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しおりを挟むフェリクスはアランとエリックの二人だけ空き教室に入るように言った。エリックは護衛達に教室の外に立つように指示をして中に入った。
エリックが扉を閉めて、フェリクスの元に戻ってきた。
「殿下、お話とは?」
アランがそう尋ねると、フェリクスはアランとエリックの方を見た。
「先程、エリックに今日ここに来たのは偶然ではないだろうと言われた件だ」
エリックはああと頷き、アランは怪訝そうにした。
「エリックにも言ったが、いつでもいいような視察を今日にしたのは理由がある」
フェリクスはそう言って二人の顔を順に見た。
「アランにもジョエルにも言ってなかった事だ」
アランがフェリクスに尋ねる。
「殿下、それは内偵を頼んでいたフリッツの事ではないのですか」
「違う、フリッツは『呪』の影響で身動きが取れなくなって来ていた。早くこの任務から解いてやらないと、フリッツの将来が取り返しのつかないことになると焦っていた。王妃の離宮に出入りできるのはアイリーンだけだ。そのアイリーンから王妃の『呪』の進捗状況を知らせて貰っていたが、『呪』の知識のあるアイリーンでも、呪われた人間にどう影響があるかはっきりわからなかった。そのために後手後手になり、アルベルトを死なせてしまった」
フェリクスが項垂れた。
「ちょっと待って下さい。アイリーンとはボートンの養女ですよね?そしてデングラー公爵とヒルシュフェルト国の二重間諜だったのでは?そしてご存知ではなかったと仰ってましたよね?」
アランがたたみかけるように、フェリクスに迫った。
「迂闊にもボートンが二重間諜なのは、知らなかったのは事実だ」
フェリクスはアランの肩に手を置いて言った。
「アイリーンは『呪』と言うものを私に教えに来た当人だ。姉達が王妃に監禁されて『呪』を行わされている。助けたいので力を貸してくれと。最初は疑っていた。何しろ呪うとか荒唐無稽だ。だから話半分に聞いていたが、呪われた本人だけでなく周りを巻き込んで周りをも不幸にしていくと聞いて、クリスティーヌの事に行き着いたんだ。アルベルトはいつも切なげにクリスティーヌを見ているのに、いつも酷い態度しか取らない。学園に入学してからは、アルベルトとその側近だけでなく周りの生徒達がクリスティーヌに冷たいと聞いて、間違いないと思った」
「ちょっと!ちょと待って下さい!殿下!」
アランが焦った様に口を挟んだ。
「知らないことばかりで困ります。私達はあなたの側近のはず。なぜ説明が無かったのですか」
「すまない。アイリーンの話を聞いて、クリスティーヌを一刻も早く救い出したかったから独断専行していた。すまなかった」
フェリクスがアランとエリックに向かって軽くだが頭を下げた。エリックは慌てて言った。
「止めて下さい!殿下、我らはあなたの手足です。アラン、言い過ぎだ。殿下は話してくださっているじゃないか」
エリックがアランをそう責めると、アランは唇を噛み締めた。
「ーーーー殿下に信用していただけて無かったのかとーーーー」
「そんなわけはない!ただ内密に叔母上の力を持って借りて場面を作る必要があったのだ」
フェリクスがすまなそうに言うと、アランはフェリクスに
「それでは、殿下、全て話していただけますか」
と言った。
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