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悪役令嬢が世を儚んだら
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しおりを挟む私、ダリウス・フンメル公爵は最愛の妻を亡くし、妻に瓜二つの娘を見るのが辛く、国王の要請に従って大使として、難しい問題が横たわる外国仕事ばかりして来た。
娘、マルガリーテは信用のおける使用人達に任し、また学園時代の同級生と言う伯爵令嬢が親を亡くして行き場所が無くなり、職を求めていると言うので、子供と共に雇った。
面接した時に懐かしげに話しかけられたが全く覚えが無い。
あの方もこの方もご一緒でしたと言われると確かに同じSクラスの人達の逸話だから彼女は同級生なのだろう。クラスを聞くとかなり下のクラスの名を言う。そのクラスは棟すら違うのに、なぜ彼女はSクラスを知っているのだろうとちらりと思ったが、緊急事態で直ぐ他国に旅立つ必要のあった私は彼女を雇い入れた。
私は幼い頃から妻だけを求めていたから、他の女性を恋愛対象に見ていなかった。
国王が学園で子爵令嬢と恋愛問題を起こした時も己の婚約者を大事にしないで何をしていると苦々しげに眺めていた。
娘は遊び相手に母親の方はメイド長として雇い入れた。それからずっと帰国することが叶わず、娘に会うのが辛いと言うのも本音だったが。
それでも、マルガリーテからの手紙が間遠くなって来て心配していたところに、王太子殿下からの要請だったので、飛ぶように帰った。
帰国して直ぐ自邸に帰るとあの雇った伯爵家の女が迎え出た。私が娘に付けた信頼できる使用人達が一人もいないのはどう言うわけだとその女を問い詰めると、気持ち悪くにやぁと笑った女が私にしなだれかかってきた。
気持ちが悪く振り払うとその女は床に這いつくばって私を見上げた。ふとその女の指を見ると私が妻に贈った指輪をしていた。
「なぜ使用人風情が妻の形見を身につけている!」
そう叫ぶと、この女が雇ったと言う執事がおどおどと言う。
「あの、旦那様、これは奥様に贈られたものでは?」
「この女が奥様だと!」
私が大声をあげるとその女は床を這いずって
「いやですわ。わたくしはあなたの妻ではありませんか」
などと訳の分からない事を言う。
執事に聞くとこの女は自分は後妻だからと邸を好き勝手にしていたと言う。
連れてきた娘も私の娘で私が帰国して認知するまで伯爵家の娘になってる。それでも公爵家の娘として大事に扱えと贅沢三昧させていたと言う。そして政略結婚で生まれたマルガリーテは大事にする必要などないと離邸に押し込んで侍女一人付けただけだったと。
愕然とした。自分の心の傷が痛い事に気を取られ、忘れ形見のマルガリーテをそんな境遇に落としていたことに気が付かないなどと。
直ぐにこの女を拘束して使用人全員集めた。娘とこの女の娘は卒業パーティで学園に行ったと言う。
離邸で娘の世話をしていた侍女には見覚えがある。娘に幼い頃から付いている下女だ。
私に来ていた手紙は全てこの女が書いたもので、私が出した手紙は一通も娘の手元に渡ってないと。妻が残した形見はあの親子に取り上げられたこと。娘が婚約者の第二王子に蔑ろにされている事。今日の卒業パーティで婚約破棄されると言っていた事。
全て侍女から聞いた時に取り返しのつかない事を自分がした事を知った。
伯爵家の女と娘を迫害した使用人は全員王太子殿下が連れていた騎士に拘束されて、王宮の地下牢に押し込めるために連れて行かせた。
あの女は最後まで、私とあの女は真実の愛で結ばれているなどと騒いでいた。
そして王太子殿下に卒業パーティで第二王子がしでかすことを再び教えられて、間に合うようにと懐かしい学園に向かった。そこで見たものは、血溜まりに倒れ伏しているもの言わぬ娘だった。娘の身体を抱きしめた。妻によく似た真っ赤な髪が血で固まってしまっていた。
娘は自害だと言うが、ここまで追い込んだのは誰だ。絶対に許さない。たとえどんな手を使っても生きている事を後悔させてやる。
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