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しおりを挟む「クリスティーヌ様とはデングラー公爵令嬢のことですね?殿下とはどのような仲なのですか」
アランがそう尋ねるとフェリクスの耳が赤くなった。
「彼女とは王族専用庭園で出会い、その後アルベルトにすっぽかされて、王族専用四阿に取り残されている時に再会した。その時からずっと手紙のやり取りや、アルベルトがすっぽかすお茶会の帰りに密かに会っていた」
「ーーー知りませんでしたーーー」
アランが絞り出す様に言うとエリックが軽い調子で言った。
「俺は知ってましたけどね」
「エリック、教えてくれても良かったのに……」
「守秘義務ですよ」
アランとエリックの会話を聞きながら、フェリクスは続けた。
「彼女との手紙のやり取りで、彼女がアルベルトに邪険にされても、仕方ないことと悲しんでない事を知った」
「婚約者に邪険にされて、なんとも思わない?」
アランが思わず言うと
「さっきダニエルが言っていただろう?クリスティーヌには前世があった。だからこの世界が乙女ゲームだと知っていた。だから父親に虐待されることも、婚約者に冷たくされて、学園に入れば浮気されることも知っていた」
「あれって本当のことなんですね」
エリックがしみじみと言った。
「私だってクリスティーヌが言うのじゃなかったら信用しなかったかもな」
フェリクスがそう言うと、エリックが
「惚気ですかね」
と言った。アランがはっとして言った。
「デングラー公爵令嬢は、亡くなったのですよね?こんなに、のどかに話している場合じゃ……」
「ああ、すまなかった。クリスティーヌは生きている」
フェリクスがそう言うと二人はびっくりして叫んだ。
「はぁああああ????」
「殿下、目撃者もいます。どういう事ですか?」
「殿下、身代わりなんですか?!」
二人が口々にフェリクスを問いただす。
「落ち着いてくれ。説明するから」
フェリクスが宥めると、二人は渋々引き下がった。
「クリスティーヌは卒業パーティーで婚約破棄をしてくれる事を望んでいた。シナリオ通りに国外追放になりたがっていた。父親の愛がない事で『呪』を打ち返せないから、悪循環から抜け出したがっていた」
「デングラー公爵令嬢は『呪』を書物から知ったとフェス侯爵令嬢に言ったと聞きましたが……」
「書物と言うか、この世界はマリアの言う乙女ゲームと、少し違うのだそうだ。確かにマリアがヒロインの乙女ゲームはあった。が、この世界はその乙女ゲームを元にした二次創作の小説の中なのだそうだ。その小説に『呪』が出てくる」
「公爵令嬢の言う書物は、前世の小説なんですね」
アランが尋ねるとフェリクスは頷いた。
「殿下、『にじそうさく』とはなんですか?」
エリックが頭を捻って尋ねるとフェリクスが答えた。
「なんでも、オリジナルを元に作った別なる物語だとか」
「ほぉおおおお」
エリックがわからないながら、一応感心してみせる。
「その二次創作では、ヒロインが『呪』の血筋でその能力で悪役令嬢を呪い、攻略対象者達を虜にすると言う話になっているとか。その『呪』をはね返せるには、肉親からの無償の愛だけだ。だが、悪役令嬢は肉親に愛されずはね返せないので、ヒロインに陥れられるそうだ」
フェリクスが説明すると
「では、結局ヒロインが大勝利の話なんですね」
アランが尋ねた。
「残念ながらそうでなく、ヒロインは『呪』の力を過信して使い過ぎ、悪役令嬢が国外追放になった途端、攻略対象者が我に帰り、全ての『呪』がヒロイン自身に返り、苦しんで死んでしまう、ざまあの物語なんだそうだ」
フェリクスが答えると、エリックが『ざまあ』かと呟いた。
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