手を怪我してるからそんな事出来ないもの。」
「う、嘘よ!何処にも包帯を巻いていないじゃない!!」
「リリンの今日のワンピースは半袖、怪我をしているのは二の腕だから見える訳ないよ。」
アンはリリンを睨みつけると左側の二の腕を掴もうとした。
しかし、マックスがそれを手刀で叩き落としリリンを抱き寄せる。
「そもそも、君に僕の名前を呼ぶことも許していないのにさっきから馴れ馴れしい。嫉妬?する訳ないだろ?名前を呼ぶ価値もない女と毎日愛を囁き合う恋人だよ?」
マックスは見せ付けるようにリリンの頬にキスをする。
また真っ赤になったリリンがマックスに視線で訴えかけるが、マックスはお構い無しにリリンに抱きつく。
アンは二人の様子に耐えられなくなり泣きながら走り去って行った。
野次馬達もきょうみを失ったようで解散し、広場に平和が戻るとリリンとマックスも何事も無かったかのように歩き出した。
「リリン、一人にしてごめんよ。」
「仕方ないわよ。マックスは困っている人を放っておけないのだもの。転んだお婆さんの荷物を持って送ってあげるマックスだから…好きよ。」
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マックスは嬉しさのあまりリリンを抱き抱えた。
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