婚約者の愛は重たい

聖 りんご

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心の変化

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「まったく、あの変態王は私のジゼルに触れただけでも処刑されても仕方がないのに、自らの愚行を晒すなんて救いようのない事です。」

「その事は良いから何をどう漏らしたんだ!」

「あの娘は私のモノだ!100万の兵を使い大々的に迎えに行ってやったのに追い返しよって!」

「なんて愚かな……」

「奇跡的にシリウス殿下の耳には入っていないようですが、噂は抹消が不可能なレベルでひろまってスカーレット殿下の立場が危ぶまれる程でした。」

「本当に、愚かな愚王でお恥ずかしい限りです。」

「何故そんな冷静でいられるんだ!!」

「まぁ、終わった事ですから。
そんな折にバーン公爵令嬢がジゼルに絡んできたので、利よ……協力して頂きました。」

シリウスは深いため息をついた。
自分の情報収集の甘さ、リリアンを放置していた事が今の自分の窮地に繋がっている。
せめてどちらかに対処していたならば未来は違っていたに違いない。

「俺は王に見放されたのだろうか…」

「本人を目の前にしてなんて物言いをされるのですか。殿下は酷い方ですね。」

「ジョシュア、お前も大概だよ。」

「殿下、発言をお許しいただけますか?」

リリアンが話に割って入った。
その顔は真剣なもので、シリウスは頷いて許可を出した。

「とうにご存知とは思いますが、私はシリウス殿下をお慕いしております。
ですが、殿下は私に恐怖はあれど恋情はないとジゼル様から聞いてもおります。
私はお側に居られれば充分です。これよりは殿下方を護る盾としてお側におります。シリウス殿下、どうかその事をお許し下さい。」

シリウスは今までのリリアンとのギャップに混乱した。

シリウスにとって、リリアンは目をギラつかせ突進してくる恐ろしい令嬢という印象が全てでこんなに汐らしくか弱い姿を想像すらできなかった。
落ち着いてよく観察すると輝く髪は黒曜石のように美しく大きな空色の瞳は潤み庇護欲をくすぐる。
シリウスの恐怖はこの瞬間、消え去った。

「盾とは、君はか弱き令嬢の身だ。」

「ご心配には及びません!
トーナメントでお見せした魔法以外にも相手を洗脳したり悪夢を見せ続けたり色々できますの!
今回は軽い洗脳と影から調節のみでしたが、次からはもっとお役にたちますわ!!」

シリウスは心の中でか弱いを訂正した。

「リリアンが側に居れば何も怖くないわね。」

「彼女はなぜAクラスなのだろうか…。」

その後、リリアンはSクラスに移動になった。
Aクラスの生徒たちは諸手を挙げて喜んだ。

更にスカーレットもSクラスに入りクラスメイトたちは顔を引き攣らせた。
彼女は光属性の使い手で、特別に行われた入学試験では丸太を消し炭にし見事実力でSクラス入りした。

ジゼルは賑やかになった教室に嬉しそうにしていた。
そんなジゼルをみて、ジョシュアは耳もとで囁いた。

「ジゼルが楽しそうで良かったです。」
              
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