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髙﨑 レイ

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壱章 クマさん道場

似たものと初心

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「いやいやいや!なんで俺が!」
 分からんのかよこの鈍ちんが。まあ色々と思惑があるのは確かでそれは弟子4人の誰にも告げていないけどさ。
「単純な話だ。お前がどれだけ天埜流武術を理解して会得しているかを確かめるには誰かに教授するのが早い。それに遅かれ早かれ皆伝に登った以上は師範を目指してもらう」
 最初はお遊びの範囲だったとは言えども既にそのレベルまでに昇華している以上は次の代へと受け継いでいく必要がある。他の流派は知らないが天埜流武術とはそういうものだ。そんな必要が今のご時世あるとは思えないが絶対とは言えないのが世の中だ。
「それにお前に教えた乱桜は本来は女性が使うように形成されたモノで代々改良されて男性用にされてものを伝授した」
「待ってくれカオル。それじゃあつまりカオルがエージに伝授したその乱桜っていうのは」
 隣にいるセリアが発言を止める。そう、僕が伝授した乱桜は正しい乱桜ではない。乱桜:剛である。さしたる違いが存在しないためどちらも乱桜と呼ばれるが体の使い方が違う。
「ああ。男女で仕方が違う。最悪オリジナルになっても良いから習得させろ」
「術理を1つづつ分解してカナデ用に組み換えろと」
 何か恐れるように聞いてくるがドコにナニを恐れる必要があるのだろう。一応そのレベルを僕はしたことあるし。
「簡単に言うとね。術理のうんたらかんたらは飛ばして乱桜に必要なもので充分」
 刀を扱う上での注意点こそ秘めているが覚えてしまえば使い易い。桜河とか五月雨とか。
「その乱桜ってどのくらい取得に掛かるんですか?」
「うーん詰めれば3日。ただ基礎から作り直すと一月はいる」
 突貫すれば半日だがそう上手くはいかないはずだ。ただ女性の場合斬るより突くの方が力は要らないから細剣の方がいいとは思うけど。本人の気持ちを考えると否定はしないし。
「それではお願いするねエージさん」
「お、おう」
 互いに顔を見合わせて頬を紅く染める。うん良いね。ただそこでフリーズするのはどうすれば。
「カオルには頼みたいことがあるしそこのお熱い2人は置いて私の執務室に案内しようかしら。そこで測定もしたいし」
「そうですね。それに【クラフト】なら腕の良い鍛治師もいるでしょうし」
 少し大きな声で会話したものも2人は反応がない。寧ろより2人の世界に入り込んでいる気がする。ナニこの2人?中学生?

 気付く気配がなかったのでそっと立ち上がりそっと退出した。



「さてあの2人上手くいくかね?」
 表通りに出て隣にいるセリアの一言目がそれだった。いや全く同じ気持ちだけど。
「どうでしょうか?ただ個人的には上手くいって欲しいですね」
「私もだ。カナデが誰かを好きになること自体が珍しいし相手もそれなりに良いからね」
「そうなんですか。モテそうですけど」
 あの感じは好きな奴は好きそうだし。ルックスもそれなりによく礼儀正しい。はっきり言うて有料物件だろう。
「エージの方はどうなんだ?アレでもプロゲーマーだろう」
「逆ですね。プロゲーマーだから疲弊したりそう言った部分のみを見ようとする人が多くいるので。セリア含めてただのゲーマーとして一般人として好きになってくるのは珍しいですよ」
 あの苦悩はよく分からない。姉妹で正反対の対応をする双子ならいるし色々と怖い幼馴染み2人が居るがアイツらは人目を憚らないし面と向かって告げてくるのでああ言う感じにはならない。
「コッチも似たようなものさ。…ところでカナデのこと気づかなかったか?」
「気付く?どう言う意味で」
 ナニか驚くものを見るような目で見てくる。アレ彼女そんなに有名人でしたか?…いや一部意図的に耳にしないようにしている情報がある。そして何より僕はドラマを見ない。
「高校生女優…!柳葉楓!」
「君の鈍感さと言うかそう言った面には感謝だな。なんで知らなかったんだ?」
 
「一個人について深く知ろうとすると死にそうになるから」
「ほう。それはどう言った意味でー」
 うん僕は悪くないはずだ。アイツらの感が凄まじいだけで。一回物凄い目にあったんだ。

 護衛依頼を受けて必要な情報を割り出そうとしただけなのに。目が怖くてあの数日はまともに寝れなかった。
「大体察した。しかし君の周りは面白いな。さて着いたぞ」
 そこには巨大なショッピングモールの如き大きく広い白亜の塔が建っている。見て取れる範囲だけでも凄くチグハグだが良い。こう言った無秩序感は好きだ。
「ここが私たちのホームである複合型商業施設【クラウン】だ」
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