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髙﨑 レイ

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壱章 クマさん道場

双子

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 あの3つの飛び道具の内唯一刃がないちょっとした木棒を無造作に掴みそれで他の2種を対処した栄治は1人で配膳していた。
「はいお終い」
 悠二がそのダイスを確認すると映像ホログラムで展開されてゲームがボス側の勝ちと表示している。うん悠二には勝率4割ないんだよ。ちなみに弟子4人と僕に佳奈でした時の話だ。実体のサイコロではないので完璧に狙った目が出しづらいせいだろう、多分。
「相変わらず強いわね」
「これだけは誰にも負けませんから」
 天性の豪運持ちだからな。レアドロップの確認はまず悠二にさせるべきとは仲間内では有名な話だ。
「ウチにも1人は欲しいタイプなんだよな」
「そんなか?巧くはあるが強くはないぞ」
 生粋の技巧派だしな。まあ母親の遺伝子違いだろ。多芸で天才肌だった僕の母と2人の母親は影や闇に生きるタイプだ。
「佳奈の方が良いんじゃないか?」
「分析と解析を同時に熟せてしまう偵察系か。欲しくはあるけど」
 チラッと佳奈を見て告げる。
「あの世界に引きづり込むのは遠慮したい」
 そんな魔境か?プロの世界って。いや確かに厳しい世界ではあろうけどよ。味噌汁を注ぎ栄治に渡す。
「香織ほど壊れているわけじゃあないしな」
「正直すぎるか」
 確かに佳奈は正直すぎるし純粋無垢だ。…僕が壊れているという真意を説いたいがまあ誰であろうと容赦無く稽古でぶちのめすので仕方なしだが。にしても壊れているって楓には言ってないだろうな。というか配膳早くしろよ。

『頂きます』
 一同で手を合わせて夕食を食べる。
「お兄ちゃんこれ美味しい!」
「うん昨日と同じくらい」
 父さんよこの2人を高級店に連れ回すの構わないがそこを商談用に使ってないだろうね。
「にしても本当に嫁要らずだな」
「いや食材が良さすぎるだけだからな」
 普通に高級食材を使っただけだし4人も来客がいるから冒険しないし。あと体調管理が重要な2人が居るわけだし。
「そんな事はない。絶品」
 沙月のちょっと殺気の篭った声が怖い。この人も食べ慣れているはずなんだけどな。よく被害に遭うわけだけどさ。料理人を普通に雇えるわけだしこの場に居る全員の家庭。
「2人はどの位居るんだ?」
「三週間!」
「と父さんは言ってますが母さんが身籠る可能性があるので」
 …新婚夫婦でもあるまいし。いや否定できんな。あのラブラブぷりだと本当にありそうで怖い。それ故あの2人には遠慮して今の家に居るわけだが本当はあの家に居て歯止め役になった方がって…あまり意味なさそうだな。あの食材の新鮮食品最大でも二週間だというのに。弁当にしても減らしきれないのだが。
「その間の道場ってどうするんだ?」
「師範代の人が居るけど来週末は居ないからお兄ちゃんに頼むって」
「まあ良いか。本音言えば栄治を特訓したいんだがちびっ子相手だしな」
 金曜の夜と土曜の朝は小学生を主対象とした剣道薙刀弓道を教えている。要は運動感覚だが稀にそう言った道を志す故に入門してくる人もいる。そう言った人とは時間をズラしている。まあ警察関係やSPなどの御子息や令嬢もいたりする。なのでいつも師範代やその手前の人が稽古に当たっているのだが全員居ないのは非常に珍しい。
「はあ。一応4人とも声を掛けるからな」
「私は平気。馬車馬のように使って体ごと」
「俺も大丈夫だ。連撃仕様はそこまでに完成できそう出し」
 さらっととんでもない事を言う2人である。あと沙月さんなんでそんなに体強調するんですか?それと栄治、手数仕様ならまだしも連撃仕様ってウチだと空手や柔術だぞ。
「あと栄治は二週間ウチで稽古な。朝と夜に詰めれるだけ詰める」
「良いが。NEO‘Sでカナデにも教えないと」
 ふむ。接点なしか。いやその向かいに居る彼女なら知っているはずだ。何せ柳葉楓は沙月の人気女子高生作家天野皐月のアニメや映画に出ているはずだ。ちなみに何故、天野なのかは話してくれない。
「それなら私が呼ぼうか?連絡先知ってるし」
 やっぱりか。って双子が話について行けないか。見るからに不機嫌な佳奈が居るし。
「なら明後日が良いんじゃないか?あと2人はNEO‘Sするか?」
「うん!だってそこなら思っ切り戦えるでしょ!」
 悠二がバーサーカーな件。いや強ち間違いじゃないが。本人的には正面切って戦いたいらしいしな。
「確かに。ゲームでも技術は磨けるからする!」
 斥候系はやる事が多いわけだが佳奈なら熟せるか。テンノオウに加わると飛躍してくれそう。
「いいのか?親と相談しないで」
「大丈夫。それに多分この2人は到達する」
 何となくだ。セリアの処女宮、栄治の卯之刻などのようにナニカ惹き合う感じがする。
「?」
「分からないけど香織お兄ちゃんがそう言うなら。ところで栄治お兄ちゃんカナデって誰?」
 ドス黒い狂気をその目に孕み栄治を見定める佳奈。うむ我が腹違いの妹ながら怖い。若干の殺気を上手く僕と沙月にも飛ばしている辺りあとで問い詰めるという意思を感じる。ヤンデレってこう言う人種を指すんだろうなと呑気に考える。
「香織に刀の教授を乞って俺に振り分けられた」
「本当?」
 片方の目を器用に動かして心臓を目で射抜く。才能と嫉妬って怖いな。
「まあな。色々と面白そうだしその場のりでって済みません」
 何故かナイフが飛んできた。怖いわ。悪ノリだとは思うがそこまでか。
「むぅ。絶対する」
「おう」
「佳奈姉ちゃん如何したの?」
「いやなにも」
 悠二にはまだ早いか。

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