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第二話
しおりを挟む「ところでイザイア、訓練中の君はいつにも増して格好良かったよ。まるで『金色の聖騎士』のように……」
「コイツのどこが金色の聖騎士なんだ?」
イザイアに少し遅れて、ヴァルフレードがやって来た。可愛い我が義弟は、相変わらずむくれた顔をしているね。
「お疲れ様でした、ヴァルフレード様」
「あぁ、ありがとう。どうだった?やはり大して面白くなかっただろう?」
「いいえ、とても楽しかったですよ。凛々しくて素敵でした!」
嬉しそうにセレーネが汗を拭いてやると、表情が和らぎ顔を赤らめる。
ヴァルフレードがセレーネにベタ惚れなのはこんなにもわかりやすいのに、どうして一度拗れたのだろうね。
二人共に奥手だったから、かな?
まぁ、この様子ならもう心配はいらないね。
「それくらい、勇ましい姿だったと言いたいんだよ。騎士ならば、金色の聖騎士に例えられるのは嬉しいものだろう?」
金色の聖騎士とは『金色の聖騎士と赤髪の姫』という物語に出てくる、死の帝王に冥府へと拐われた絶世の美姫と謳われる赤髪の姫を救い出す、金髪の聖騎士の事だ。
姫を救う為に単身冥府まで乗り込み、死の帝王と死闘を繰り広げた金色の聖騎士は、勇敢な者の代名詞となっており、騎士ならば誰もが憧れるものだ。
「そういえば、今度また舞台がありますね!」
思い出したように軽く手を鳴らすと、セレーネが嬉しそうに笑う。
やはり、うちの妹は世界一可愛いな。
「老若男女問わず人気のある物語だからね、劇団毎に多少アレンジもされているし……昔、舞台を観に行った事は覚えてる?」
私が5歳頃だったか、家族で金色の聖騎士と赤髪の姫の舞台を観に行った事がある。
幼かった事もあり舞台の内容はほとんど覚えていないが、金色の聖騎士をとても格好良いと思った事は覚えている。
私の騎士好きも、それから来ているのかもしれないな。
「それが、覚えていないのです……」
「まぁ、私が5歳頃なのだから、3歳のセレーネが覚えていなくても無理は無いよ」
「じゃあさ、今度みんなでこの舞台観に行かない?」
汗を拭き、髪を整えたイザイアが提案する。
「良いね、楽しそうだ……Wデート、ってやつかな?」
「わぁっ、素敵です!お姉様達とWデート!」
「うんうん!楽しみだよねっ!」
「……俺の意思は……はぁ、セレーネが楽しそうならいいか……」
Wデートよりも、普通にデートしたいヴァルフレードの様子には勿論気づいているけれど、面白いから気づかないふりをしよう。
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