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第一話
しおりを挟む私はモルテード子爵家の長女、ダニエラ・モルテード。
先日、ようやく理想の相手と出会い婚約を果たした。
その婚約者であるイザイア・パルッソは伯爵家の次男で、私の妹のセレーネの婚約者であるヴァルフレード・プレスティ伯爵令息と共に、騎士団に所属している。
そして私と同じく、異性の装いを楽しむ趣味を持っている。
初めて会った時の彼は、まるで炎の女神の様に美しかった。
ただ女性の服を着ているだけでは無く、立居振る舞いまでもまるで本当の女性の様で、私と同じ熱量を感じ、嗚呼、彼こそが私の運命の人なのだと、稲妻に打たれたようだった。
そして彼もまた、私と同じ様に私に運命を感じてくれたようで、会ったばかりではあったが、求婚してくれたのはとても嬉しかった。
「お姉様、イザイア様が手を振られてますよ」
「ふふ、そうだね」
こちらに向かって、嬉しそうに大きく手を振るイザイアに笑顔で手を振り返すと、両手で顔を覆いうずくまった。
私の笑顔一つで、大の男が照れているあのさまが、また愛らしい。
彼を愛らしいなどと言うのは私くらいだろうな。
今日はイザイアとヴァルフレードの所属する騎士団の訓練場へ、妹のセレーネと共に見学に来ている。
騎士は幼い頃から好きで、見かける度によく目で追っていた。
将来は騎士になるのだと言っていたそうだが、我が家には家を継ぐ男児がいなかった為、婿を取らねばならない私が騎士になるのは無理だった。
思えば、騎士に憧れた事が男装のきっかけだったのだろう。
イザイアも何かきっかけがあったのだろうか?
◇◇◇
「ダニエラ!」
訓練を終えたイザイアが駆け寄ってきた。
「お疲れ様イザイア。風邪を引いてしまうよ」
雨に打たれたのかと思うほど、大量に汗をかいているイザイアの額の汗をタオルで拭う。
「あ、ありがとうっ」
たったそれだけの事で、顔を真っ赤にして喜んでいる彼に少し悪戯心が芽生える。
結われていた彼の髪が乱れているのを耳に掛けてやり、露わになった耳元に唇を近づけそっと囁く。
「……もし風邪を引いてしまっても、私がつきっきりで看病してあげるけどね」
「――つきっきりで、看病……!」
うん、湯気が出そうなほどさらに赤くなったね。
本当に愛らしい人だ。
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