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しおりを挟むエリック達護衛と王宮の主宮殿に向かうと、彼方からジョエルが走ってきた。
「殿下、遅いですよ。オスカーが宰相の執務室に入る前に、殿下がこちらに向かったと、伝令を飛ばしてくれたので、お迎えに来ました」
「すまない。オスカーに衝撃的な事を聞かされて、戻るのが遅くなった。ボートンは姿をくらましたらしい」
ジョエルはそれを聞いてちょっと眉を顰めた。
「まあ、いつまでも捕まるのに王宮をうろうろするわけはありませんね。デングラー公爵家の犬の組織については、ダニエルが証言をするそうですし、そちらから攻めましょう」
「薬物中毒になった者どもは?」
「罪を犯した王族の入る北の離宮の使用許可を取りました。周りは衛兵で取り囲みました。そこに薬物中毒の二人を運びました。薬物に造詣が深い前医官総長を引っ張り出して、治療に当たっています」
「あの男爵令嬢は?」
それを聞いて、ジョエルはニヤリと笑った。
「男爵家に王族殺人罪容疑で踏み込んで、薬物を確保しました。その時に事実を知った男爵がマリアを男爵家から放逐しました。元々庶子で他の嫡出子達の反対で、貴族籍に入れてなかった事が幸いでしたね。危険人物を滞在させたということで、今は男爵家全員逼塞させてます。爵位を取り上げるか、王都出入り禁止程度にするかは、殿下の裁可待ちです」
相変わらず、仕事が早いなとフェリクスはしたり顔の側近を見た。
「では王都出入り禁止で。男爵家程度で王都に入れなければ、商売もできずに、他の貴族とも縁は結べない。だが、領地を誠実に治めていれば、飢え死にはしないだろう。マリアは庶子だからその程度だろう」
「承りました」
そばにいる自分の側使えに命令をするジョエルを見ながら、フェリクスはまた言った。
「それで自称ヒロインはどうしている」
ジョエルは歩み去る側使えから、フェリクスの方に向き直った。
「もう、男爵家の人間でもありませんから、平民用の地下牢に放り込みました。あそこで喚き立てれば、自分の声の反響で耳が痛いだけですからね。王族と高位貴族に薬物を盛ったのだから、どちらにせよ死刑ですから、大人しくなるまで、水も食糧も与えずに放置しておきます」
「今、どんな状態だ」
「フェリクス殿下が迎えに来てくれる。王妃になる自分にこんな事をして、後で後悔するぞとずっと叫んでます」
それを聞いて、フェリクスは呆れてしまった。
「まだ隠しキャラとやらにこだわっているのか。ーーーすごい妄執だなーーー」
呆れ果てて、返って哀れにも思えるが、した事は大罪だ。処刑は揺るがない。
「大丈夫です。あの女は狂気に囚われていると流布してあります。発言を誰も信用していません」
「本気にされたら困るな」
ポツリとフェリクスが漏らすと、ジョエルは苦笑いをした。そしてフェリクスの側により耳元で囁いた。
「アルベルト殿下の死亡確認されました。今、宰相が死亡を発表する準備に入っています」
「ーーー遺体は」
「先程の北の離宮の最上階に安置しました。近づくのは医官副総長だけで周りは近衛第一で固めています」
「そうか、叔母上に受け入れ依頼の手紙を書く。執務室に戻る。アランにも戻って来るように伝えてくれ」
フェリクスは側のエリックに言うと、エリックは自分の部下に指令を出し、エリック自身はフェリクスについて本宮殿に向かった。
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