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第一話
しおりを挟む「――お姉さまっ!私を置いて行くなんて酷いですっ‼︎」
「……なぜ貴女がここにいるのアンシェラ」
伯爵令嬢である私、クリスティナ・ブラウエルは頭を抱えた。
よく手入れのされた素晴らしい庭園でのお茶会。
参加しているご令嬢達の色とりどりのドレスは、庭園の緑に映えて目に楽しい。
和やかに会話を交わし、あとは主催の公爵令嬢の登場を待つだけだったはずなのに、和やかな雰囲気は一瞬で凍りついた。
この場に居るはずのない私の妹が現れたからだ。
「ねぇ、お姉さま!このドレス素敵でしょう?私にとっても似合っていると思わないっ?」
ご令嬢達の冷めた視線を分かっているのかいないのか、クルクルとドレスを見せつけるようにその場で回るアンシェラ。
「……素敵なドレスね」
「そうでしょ!素敵な人が贈ってくれた素敵なドレスなのよっ!」
何か含みのある言い方をするアンシェラが、身に纏う鮮やかな赤いドレスは確かに素敵な物だった。
淡い紫のドレスを纏う私を含め、この場にいるご令嬢達は誰一人として身に纏っていない赤色。
でもそれは……。
「――あら、とても綺麗な赤いドレスですね」
その一声に周囲がざわめく。
その声の主とは。
「皆様、ごきげんよう。少し遅れてしまってごめんなさいね」
「エフェリーネ様、ごきげんよう」
主催の公爵令嬢、エフェリーネ・ストラウク様だ。
エフェリーネ様の登場に参加している令嬢達皆で挨拶をしているのに、アンシェラは小首を傾げ、思い出したようにエフェリーネ様に話しかける。
「こんにちは!今ドレスを褒めてくれたのってエフェリーネ…様?ですよね!ありがとうございます!」
……あぁ。誰か、今目の前で起きている事は夢だと言ってくれないかしら。
今のアンシェラの様子だと、エフェリーネ様の事も、お茶会の主催がエフェリーネ様である事も全く知らなかったようね。
「えぇ、とても素敵な赤いドレスね」
「ふふっ、エフェリーネ様が着てる赤いドレスも素敵ですよー!」
そう、主催のエフェリーネ様のドレスが赤い物だからドレスコードは赤以外のドレスだというのに、目の前にいる主催のドレスと同じ色を纏うという最悪のマナー違反を犯しているのに何故平気なのアンシェラ。
「――アンシェラ……っ」
もうはしたなくても仕方がない。
これ以上エフェリーネ様に失礼な事をしないうちにきちんと叱らなくては……。
そう思い声をあげようとした時、エフェリーネ様に目配せで静止され言葉を飲み込んだ。
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