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序章 刻の始まり

追想付呪

　両足をバネのようにして移動する。ここは道場のように板張りではなく草原なので独特の反動が生かせない。まあ道場だけでしか使えないのは戦略級武術としては使えない。いやそれだけがあの武術の全てというわけでもないが。アレらは自分専用に魔改造された武器じゃないと色々不味い。
　ソレの劣化模倣が天埜流幻武術。今更ながらよくそんな物作りだしたな僕。引き金を三度引き、砲声する。
「———エネルギーアロー」
　先ほどまでより一回り大きな矢が形成され放たれる。バリスタ級だな。今まで普通の矢サイズだったのに。

　ただそのどんな攻撃もヤツが翼を閉じた事で障壁で簡単に阻まれる。なら踏み込みを強くして剣を構える。一撃で貫く。ダッシュで込める力を最大限に利用する。慣性、反発、ベクトルとその全ての推定効果力を脳内に入れて鋭く放つ。
　迫りくる両腕に対して銃撃とエネルギーアローを。その上で重力を乗せた一点突破の刺突攻撃を。
「天埜流剣術刀牙」
　手首を巧みに動かしてその軌道を刀のようにして牙で突き刺す。ただ向こうはそこまで読んでいたらしく超大量の魔法陣とブレスの吸い込みを感じる。おいおい。翼から剣が抜けないんですけど。
「傷頸堕崩」
　剣を持っていた手を離してそのまま体組織を内部側から打ち崩す特殊な拳撃を放つ。
(アレ…)
　今の一撃、肉体を撃った気がしない。そういえば魔力系統攻撃以外ほぼ通っていない気がするし。そして全ての魔法陣が完成して理不尽な暴力と化して襲いかかってくる。
「吹き荒れろ」
　雄叫びを挙げながら繰り出すのは天埜流剣術片刃輪。
　緑の煌めきとともに嵐が吹き荒れて魔法を全て灰塵へと帰す。まだいける。いやまだ行く。
「もう一丁！」
　再び片刃輪。
　今度は前方の木々にある木の葉を蹴散らす。ソレが双方の視界を奪う。がこっちはお構いなしに跳ねて蹴りを何度も放つ。所々に剣の腹で打撃も加える。

　そして剣と銃から緑の煌めき…瞬間付呪の輝きが消えて霧散する。ただガードは崩れない。一回試そう。
「瞬間付呪インスタンス無　対象:全」
　コレは下準備。本命は。
「追想付呪メモリアルコネクト　クロノスドラゴン」
　そして放つは砲声。
「穿て　エネルギーアロー」
　バリスタ級とは比べものにならないソレが放たれた。