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悪役令嬢が世を儚んだら
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しおりを挟むそして血溜まりに公爵令嬢が倒れ伏すと言う凄惨な卒業パーティは終わった。
学園側から王家負担で卒業パーティのやり直しが卒業生に提案されたが、あの出来事を忘れたいのか、誰も出席の希望を出さなかった。
そのため卒業パーティの費用で、血が流れたホールを取り壊し、違う場所に新しく建築する事になった。ホールを取り壊したその地の片隅にひっそりと鎮魂碑が建てられた。
それを見かける度に在校生達は己の所業に対する責任を心に刻んだとかで、簡単に婚約を結んだり、解消する輩は減っているようだ。それには第二王子と男爵令嬢が処刑された事も役に立っている。
あの二人は公費横領罪、誣告罪などを貴族院の裁判官に詳らかにされて、弾劾された。誣告された公爵令嬢が自死を選ばなければ、平民に落とされて、流刑地に追いやられる程度で済んだかもしれないが、公爵令嬢亡き後何を言ってももう通じない。
しかも王太子から長年に渡り第二王子が婚約者を虐げ、第二王子自ら王位に着くことを望んでいたことの証拠を提出されて、どのように抗弁しても、証拠の前には対抗出来ずに、処刑された。
これで長年王家のしこりとなっていた愛妾も姦通罪で、ひっそりと一度も抱いたことすらない息子が処刑された翌日に毒を与えられて死んだ。最後まで『私はヒロインなのに!』と叫んでいたそうで、それを聞いた王妃は『やはりあの女も……』と呟いていたとか。
第二王子が貢いでいた令嬢の男爵家も貢がれていると知っていて、その金を自分達の贅沢に使い、返済できないため男爵家は取り潰しになった。また余計な事を喋らないように元男爵夫妻、息子夫婦は監視がつけられて流刑地に追いやられた。
ーーーーーーーー
「フンメル公爵、令嬢を虐待していたあの伯爵家の女と娘はどうして欲しい?」
「殺す事は望みません。生きていることを絶望して死を望むような毎日を送るような境遇に落として下さい」
「あの女は学園時代からあなたに横恋慕していたそうだ。自分の親にもあなたには婚約解消できない王家の血を引く婚約者がいるから、自分は愛人だと言っていたようだ」
「あの娘は誰の子なんですか」
「伯爵家の女はもう狂っているからわからない。親もあなたの子だと信じて疑ってなかった。弟の方も親からそう聞かされていて、メイド長募集はもうお荷物でしかない姉親娘を引き取って貰える機会と思ったそうだ」
「なぜ思い込めるのか……」
「こんなことを言いたくないが、あなたは容姿端麗で皆の憧れの貴公子だったが、亡くなった夫人は王家の血は引いているが平凡な容姿で不釣り合いと思われていたから、若い頃は大変美しかった女にあなたが惹かれたのだと……」
フンメル公爵は不敬と分かっているが王太子の言葉に重ねて言った。
「見た目など!私にとって穏やかで優しいいい妻だった。それで十分で私達は愛し合っていたのに……」
「それをもっと表に出すべきだったな。マルガリーテ嬢はあの女にすり込まれたこともあるが、愛されてない妻の子供だから父親に愛されてないと思っていたのだから」
「……妻を亡くした悲しさに娘に気を配らなかった私の罪です」
「では、気持ちは変わらないか」
「はい。後継者として親族から選んだ者に全てを託してから、娘の墓のそばでひっそりと暮らしていきます」
「あの女に加担していた使用人達も全員裁かれて、それぞれ懲役刑になり牢に入れられた。あの女と娘は心配しなくともあなたが希望するような刑になる。ああそうだあの女の実家も積極的に加担はしてなかったが実家ということで領地を四分の一に減らし準男爵とした。……こんなことで元通りにはならないが、マルガリーテ嬢の恨みが少しでも晴れれば良いが……」
フンメル公爵は王太子の好意は、王家の醜聞を処分できた礼でもあることを知っていたが、それしか娘に報いる事ができないので、口をつぐんでひっそりと消えていくことを決心していた。
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