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髙﨑 レイ

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序章 刻の始まり

瞬間付呪

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 木々が揺れ野草が舞う。その中でソイツは居た。
 蛇のような体躯をしながらも雄雄しき翼を持つ圧倒的な存在を示す。
 バサバサと翼を動かすだけで烈風が起きる。漆黒の体にある深紅の瞳が僕を捉えた瞬間、咆哮する。
「アレはまさかドラゴン」
 どんなファンタジー小説にも登場する言わず知れた存在。文字通りの最強であることが多くある種族。チュートリアルで出てきて良い存在ではないはずだが。
「そんなクロノスドラゴンがなぜ此処に?…いや条件は満たしている?」
 ミコトの呟きを拾うにやはり本来はここで出てこないはずらしいが事実として此処に居る。

【辰之刻が開始されます】
 まるで無慈悲な勧告のようにシステムウインドが立ち上がり脳内メッセージが流れる。

 その直後にクロノスドラゴンは息を大きく吸うと少し溜める。それを理解した瞬間に僕はミコトを抱き寄せてその眼の標準から外れるように逃げる。5秒後に最初の位置が爆ぜる。危ない。
 太腿に銃を収めたホルスターと腰に佩く剣と鞘。
 正直、武装としては心持たなすぎる。唯一の利点は不壊であることくらいだろうか?
「大丈夫か?」
「えぇ。おかげさまで助かりました」
「なら良かった。少し隠れていてくれ」
 返事を聞かずに木から飛び出して銃を抜き3連射。ショートブレードを抜き放ち銃を収納する。そして唱える。
瞬間付呪インスタンス雷 対象:剣」
 瞬間付呪 異能 付呪の力の一つで効果は一定時間、対象武器に属性を宿し物理・魔法攻撃が可能となる。

 剣が黄色の光に包まれる。するとクロノスドラゴン周辺に魔法陣が幾つか出現して岩の散弾を撃ち出してくる。これはなんとかなる。
「天埜流剣術 連仭」
 X字を書くような斬撃で散弾を打ち返して他の散弾を無力化する。そこに追撃を加えようと一歩踏み出した時に空気が震え始める。術を此処から繰り出そうにも届かない。滅蒼角なら貫通突破出来るだろうがアレにはタメがいる。なら
「——エネルギーアロー」
 その大きく吸い込みをしている口目掛けて1条の無垢な光が突き刺さろうとするが届く前に光の粒子となりて消える。ダメか。コンスタンスにダメージを与えるとはいえまだまだ低級。なら異能だ。
瞬間付呪インスタンス爆 対象:銃」
 クイックドロー&フルバーストで銃に込めた瞬間付呪を使い切る。ただその一撃で咆哮で相殺しようとすると反動が強く左腕が跳ね上がる。その上中間距離でぶつかり互いに爆ぜる。その衝撃波により僕は吹上飛ばされる。その上、土煙が上がり視界が上手く確保できないし何よりクロノスドラゴンヤツの気配を捉えきれない。しかも瞬間付呪は再発動まで時間がかかる。ってLPのゲージが既に赤い。そんなに反動が強いのかよ。
「——ヒール」
 唱えると柔らかな光が身を包み傷を癒す。ただ今の今まででダメージをほぼ与えられていない。銃は銃身が熱を持っており幾ら引き金を引こうとも魔力弾は出ない。無属性魔法も現状使えるのはエネルギーアローのみ。それに無理に術理を使用したせいか体全体が軋む。

 ちなみに術理とは倫理や法則に基づき修練を経て得た技術だと天埜流武闘ウチの流派では定義している。特に連仭は本来は片刃で行うはずだし弾き返すのではなく切り捨てるのだから無理に改変したために起きた反動だ。

 ただ無抵抗のまま殺されるのは嫌だし僅かでも攻撃が入る以上理論上は討伐が可能なわけだ。体勢を立て直そうにも空中だしな。はあ。仕方ない。
「天埜流幻刀術」
 身を捩り溜める。本来なら存在しない幻の技術。
「霹靂迅仙」
 雷の如き斬撃を飛ばされる方向に向けて放ち衝撃を緩和して着地と同時に全ベクトルを運動エネルギーに変換する。
「———ヒール」
 短い呪文を何とか唱えて未だ土煙が上がる場所へと踏み込む。その直後不意に腕の振り払い攻撃を咄嗟に引いた剣の腹で受け流そうとしたが変化した運動エネルギーも相まってか軽く飛ばされる。不味いこの位置はミコトがいる。

 それを理解した直後。
 木々が破裂する音が聞こえた。
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